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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
9/43

9.自己紹介

 永遠とも思えるほど長い廊下を彼女の後について歩く。もう5分ほど歩いているが、道中特にこれといったものはなかった。部屋に繋がる扉が一定間隔で設置され、時折十字形の分かれ道があるだけであった。窓から見える景色から相当大きな建物だと想像できる。


「えっと……あとどれくらいかかりそう?」


 スタスタと前を歩き進む彼女に問い掛ける。


「もうすぐそこだよ」


 彼女が指差したひとつの扉、そしてそこに付いている看板には日本語でも英語でもない、アラビア語でも楔形文字でもない未知の言語が書かれていた。


「失礼します」


 そう言って部屋の中に入っていった彼女に続いて俺もそう言って部屋に入る。しかし、中から返事はなかった。無人のようだ。


 丸机がいくつか設置され、その上に何かの書類が大量に散らばっていた。床に落ちていた1枚を拾い上げるが、やはり何が書いているのかわからない。言葉は通じるのに文字は違う。なんだか不思議な感じだ。


「はい。用意できたよ」


 数枚の書類と1枚の薄い板抱えて彼女がこちらへ戻ってきた。


「ますはこれ、真ん中辺りに血を1滴垂らして」


 板と先端の鋭く尖った針を手渡される。板は両面とも真っ黒で大きさはスマートフォンと同じくらいであった。ただ、表裏の区別をつける為か、片面には1本の剣とその背景に羽を大きく広がた鳥が描かれていた。常識的に考えて、何も描かれていない方が表だろう。針で指先を軽く刺し、血を1滴だけ絞り出す。それが板に付くのと同時にいく重もの波が輪を描いて広がる。最後の波が端まで行き届くと、薄っすらと文字が浮かび上がってきた。1分程ではっきりと視認できるようになったが、やっぱり読めなかった。


 これで完成、なのか?


 それ以上の変化が全くない板と睨み合っていると、彼女が横から覗き込んで来た。その位置から板に書かれているものを覗き込んでいる。可憐な顔が目と鼻の先にある。シルバーブロンドから好ましい匂いがする。


 つまり、もの凄くどきどきする。


「へぇー、シュウ•カミシロっていうんだ……」


 突然、彼女に名前を呼ばれ思わずびくっ、としてしまった。そのリアクションでくすくすと彼女が笑う。今のは自分でもよくわかるほど面白可笑しい行動だ。


「そういえば、私達ってまだ自己紹介してなかったね」


 その言葉で俺もようやくその事に気付く。本来なら出会ってすぐする事にも関わらず、完全に頭から抜け落ちていた。


「レイア•フィアレス•ソードライトといいます」


「神し……シュウ•カミシロです」


 どうやらこちらでは性と名を逆にして名乗るのが一般的なようなので俺もそれに合わせておく。


「レイアでいいですよ」


「じゃあ……シュウで」


「はい。よろしくね」


「こちらこそ」


 嬉しそうに微笑む彼女、レイアと今更な挨拶を交わし、俺は一番大事なことを彼女に伝える。


「それで……レイア」


「はい?」


「……そろそろ離れてもらっても?」


 レイアはまだ、俺の目と鼻の先にいた。


 レイアから見ても目と鼻の先にいる俺のおそらく真っ赤に染まっているであろう表情を見て自分がどんな位置にいるのかを理解した彼女は顔を真っ赤に染めてサッ、と離れる。それはそれで避けられているようで傷つく。


「ご、ごめんね。同年代の男の子と接するのあまり慣れてなくて……」


「レイア、同年代じゃなくてもそういう事はしない方がいいよ」


 彼女、レイアとの距離が少しだけ縮まって、少しだけ遠ざかった気がした。

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