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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
41/43

41.神城周:スキル No.2

「げ!?魔法騎士もう全滅しちゃった……」


 訓練場の観戦席から2つのグループの戦いを眺めていたレオナが驚き、そして落ち込んだ。


「おいおい……いくらなんでも早すぎるだろ……。まさかあいつら新人じゃねぇだろうな?」


「ちがいますぅ〜。ちゃんと騎士歴5年以上の子連れてきてますぅ〜」


 クロスの指摘に頬を膨らませて反論するレオナ。その横で同じく試合を眺めていた智風は心配そうな表情をしていた。


「あの下敷きになってる騎士の方、大丈夫なんですか……?」


「それなら大丈夫だ」


 不機嫌そうに頬を膨らませたままのレオナに代わって、クロスが彼の疑問に答えた。


「こいつの結界は『内部から外部への攻撃の無効化』、『内部での生命保護』、『内部の損傷した建造物の修復』っていう3つの効果を持ってるんだ」


 それを聞いて智風は耳を疑った。結界は本来、『外部から内部への攻撃を無効化』することを目的に使用されるものだ。『内部から外部への攻撃の無効化』はその応用なのでまだわかるが、他2つに関しては聞いたことすらない効果だ。智風はそんなぶっ飛んだ効果の魔法があるのか推し量っていた。


「まぁ、そりゃあ始めはそんな反応になるよな」


 クロスも同じ経験があるのか、苦笑いを浮かべながら言った。


「このチビはこんなんでも魔法の天才なんだよ」


 そう言いつつわしゃわしゃとレオナの頭を撫でる。レオナはキッと目を細めてクロスを睨む。


「……私、こんなチビでもあなたより年上なんですけど?」


 …………は?


 智風は彼女の放った衝撃の一言に固まってしまった。


 28歳のクロスさんより……年上!?


 プンスカとクロスに怒る、どっからどう見ても小学校高学年ほどの身長のレオナを遠い目で眺めながら、彼は見かけで判断するのはやめようと心に誓うのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 目の前の水蒸気の煙が少しずつ消え始める。2つの太陽の光が入り込み、中にいるであろう3人の騎士の姿が薄らと写し出された。円になって固まり、奇襲に備えているようだ。


 先手必勝!!


 納めていたミスリルの剣に手を伸ばす。鞘の中で刃に魔力を纏わせる。一歩踏み込み、勢いよく抜刀。


 《無属性魔法ーーー飛刃【抜刀】》!!


 魔力の刃が空を切る。空気が一瞬歪み、騎士の1人に一直線に飛んでいき、直撃ーーー。


「うぉっっ!?」


 ーーーする直前で気づかれてしまい、防御されてしまった。それでも体勢が大きく崩れる。しかし、決着にはまだほど遠い威力だ。


「下がれ!!」


 煙の中からリーダーらしき騎士の声が聞こえる。剣と盾のシルエットが浮かび上がり、こちらに向かって駆け出してくる。その後ろから2人の槍持ちの騎士もついてきている。


 こっちから見えるなら、そっちからも見えてる頃か……!


 できることなら《飛刃》で1人くらい排除したいところだったが。


「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 リーダーの騎士が盾を構えながら、剣を振りかぶる。俺は後ろに飛んでそれをかわす。しかし、それを見越していたように両サイドから槍持ち騎士2人が凄まじい速度で詰め寄ってくる。


 くそっ!ガードも回避も間に合わない!!


 光沢が煌めく銀色の穂が、まだ空中にいる俺に迫る。


 身体を捻ってその場で半回転。その勢いを利用して剣を振り、槍を弾き飛ばす。


 ーーー六葉流剣術 十式 螺旋斬


 奥義である《画竜点睛》をより使いやすく簡略化した回転技だ。助走等を必要とせず、縦横関わらずに回転できる。当然、威力は大きく劣るが、追い詰められた際の「暴れ」として非常に優秀な技だ。


 とどめの一撃を加えようとしていた2人は、大きく体勢を崩して後ろに仰け反る。


 今しかないっ!!


 俺は着地と同時に地面を蹴り、その地点から1番近いバランスを崩した騎士に向かって跳んだ。


「せぁぁっ!!」


 腕を引き、突きの体勢を取る。出の早い突き技を選択。


「させんっ!!」


 リーダーの騎士が割り込むようにして俺と俺が切ろうとした騎士の間に立ち、剣を振り上げて俺の剣を弾き飛ばす。幸い、手から離れることはなかったが、狙いが大きくずれてしまった。その隙にもう1人の槍を持った騎士が俺に向かってくる。


 まずいっ!!


「くぅ……っ!!」


 身体を逸らしてなんとか回避する。しかし、穂が腕をかすめてしまった。痺れるような痛みが少し遅れてから脳に伝播される。後ろに飛んで距離をとる。そして、切り傷ができているであろう左腕をちらりと見る。


 すごいな、ほんとに怪我してない……。


 血の一滴どころか、跡すら残っていない騎士隊コートを見て、心の中でレオナに礼を言う。


 さて、問題は……。


 思考を切り替え、目の前の3人の騎士に意識を向け直す。互いにカバーに入れる距離を維持し、誰かが攻撃されそうになれば、誰かが防御し、誰かが反撃できるような陣形になっている。生半可な攻撃ではこの陣形は崩せない。


「速攻で、かつ一撃で……か」


 ぼそりと呟いた打倒方法だが、それが簡単にできるものではないのは重々承知していた。


 背後に回り込めれば峰打ちが狙えるけど……。


 速攻、一撃、相手が3人であることも鑑みれば、隙の少ない技が好ましいだろう。この3つの条件に当てはまる技を頭の中から探り出す。


「あれをやってみるか……」


 前傾姿勢になり、一気に加速。離れた距離を一瞬で詰め直す。狙いはリーダーの騎士。司令塔で唯一の盾持ちを失えば、残りの2人を制圧するのは容易いだろう。


 だが、突然そんなことはあちらも承知のようだ。リーダーを守るようにして槍持ちの騎士2人が進路を妨害するように槍を突き出してくる。俺の動きを制限して、リーダーの渾身の一撃を確実に当てようとしているのだ。


 しかし、相手は槍だ。長いリーチは脅威だが、穂の部分さえ避けることができれば、戦闘を終了させられるほどのダメージを受けることはそうない。


 左右から俺を貫かんと迫る2本の槍を再度《螺旋斬》で弾き飛ばす。リーダーまでの距離は残り4メートルほど。着地と同時に膝を深く曲げ、反動を生かして更に加速。リーダーの騎士までの距離が1メートルほどまで縮まった瞬間ーーー。


「……!?」


 リーダーの騎士の目の前から俺は消えた。そしてーーー。


 ーーー六葉流剣術 六式 空咲き!!


 空を斬るように放たれた滑らかな一撃は、まるで吸い寄せられるようにリーダーの騎士の首元を背後から刈り取った。


 膝から崩れ落ちるリーダーの騎士を呆然と眺める槍持ちの騎士2人は、何が起こったのか全く理解できていない様子だった。彼らから見れば、俺が突然姿を消し、突然背後から現れたように見えているーーーはずだ。


 こちらに来る数週間前、とあるスポーツアニメを見て思いついた技だったが、まさかこんなところで使うことになるとは……。


 さて、この技についての解説だが、原理は非常に単純なものだ。相手が瞬きをした瞬間に身体強化魔法のギアを数段階上げて背後に回り込む、たったこれだけである。


「あと、2人……!」


 そこから先はあまりにも一方的な試合であった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「全身が痛い……」


 翌日、俺は医務室にて全身を殴打されているような筋肉痛に襲われていた。


「まったく……治すとは言ったけど、ちょっとくらいは自分でも加減しなよ」


 呆れた表情で俺の治療をしているのは、治癒士のリラだ。訓練などで怪我をするたびにここを訪れていたが、筋肉痛で治療をお願いするのは初めてのことだった。


「ははは……ソウデスネ」


 自分が出せる出力の限界はある程度把握できた。身体強化の無駄を省けば、この筋肉痛も少しはマシになるはずだ。


 リラの治療を終え、そのまま医務室で横になっていると、扉が開く音と共に複数人の足音が聞こえてきた。


「よぉ、シュウ。大丈夫……ではなさそうだな……」


 クロスがベッドで寝込んでる俺を見るなり声をかけてくる。その後ろには、レオナと心配そうな表情をした智風もいる。


「神城くん大丈夫……?」


 恐る恐る智風が尋ねてくる。


「おぅ、まだ全身痺れてるけど……まぁ大丈夫」


 俺が質問に答え、安堵の表情を浮かべる智風。それを確認するや否や、レオナが待ってましたと言わんばかりに話し始めた。


「ねぇねぇシュウくん!スキルの効果はどう!?ちゃんと発動してた!?」


 魔法やスキルを専門とした研究も行なっている彼女にとって、効果不明の未確認スキルを複数持つ俺は格好の研究対象らしい。普段はほわわ〜んとした口調のレオナだが、今は珍しく早口になっている。鼻息も荒く、かなり興奮しているようだ。ベッドから動けないので、心の中で彼女から1歩距離を置く。


「落ち着け、一応怪我人だぞ」


 ぐいぐいと迫ってくるレオナをクロスが抑える。


 実はあの後、騎士全員が1回護衛対象役を行ったため、俺は単純に6試合、1対5の試合をしなくてはならなかった。組み合わせ次第によって近接主体か魔法主体か、俺狙いか護衛対象狙いかがわかれたのでもの凄く苦労した。


 正直2試合目の後半まで全員が「護衛対象に触れられれば勝利(俺の場合は敗北)」ということを忘れていたのは秘密だ。


「大丈夫ですよ。口はちゃんと動きますから」


 それ以外は動かない……いや、動かしたくないだけだが……。


 駄々をこねるレオナとそれを抑え続けているクロスに向かってそう言うと、レオナは勝ち誇った表情をクロスに向けていた。


「じゃあまずは〜、何のスキルが発動して何のスキルが発動しなかったのか教えて〜」


 機嫌がいい時特有のほんわかした口調でレオナが話す。感情の起伏が激しい人である。


「発動してたのは『連撃』『逆境強化』『孤高の勇者』の3つですね」


 スキルというのは実に興味深いものだ。効果が一切わからないものでも、発動さえできればなんとなく効果が理解できるのだ。逆を言えば、発動しなければその効果は永遠にわからない。


 レオナのようなスキル・魔法研究者はそのようなスキルの発動条件やその効果を記録し、後世に残すという仕事をしている。この仕事は代々何十年も続いているものらしく、スキルの名前とその発動条件と効果がびっしりと記された1000ページにも及ぶ書物が何冊も王城の図書館に保管されている。


 だが、それらをもってしても俺の保有スキルのいくつかは発動条件不明、当然効果も不明な未確認スキルだった。レオナはスキルの名称などから発動条件を予想してくれたのである。今回の護衛訓練はその結果も兼ねたものだった。


「おぉぉぉ!!発動したの!?『孤高の勇者』!?」


 テンションが最高潮に達したレオナが大興奮して俺の話に喰らいついてくる。


『孤高の勇者』は俺のもつ未確認スキルの1つだ。その発動条件は彼女の予想通りのものだった。


「レオナさんの予想通りでしたよ。1対多の戦闘で発動するスキルで間違いありませんでした」


「ぃぃぃ……やったぁぁぁあ!!!」


 レオナが外食が決まった小学生のようなテンションで飛び跳ねて歓喜する。


「神城くん。どんな効果だったの?」


 予想が当たり、有頂天になっているレオナに変わって、智風が訊ねる。


「あ、それ私も聞く!!」


 レオナが我を取り戻したように唐突にテンションを切り替える。この人は本当に年上なのだろうか……。


「えーっと……『1対多数、または少数対多数の戦闘時において全ステータス、スキルの効果が大幅に上昇する』……でした」


「なるほど、どうりで普段より素早かったわけだ」


 納得したようにクロスが頷く。


「まだ適合率が低いとはいえ、それに『連撃』と『逆境強化』、身体強化魔法が加わるからね〜。ざっと4、5倍の補正はかかってただろうね〜」


 クロスと同じように頷きながらレオナが言った。


『連撃』は『連続した攻撃になればなるほど、攻撃力が上昇する』スキル、『逆境強化』は『不利な状況になればなるほど、全ステータスが上昇する』スキルだ。この2つは過去にも保有者がいたため、すぐに効果を知ることができた。


 そして今回問題となっていた『孤高の勇者』。異世界から召喚された者は、このような『〇〇の勇者』といったような特殊なスキルを保有している場合が多いらしい。智風も『疾風の勇者』という『風系統の魔法・スキルの効果が大幅に上昇する』というスキルを持っている。彼のスキルは過去に召喚された勇者も保有していたそうだ。


「この調子で残りの未確認スキルも解明してみせるよ〜!!」


「それじゃ!また今度ね〜」と付け加えて部屋を出て行くレオナと「またな」と短く別れの言葉を告げて彼女の後を追うクロス。嵐のような2人(インパクトが強いのはうち1人だが……)が去った後、呆然と取り残された俺と智風はしばらく無言で出口を見つめていたが、なぜだか笑いが込み上げてきた。


 ようやく落ち着いて呼吸ができるほどに笑いが収まってきた頃、俺は言った。


「見た目も性格も小学生なのに……ほんと変な人だよな、レオナさんって」


 俺の台詞に、智風は小さく苦笑した。


「そうだよね。そのくせ知識や経験量は年相応だからよく驚かされるよ」


 再度2人で軽く笑い合っていると、彼は思い出したと言わんばかりに手を叩くと続けて口を動かした。


「そうそう!訓練中にレオナさんが言ってたんだけど、あの人クロスさんよりも年上らしいよ!」


「……え?まじで?」


 とんでもない新情報に俺たちはまた会話の花を咲かせるのだった。


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