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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
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4.どこかの森の中で

 今思えば、あれは正夢だったのだろう。俺の二度寝や大地の早起きも前兆の1つだったのかもしれない。


 単なる偶然。ほとんどの人がそう片付けるだろう。だが、大地は遅刻の常習犯で俺は基本二度寝はしない。するとしても休日くらいだ。このようなきっかけを挙げるときりがないが、今はそんな軽微なことですら予兆ではないかと思ってしまった。


 俺は今、どこかで倒れ、眠っている。それが自分でもわかっているのに起きようとは微塵も思わない。思考は働いているのに、体が働かない。


 色も音も無い。真っ暗な深海の奥底で1人、ポツンと眠っている、そんな感じだ。動きたくない、ずっとこのまま眠っていたいと思った。その本能に従いそのまま瞼をゆっくりと閉じようとしたその時だった。


 目の前、立ち上がって腕をめいいっぱいに伸ばせば届きそうな位置で何かが輝いているのに気づいた。


 目を凝らすとそれは、セロリアンブルーの光を放っているビー玉ほどの球体だった。球体は輝きを増したり、減らしたりを繰り返しながら、少しづつであるが降下している。


 俺は無性にそれを手に入れたくなった。なぜかは全くわからない。ただ欲しいと思った。上半身をのっそりと起こし、まだあまり動かせない腕と足にめいいっぱい力を入れる。バランスを崩しそうになりつつもなんとか立ち上がり、恐る恐る手を伸ばす。海中から青空を見たかのような美しさをもつそれは、抵抗することもなく、まるで吸い寄せられるように手中に収まり……。


「……っ!」


 飛び起きるとそこは森であった。10メートルはあろう広葉樹が見渡せる範囲だけで数十本群生している。


 俺はそんな木々に囲まれ開いた場所で仰向けで倒れていたようだ。腕や足を動かすがなんの問題もない。どこかに怪我をしているわけでもなかった。一安心して楽な体勢で座り込む。そしてなんとなく空を見た。雲に隠れていた太陽が少しづつ顔を出し、あたりを明るく照らす。眩しさのあまり、思わず腕で顔を覆う。今は真夏の筈なのに少し日差しが弱いように感じた。感覚的に言えば、4月中旬ぐらいだろうか。やけに涼しいな日だなと思いつつ、チラリ、と一瞬だけ太陽を見る。


 そして俺は震え上がった。


 2つある。


 大小2つの太陽がそこにはあった。


「……え?」


 思わず声が出てしまう。地球で太陽が一日中見ることができるという現象は聞いたことがあったが、2つ同時に見える現象など聞いたことがない。俺が脳内が軽いショートを起こしていると、更にそれに追い打ちをかけるようにして、グオォオォオォ...…という地球の生物のものとはとても思えない咆哮が森の中で木霊した。それに数秒遅れて、フオォオォォオオ...…と別の生物と思わしき咆哮が同じ方向から響き渡る。そしてズドーンという衝撃音と軽い振動が伝わってくる。


 うん、逃げよ。


 ここが地球かどうかなどどうでもよくなった。身の安全を確保することを最優先事項とした俺は咆哮がしたのとは逆の方向に全力で走り始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 序盤を読ませていただきました。 あらすじは本小説固有の名詞が少なく、万人にわかりやすい書き方をされていたので、読みやすかったです。 表現力も潤沢で書くのが好きなんだろうな、というのが感じら…
2020/03/23 22:05 退会済み
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