39.周のステータスとレイアの過去と No.2
「無茶ですっ!!おやめくださいっ!!」
コーガスが必死になって母を制しようとしたが、母は折れなかった。
「これは命令ですっ!!生き残った者を全員無事に家族の元まで導きなさいっ!!」
「ならばっ!私は貴方も国王の元まで導かなくてはなりませぬっ!!」
「私は女王です!この国を治める者として、あの襲撃者を王都まで導くことはできませんっ!!」
「陛下っ!!それなら我等騎士団、総力をかけてあの襲撃者に立ち向かえば良いでしょう!?なぜお1人で戦おうとするのですかっ!?」
私はここに来てようやく、母が何をしようとしているのかを察した。我ながら気付くのが遅すぎると後に何度も自戒した。
母は少し考え込んだ後、少しだけ表情を緩ませ、そして私の方をちらりと見てから言った。
「それは……私が1人の親だからです。私には命をもってこの子を守り抜く義務があります」
それを聞いてコーガスは何も言えずに黙り込む。彼自身にも妻やまだ幼い子がいるはずだ。そして、今戦っている兵士の中にも……。
「コーガス……。もう、これ以上言う必要はありませんね?」
彼はこれ以上は反論しなかった。苦い表情をした後、苦渋の決断といった様子で信号弾の引き金に指をかける。
「国王陛下……申し訳ございません……」
そう呟くと同時に紅の光球が軌跡を描きながら空高く打ち上げられた。そして、それを合図に母は馬車から飛び出し、瞬く間に遥かに後方へと行ってしまった。
「レイア……。力があるのなら、奪うためじゃなくて、守るために使いなさい」
飛び出す直前、母は私に向かっていつのも穏やかで優しさに溢れる表情で言い残した。そして、私が何かを口にする前に母はもう一言付け加えた。
「お母さんは……あなたが大好きよ」
この会話が私、レイア•フィアレス•ソードライトと私の母で女王のセレナ•フィアレス•ソードライトの最後のものとなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「それで……その後は……?」
重苦しい雰囲気で放った俺の問いに対して、ラディアは首を横に振るだけだった。
「あの後すぐに俺とクロス、レオナの3人を主軸にした救助隊を編成して向かったが……。その時には……もう……」
後半になるにつれ徐々に力を失っていった彼の発言でなんとなく状況を察することができた。
「セレナは俺の自慢の嫁だ。最期の最期まで……国民のためを思って行動した……。そんな時に……俺ときたら……」
先ほどとは別人ではないかと思えるほど落ち込んでいるラディアに、俺はどう声を掛ければ良いのかわからなかった。わかったのはこの世界では命が儚く、そして理不尽に失われてしまうということだ。
ほろ酔い気分になっているのだろう。普段の彼ならたとえ娘のレイアの前であってもこんな情けない姿は見せないはずだ。
「シュウ……お前は、俺のようになるなよ」
しばらくの沈黙の後、ラディアはぼそりと呟いて席を立った。
「レイアのこと……今後もよろしく頼む」
部屋を出る直前、彼はそう言い残して月夜の照らす廊下へと消えて行った。
「理不尽に……抗う……か」
今の話を聞いて、確信することができた。以前より思っていたことだ。正直なところ、どの範囲でやれば良いのか少し悩んでいた。
悩む必要なんてない……!!
「俺もまだまだだな……」
俺はぎゅっと拳を握りしめ、強く決意した。
滅神竜など片手間で倒せるような強い剣士になる、と。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「は……ぁぁぁぁぁぁっ!!」
全力の切り上げで智風の腕から強引に木刀を弾き飛ばす。そして、そこから絶え間なくラッシュを繰り出す。
「うわっ!?……ちょっ!?」
風魔法でなんとかかわそうとしていた智風だったが、彼が使う風圧よりも俺が剣を振るった際に発生させた風圧の方が僅かに高威力だった。智風は風を乱されてバランスを崩し、その場に尻餅をついてしまう。
「たっ、タイムタイム!!」
智風の悲鳴とも取れそうな声で俺はようやく停止する。
「あ、すまん……」
「いや……大丈夫だけど……。神城くんどうしたの?」
「理不尽に抗おうと思って?」
「ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない」
そんなやりとりをしつつ、智風に手を差し伸べて起こしていると、背後からいつもの少女の声が聞こえてきた。
「おーい!おーふたーりさーん!」
俺たちが振り向くとそこにはレオナとクロス、そしてその部下であろう騎士が7人、後からついて来ていた。
「あ、レオナさん!と、筋に……クロスさんも」
こらこら智風君?
俺が笑いを堪えながらも智風に視線を向けていると、そんなことなど気にも止めないクロスがずんずんと近づいてきた。
「今日は合同訓練をやるぞ。シュウ、ユウマも参加しろ」
その後、訓練の詳細などを聞き終えた俺たちは、互いに互いをちらりと見てーーー。
「こういうのがしたかったんじゃないの?」
「あぁ、やっぱりクロスさんは俺のことよくわかってるな」
「え?なんの話だ?」
「「こっちの話です」」
小さく笑うのだった。




