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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
38/43

38.周のステータスとレイアの過去と No.1

「そういえば滅神竜の件は進展あったんですか?」


 俺の話がひと段落したので、今度はラディアに質問を返す。彼は深くため息をついてから口を開いた。


「全くもって進展なしだ。帝国も含めた各国に連絡は終えているが、どの国もまだ半信半疑と言ったところだ」


 俺とレイアが滅神竜と遭遇してからすでにそこそこの日数が経過しているが、あの日以降目撃情報はない。大規模な捕食痕や移動痕は残っているが、居場所特定までは至っていないそうだ。


「そうですか……」


 あの日を思い出して複雑な感情になっていた俺を見つめていたラディアは、表情を緩ませて言った。


「リベンジしたいって顔をしてるな」


「……まぁ、全くしたくないって訳ではないですね」


 実力不足を噛み締める結果となったが、この世界で生き延びるためにはまだまだ力をつける必要性を強く感じることができた。


 あの時より……今より……ずっと強くなれたら……。


「……1人で勝てるようになりたいです」


 そう言うと彼は目を丸くした後、大笑いしだした。


「ははははは!そうか!!それは楽しみだな!!お前の成長具合ならあと1年もすればタイマンでも戦えるようになるかもしれんな!!」


 1年、それが長いのか短いのか、すぐにはわからなかった。あの強大な敵に対してわずか1年で張り合えるようになると考えれば短いし、あと1年この世界にいると考えると長い。それでもこれ以上心配をかけまいと、ぎこちなくだが笑みを浮かべる。それを見て安堵の表情の見せたラディアは話題を少し変えて話を続けた。


「今どれくらいのステータスなんだ?よければ見せてくれ」


「またですか?……まぁ、いいですけど」


 ここ最近、ラディアはしばしば俺や智風のステータスを見たがる。異界から召喚された者は成長速度が非常に早いので、その変化を記録して資料として残したいそうだ。


 俺はポケットからステータスボードを取り出すとスマホを扱うように親指で画面を2回タップした。金色の紋様がそのから広がりステータスボードが起動する。


 あ、また増えてる……。


 昨日今日でまた増加したステータスをちらりと見てからラディアにも見せる。


 神城周

 攻撃 557

 防御 533

 俊敏 696

 魔力 701

 ステータス適合率 30%

 スキル

 ・武術

 ・適応

 ・魔力操作

 ・物質操作

 ・連撃

 ・孤高の勇者

 ・逆境強化

 魔法適性

 ・無属性魔法


「ほぅ、まだ増加し続けるのか。さすが勇者だな」


 一通りステータスボードを見終えたラディアが感心したように呟いた。


「これでもまだレイアには何1つ優ってないんですけどね……」


 それを聞くとラディア突然大笑いしだした。


「はっはっはっはっはっ、そりゃそうだろう。誰の娘だと思っとるんだ?」


 彼は大変ご機嫌なようだ。軽い酔いがそれに拍車をかけている。


「レイアは強い。あと数年もすれば俺は手も足も出ないほどになるだろう」


「まぁ、そうでしょうね。適合率が低くてあの強さですからね……」


 滅神竜戦の際の彼女を思いだしながら息を吐くように呟く。


「だが、あの子にも弱いところがある」


 思わず顔をあげる。


「レイアに……弱点?」


「そんな言い方はしたくないが……。まぁ、端的に言えばそうなる。あの子はお前さんがこちらの世界に来るまでずっと1人だった。今では考えられないかもしれないが、あんなに楽しそうな笑みを浮かべることもあまりなかったんだ」


 信じられないと言わんばかりに俺は目を丸くしてその話を聞いた。俺が完全にその話に食いついたの見て、ラディアはゆっくりとした口調で話し出した。


「あれは……あの子がまだ10歳のころだ」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ………」


 少し後方で兵士の断末魔が響く。これで一体何人目だろうか。夜中で周囲がよく見えない中、私たちは「何か」に襲われていた。既にこの攻防が10数キロ続いているというのに襲撃者の手は一向に緩む気配がない。


「おいっ!馬の速度が落ちてるぞ!!」


 護衛対象の馬車から最も近いところを馬に跨って駆けていた兵士が御者に向かって叫んだ。


「無理ですっ!!これ以上は馬の体力が持ちませんっ!!」


 御者は震えた声でそう叫び返した。馬の呼吸はこれまで見たことがないほどに荒く、動かし続ける脚が何度ももつれそうになっている。


「お母さん……。私たち死んじゃうの?」


 私を優しく抱きしめている母にか細い声で話しかける。すると母はそっと私の頭を撫でながら落ち着いた口調で言った。


「私を誰だと思ってるの?戦える女王様よ?平地に出たらあんな化け物すぐにやっつけちゃうんだから。周りの兵士さんたちも敵を油断させるためにわざと大声を出しているのよ」


 今思うと相当無茶な説得だったと思う。しかし、そんな説明でもまだ母親が大好きな年頃の私はその言葉に絶対の信頼を置いていた。


 そして、そのままさらに走り続けーーー。


「……きゃぁ!」


 突然の突風に馬車が煽られる。車体が一瞬傾き、私は窓に衝突する寸前に母に抱き上げられた。


「着いたみたいね……」


 窓から外を見た母がぼそりと呟く。母の視線を追って外を見ると、地平線の先から1つ目の太陽がゆっくりと登り始めているところだった。朝日を邪魔する木々は1本たりとも見当たらない。光を浴びて黄金色に輝く草花が一面にに広がっている。長い長い森林地帯をようやく抜け出したらしい。


 すると、突然母が馬車の扉を開き、近くを走っていた兵士長に向かって叫んだ。


「コーガス兵士長!私の合図で兵を3部隊に散開!!王都まで全速力で帰還しなさいっ!!」


 コーガスと呼ばれた兵士は目を丸くした後、すぐに反論した。


「陛下は!?女王陛下は何をなさるおつもりですかっ!?」


 母は後ろから迫ってくる、まだ土煙で視認できない敵を睨みながら答えた。


「私は……敵を倒します!」


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