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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
37/43

37.神城周:オリジン

「随分と派手にやらかしたそうだな」


 グラスに注いだワインをぐっと飲み干したラディアが笑みを浮かべながら言った。


「……力加減を間違えました」


 対する俺は苦笑いを浮かべる。目の前に置かれたコップを手に取り、残り半分ほどとなったコーヒーを一気に飲み込む。苦味が睡眠へと足を進めていた俺の意識を引き戻す。


「やらかした」とは、昼間の訓練のことだ。智風の放った《風魔法ーーー八岐大蛇》に対し、俺は《画竜点睛》を使ってその試合に勝った。しかし、その際に手加減なしの全力を出してしまい、智風を数メートル吹き飛ばして気絶させただけでなく、訓練場を所々破壊してしまったのだ。幸い、智風は気を失っているだけで明日にも目を覚ますだろうと言われているし、訓練場の破損も許容範囲内だと言われた。そうだとしても少なからず責任を感じずにはいられなかった。


「たった2ヶ月でここまで成長するとはなぁ……」


 呆れたような、懐かしむような表情でラディアが呟く。これについては俺自身も同感だ。短期間でここまで人間離れ(あくまで地球から見た基準で)するとは思ってもみなかった。


「スキルやポテンシャルもそうだが、やはりお前の流派の影響も大きいのか……?」


「そうですね。こっちに来てからの俺の戦闘は流派頼りなことが多いですし……。かなり影響してると思います」


「六葉流」のおかげで生き延びた場面もあったし、救えた場面もあった。俺がしみじみと「六葉流」の思い出に浸っていると、ラディアが不思議そうに訊ねてきた。


「前から少しばかり気になっていたんだが……、お前はあれほどの大技を放ってなお、余裕を見せていたそうだな。『六葉流』というのはそれほどまでに使い勝手が良いものなのか?」


「いえ、そんなことはないです。『六葉流』の習得は簡単ではありません。基礎の型ですら完全習得までに何週間、下手をすれば何ヶ月もかかりますから」


 実際に、レイアに型を教えようとした時も基礎の型ですらまともに習得することができなかった。元々彼女が騎士団流の剣術を習って育ったせいもあるが、『六葉流』にはある程度の適性がいるのだ。18代と長きに渡って受け継がれているのに、歴代使用者が100人足らずなのはこういった理由からだ。


「なるほどな……」


 それを伝えるとラディアは小さく呟き、笑った。


「面白いな。よければ、六葉流についてもっと聞かせてもらえないか?」


「まぁ、構いませんが……」


 六葉流に興味津々といった様子で笑みを浮かべた続けるラディアを真っ直ぐ眺めながら、俺は語り始めた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺が六葉流の適正を見出されたのも、本当に偶然に過ぎない。小学1年生の時に大地の家に遊びに行った際、彼の祖父、つまりは秀光の指導の下、「六葉流」を教わっていた大地を見つけ、せっかくだからということで俺も指導を受けさせてもらった。その時、俺は秀光が例として出した基礎の型をほとんど完璧な状態で使ったらしい。「らしい」というのは、俺にその実感が全くなかったからだ。見様見真似で振った木刀の動きが偶然重なっただけだと正直今でも思っている。


 しかし、この日があったおかげで今、俺は生きている。


 その後の生活の変化は凄まじいものだった。秀光はその日の夕方、俺を家まで送り届けると迎えに出た両親の前でいきなり頭を下げたのだ。


 目を丸くして何事かと動揺する両親に向かって、秀光は真剣な様子で言った。


「この子には剣の才能がある。お金はいりません。どうか、この子に剣術を教えさせて下さい」


 あまりにも唐突なことだったので、返事はまた後日ということになった。夕食の後、父がリビングにいた俺を呼び出して聞いた。


「周、お前は秀光さんのところで剣術を学んでみたいか?」


 父の表情にはどこか不安そうな感情が見えた。秀光が俺に教えようとしているのが「剣道」ではなく、「真剣」だったからだ。本物の刀を使う技術を自分の息子に教えるとなれば、当然多少の躊躇いは出てくるだろう。


 その問いに対して、俺がどう答えたのかは覚えていない。だが、確かなのは俺自身が「剣術を学びたい」と述懐したことだ。両親は俺の意思を尊重して、秀光の下での「習い事」としての剣術を学ぶことを許可してくれた。


 大地とは物心ついたころからの大親友であったので、そんな彼と一緒に同じことに熱中できるのは幼い俺にとって非常に嬉しいことだった。


 こうして、秀光は俺たちの「師匠」となった。放課後、毎日のように秀光の下に向かい、日が沈むまで修行に励んだ。


 そうして時は流れ、俺たちが中学生になった時。秀光がある提案をしてきた。


「お前たち、今度剣道の大会があるから、腕試しだと思って出てみなさい」


 そんなわけでいざ出場した千葉県船橋市で開かれた剣道大会船橋予選。たいして勝ち進めないだろうと思っていた俺たちだったが、想像以上に相手が弱かった。1分ほどで終わってしまう試合すらあった。


「この辺って剣道弱いのかな?」


 突如現れたダークホース2人に会場は軽いパニック状態に見舞われていた。そんな様子を見た大地がぼそっと呟いた一言をわざわざ拾って食って掛かる者がいた。


「はっ、そんなわけないだろ?お前らは偶然弱い相手と当たってるだけだ。部活にも入ってない奴が調子に乗るなよ?」


 振り向くとそこにいたのは、俺たちと同じ中学生に通っている同級生だった。名前は忘れてしまったが、確か地元では剣道期待の新星だと持ち上げられていたはずだ。俺たち2人との接点など皆無だったが、こんなところで関係を持つことになるとは思ってもみなかった。


 その生徒(名前を忘れたので仮にA君とする)は言いたいことを全て言い終えて清々した様子で去っていった。自分の立場を奪われかねないと危惧したのだろうと今となっては思う。可愛いものだ。


 俺と大地はそれぞれ個人で出場し、運良く別々のリーグとなったため、決勝戦以外では戦うことはなかった。


 準々決勝まで難なく勝ち上がり、挑んだ準決勝。俺の対戦相手はこの辺りでは優勝経験もある有名な選手、大地の相手はあのA君だった。別々の試合場で同時に行われた戦いだった。俺は若干苦戦しつつも、「本気の全力」を出すことなく勝利。一方の大地とA君の試合だが、これが酷いものだった。間違いなくA君は強かった。さすが「期待の新星」と呼ばれるだけあるだろう。だが、大地はもっと強かった。相手の攻撃を全て読み切って、隙あらばカウンターを的確に決めて1本を奪取する。決着まで、そう時間はかからなかった。


「くそっ!!なんで!?」


 A君の悲痛の叫びが会場に響いた。「天才だ」と言われ続けたことで育まれた自尊心は相当なものだった。それをたった1日で、たった1人に完膚なきまでに打ち砕かれたのだ。


 A君は試合後、持っていた竹刀を床に叩きつけた。相当強く叩きつけたため、会場中に広がるほどの音が鳴り響いた。会場がしんと静まり返った。そして、彼はそのまま礼どころか蹲踞すらせず、足早に退場してしまった。


「なんだ……あいつ」


 少し離れたところからその光景を眺めていた俺は、剣士の風上にも置けないA君の迂愚な行為に軽蔑の念を抱いていた。


 そして迎えた決勝戦。


 同じ道場出身の俺と大地の対戦。


 これまでも練習相手として何度も何度も剣を合わせてきたが、公式の大会でこうして向かい合うのは初めてのことだった。


 試合は均衡していた。


 体力とスタミナを活かして連撃を止めない俺。


 判断力と反射力で猛攻をいなし続け、カウンターを狙う大地。


 俺が1手でも攻撃を緩めれば、即座に大地の神速の一閃が飛ぶ。


 大地が1度でも判断を誤れば、俺の鬼神の如き1撃が振り下ろされる。


 試合時間の5分を迎えても、互いに1本たりとも取れていないまま延長戦に入り込んだ。しかし、その3分間の延長時間も蛇足に終わってしまった。


 結果は猛攻を続けた俺の判定勝ちとなった。


 次の日、学校は大騒ぎとなった。


「え?嘘でしょ……。A君が負けたの?」


「対戦相手六葉だったらしいよ」


「六葉って誰よ。剣道部じゃないだろ?」


「隣のクラスの……確か帰宅部の子だったと思う」


「はぁ!?帰宅部!?Aのやつそんなのに負けたの!?」


「本当に勝ったの?帰宅部にAが負けるわけないでしょ?」


「審判買収したんじゃね?」


「って言うか六葉も結局は準優勝だったらしいぞ」


「まじ?Aに勝った六葉により強いのがいるの?」


 Aの敗北の知らせは瞬く間に学校中に広がった。


 そして、俺たち2人、特に大地に向けられた視線は疑心7割、興味3割といった感じだった。


 しかし、そんな状況も全国大会が始まるとすぐに改善した。


 初めて出場した全国大会で俺は全国3位、大地は全国5位の記録を残したのだ。


 学校での視線は敬意と憧れに変わった。


 Aは俺たちの知らないうちに転校していた。プライドをズタズタに引き裂かれ、引きこもってしまったらしい。


 だが、それが引き金となり、俺たちはさらに実力を伸ばしていった。


 そうしてさらに時は流れ、型を繰り出すのに必要な「構え」がより素早くできるようになり、体力がついたことでより長い間安定した動きができるようになった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「そうか……」


 話を終えてふとラディアを見ると、彼は少し残念そうな表情を浮かべていた。


「あ……れ?ラディアさん?」


 予想とは違う反応に俺が狼狽えていると、彼は慌てて手を横に振りながら言った。


「あ、すまない。私も可能ならその流派を習得してみたいと思っていたんだがな……」


 あぁ、そういうことか……。


「うーん……。難しいかもしれないですね。適性云々もありますけど、別の流派とか型とかを習ってると習得難度が跳ね上がるですよ」


 そう言うと、ラディアはお気に入りのおもちゃを失った子供ように肩を落とした。


 この人はほんと……大人なのか子どもなのかわかんなくなる時があるなぁ……。


 そんな彼の姿をレイアと重ねながら俺は「やっぱり遺伝だな」と小さく呟くのだった。

タイトルどこかで見たことある?ヒ○アカだよ、使ってみたかったんだよ……。

あと、投稿ペースやっぱり安定しなさそうです…すいません…。

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