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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
33/43

33.智風悠真との合流

 クラスメイトとの再会が4日後に決まった。


 その一報が俺たち2人の耳に入ったのは、アルハ村に辿り着いてから2日後の夜だった。


 アルハ村は合併村で、元々は約20の村が点在していたそうだ。それが10年ほど前に国への納税などの面からまとまっていた方がなにかと便利という結論になったらしく、流れるように合併が進んだらしい。


 アルハ村はそんな村々の中で最も王都に近く、村の窓口として機能している。しかし、クラスメイトが保護された村はここから一番遠い国境付近の場所らしく、すでにこちらに移動中だが、それでも4日はかかるそうだ。


 俺たちもとてもそんな距離を動ける状態でもないため、助かってはいるのだが、そのクラスメイトには少し悪いなぁと思う。


 クラスメイトの情報だが、『眼鏡をかけた男子』という情報しかなく、誰なのかはまだ判断出来ずにいた。


 そして、その一報を受けてから4日。ドクターストップがかかっているため、ろくに動くことも出来ずに簡易的なリハビリを続けていた俺たちにとってはとても長く感じられた4日間だった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「来たぞー!!」


 村人の中の誰かが叫んだ。


 アルハ村に辿り着いてから6日。やっとこの日がやって来た。クラスメイト1人に会うためにここまでの大怪我を負うことになるとは……。


 クラスメイト1人につき、同じレベルの怪我を負う、なんてことはさすがにないよな?


 そんな一抹の不安を抱えながら、月と街灯に照らされながら、次々と村へ入ってくる馬車を眺めていた。隣では、まだ頭の包帯が外れないレイアが俺に付き添って立ってくれている。俺はあの戦いでかなり足を酷使していたため、付き添いと松葉杖なしでの1人歩きは危険と判断されていた。とにかく筋肉がパンパンに腫れ上がっているのである。


「1ヶ月半でようやく1人目か……」


 多くの村人が停止した馬車に群がっていく中、あの中にいるであろうクラスメイトのことを考えていると、まだまだ始まりに過ぎないことをしみじみと感じた。


「確か…25人だっけ?」


 俺の独り言を聞いていたレイアが、俺の歩幅に合わせてゆっくりと移動を始めながら言った。


「あぁ、内半分が帝国に転移したと仮定してもあと12、3人……」


「まだまだ先は長いね。無事だといいけど……」


「うーん……なんだかんだ言っても、皆何かしら強みを持ってるからなぁ。案外余裕で生き延びてるって可能性も……」


「そうだといいね」


 積荷が次々と運び出され、集まっていた村人の数が半分ほどになって、ようやく俺たちは馬車のすぐ側まで近づくことができた。


「この中にいるの?」


 レイアが村の門前までずらりと並んだ馬車をどこか遠い目で眺めながら言った。


「あの人だかりの中で降りてなければ、だけどね」


 この数の中なら探し出すのは随分と骨が折れそうだと小さくため息を吐く。


「これは苦労しそうだなぁ……」


 俺がひっそりと呟いたこの一言に反応したのは、左にいるレイアではなく、右の周りより少し綺麗な馬車からだった。


「え……?神城くん?」


「はぇ?」


 聞き覚えしかない声に呆気に取られていると、若干開いていたガラス窓が勢いよく開かれ、中から鮮やかな黒髪をもつ黒縁メガネの少年が顔を出した。


「やっぱり神城くんだ!」


「智風!お前だったか!」


 窓の側にあるドアから彼とパンッとハイタッチして互いの無事を喜んでいると、まるでこの時を待っていたかのようなタイミングで村長のセルドと調査隊長のユーリが近寄ってきた。


「無事合流できたようじゃの」


「はい。おかげさまで」


 セルドたちと軽い挨拶を交わしていると、馬車から降りてきた智風に肩を軽く叩かれた。


「神城くん、この人たちは?」


「今レイア……あの白髪の女の子話してるのがこの村の村長のセルドさん。その隣にいるのが調査隊長のユーリさん」


 それを聞いてほっとしたような顔を浮かべる彼を見て、俺も一安心した。


「立ち話もなんですし、場所を変えましょうか。君も長旅で疲れているだろう?」


 突然ユーリに話しかけられた智風は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに頷き、俺たちは村長宅へと足を動かし始めた。


「っていうか、今更かもしれないけどその怪我どうしたの!?」


「あはは……まぁ、後で話すよ」


 事情を話さなくても、なんとなく察して移動に手を貸してくれるあたり、智風は相変わらずだなぁとどこか安心したのだった。




「そういえば智風はどうやって生き延びたんだ?」


 5人で夕食を取りながら簡単な自己紹介をした後、俺はずっと気になっていた疑問を智風に投げかけた。智風が俺の怪我について長々と心配してくれたおかげで、ほとんど食事を終えてしまっているのだ。


「それは僕も是非聞かせてもらいたいですね」


 そう言って一瞬でメモとペンを取り出し、目を輝かせているユーリに少し引きながらも智風は口を開いた。


「僕が初めて目を覚ましたとき、周囲は真っ暗でした。夜ではなく、単に葉が生い茂って日光を遮断していることに気づくまで少し時間がかかってしまうほどにパニック状態になっていました」


 それはそうだろう。俺だって相当パニックになったのだ。いくら学年トップの成績の智風と言えどもそんな状況では流石に慌てるだろう。


「そこがどこか全くわからなかったので、まずは日の光が当たる場所を探しました。運良く近くに折れた大木があったので、その木目で方角を絞り出せたのはよかったのですが……。衝撃でしたよ……、なんせ太陽が2つあるんですから」


「あれは俺もびっくりした……」


「知は力なり」を体現したような人物が彼だ。圧倒的知識量と冷静な判断力から繰り出される言動は、元の世界でもクラス委員長として存分に発揮されていた。


「その後は……夜は基本的に木の上で過ごしてました。昼間は川に沿って移動して、夜は木の上で身を隠してました。あの辺の生き物は木に登らないようでしたので」


 夜はモンスターの活動が、昼間に比べて活発になる。大抵の肉食モンスターは動かない、探しやすい、隙だらけの他生物を餌とするため(体力消費を最小限にするための行動)、高い木に登っていれば基本的には狙われずらくなる。これを聞いたセルドとユーリがほぅと感心のため息を漏らした。


「さっすが、全国模試17位。頭の回転力が飛び抜け……」


「『全国模試』ってなんですか?」


 ユーリさん反応はっっや……。


 輝きを放つ目を今度はこちらに向けてきたユーリを軽くかわしながら、目線をやって智風に続けるよう促した。


「まぁ、そうして移動し続けて……丁度2週間目かな。アルハの村人に偶然出会って保護されたって感じです」


 智風が話を終えて少し間を置いてから、セルドがゆっくりと口を開いた。


「とにかく、無事に合流できてなによりじゃった。わしらが支援できるのはここまでじゃ。あとは政府が面倒をみるんじゃろ?」


 セルドがユーリに目線を送りながら確認をとる。


「政府……というより王家ですね。王家直属の異世界民族保護課をつい先日新設したので、そこでしばらく預かる予定です」


 ユーリが口にした「異世界民族保護課」とは、俺たち「勇者」を含めた漂流異世界人(簡潔にいえば異世界転移した人のこと)を保護し、元の世界への帰還のための援助と転移理由の調査を行う機関である。俺たちが王都を出る2日ほど前に新設された出来立てほやほやの機関だ。


 こうして話しているうちにすっかり東の空が明るくなり始めていた。そんな朝焼け空の下で、俺とレイア、ユーリたち調査隊員、そして智風は王都への帰還準備を進めていた。


「ところでさぁ、神城くん。王都ってどんなところなの?」


 元々荷物がほとんどないため、調査隊員の荷運びを手伝っていた智風が、重そうな木箱をゆっくりと馬車の荷台に下ろしながら訊ねてきた。


「どんなところ……か」


 俺も筋肉痛に耐えながら運べる限りの小さな荷物を荷台に下ろし、ちらりとレイアの方を向いた。


「荷運びは我々の仕事です!」と言い張る調査隊と「これくらい手伝わせてよ!」と言うレイアが少し離れたところでわちゃわちゃと口論をしていた。


 そして、この約2ヶ月を振り返ってみる。


 見ず知らずの異世界人である俺を助けてくれたレイア。


 想像以上に快適な環境を用意してくれたラディアさん。


 忙しい身であるにも関わらず、俺の訓練に時間を割いてくれたクロス。


「剣」と「魔法」のファンタジー社会であるこの世界に来てから、何十人もの人たちと出会ってきたが、誰1人として俺の出身などを気にしせず歓迎してくれた。


 きっとそれは智風であろうと変わりはしないだろう。きっと暖かく迎え入れてくれるはずだ。


 だから俺は自信を持って言ってやった。


「最ッ高のところだよ」と。


物語全体の修正をしています。しばらくは違和感があるかもしれません。

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