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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
28/43

28.竜への抵抗

 巨竜の刃物のような尻尾を体勢を低くして何とか避ける。聖剣魔法を使ってから相手はこちらを完全に殺す気になってらしい。”再生時に適応した体に変化する“と思っていた能力だったが、私の予想は最悪の方向で外れていた。再生能力と体質変化能力は全く関係ない別々のもののようだ。事実、目の前で太く長かった尻尾は、半ばから先っぽにかけてプレード状に変化し、私を断ち切ろうと物凄い勢いで地面に叩きつけたり、振り回したりしている。


「は……ぁぁっ!!」


 私は身体の中にほんの僅かに残った魔力の残りカス絞り出し、圧縮、指先から放出し、その勢いで回避するという悪足掻きを続けていた。1発放つ度に力が抜けていくのをはっきりと感じ、放出の反動で吹き飛ばされた身体はすでに立っているのも困難なまでに弱っていた。


 当たらなかったことを察した竜は、すぐに第2撃に繋げてきた。長くしなやかな斬属性の尻尾はしゃがんだ私のすぐ上を通り過ぎ、周囲の木々をいとも簡単にへし折った。大量の木片が飛び散り、幾つかが無防備な私の背中に刺さる。


「んっ……!!」


 下唇を噛んで痛みを堪える。意識も朦朧としてきているのだ、一瞬の気の緩みが致命傷になりかねない。


 それでも私は竜を睨み続けた。自分で言うのもなんだが、私は諦めの悪い方だ。そう簡単に殺される気はない。最後の最後まで抵抗し続けるつもりだ。


 竜はなかなか当たらない攻撃に徐々に苛ついてきたようだ。今度は短い前脚が風船のように膨らみ始め、もとの数倍の大きさの武器へと変化した。鎌のように湾曲した長い爪が3本並び、皮膚からは赤紫の液体が滲み出ていた。その液体は地面に垂れ落ちると、ジュっと音を立てて周囲を溶かした。どうやら毒も扱えるらしい。


 ゆったりとした動きから急に右前脚の叩きつけを繰り出してくる。時間的に余裕があったので魔力は使わず、前転して回避する。背中の木片がさらに深く肌に刺さるが、それにも構っていられないほど、私は必死だった。


 攻撃の拍子に辺りにばら撒かれた毒液が、抉り取るように地面を溶かす。ほんの僅かな量なのに地面を十数センチ溶かしてしまっている、かなり強烈な毒のようだ。私の動きを制限しようとしているのだろう。


 そんなことしなくても、あとちょっとの命なのに……。


 体感的に悪足掻き回避が使えるのもあと5回ほどだろう。ここに来て更に武装を強化するとは、相当頭にきているらしい。


 じりじりと後ろに下がりながら、竜の動向を伺う。この距離なら断剣尾の動きを見てからでも回避が間に合うし、前脚は届かない。突進読みで左右どちらにでも跳べるように足を曲げる。


 しかし、竜が次に取った行動は私の想像の範疇を大きく超えていた。


 竜の口元から火花が飛び散ったと思ったのも束の間、次の瞬間には視界は深紅に染まっていた。


 咄嗟にフードを被って顔を守り、地面に飛び込むように回避して炎をぎりぎりで避けた。


 火属性まで使えるのーーー!?


 コートの魔法攻撃軽減の効果がなければ、今の攻撃で即死していただろう。コートはあちこちが炭化してしまい、もう次のブレス攻撃は防げそうにない。その場に脱ぎ捨て、ブレスが届かないであろう竜の側面へと移動する。


 竜は私が反撃出来ないのを良いことに、その後もギリギリ避けられるような攻撃を繰り返していた。しかし、そんな攻撃でも数を重ねれば、悪足掻き回避を使わなければいけない場面が当然出てくるわけで。私の残り魔力はもう雀の涙ほどにまで減っていた。悪足掻き回避もあと1度が限度だろう。あちこちから血が滲み出し、身体を動かすたびにぽたりぽたりと垂れ落ちた血が土を赤く染めていた。


 そしてーーー。


「っ……!?」


 竜の動きを気にするあまり、毒で溶けて出来た窪みに私は気づかなかった。


 しまったーーーと思ったが、時すでに遅し。身体は、既に大きく傾き、私は地面に倒れ込んでしまった。


 近づいてくる振動を身体全体で感じ、すぐに立ち上がろうとすると、左足に痺れるような痛みが走った。見ると足首があり得ない方向に曲がり、内出血で真っ赤に染まり始めていた。こんな状態では、まともに動けない。


 そんな私を見て勝利を確信した竜は、ゆっくりとその大口を開き、びっしりと生え揃った鋭い歯を見せつけてきた。腐った肉の臭いが息と共に喉の奥から溢れ出し、私の髪を揺らす。


 あまりの悪臭に思わず右手で鼻と口を塞ぐ。だが、私は左手をめいいっぱい伸ばし、丸見えの喉元に狙いを定めた。


 せめて最後に一泡吹かせてやるーーー!!


 回避の為に取っておいた残りの魔力を限界まで圧縮、中指を折り曲げて親指の腹でそれをおさえ、伸ばそうとする力を限界まで溜め込み、親指をずらした。


 即席の魔力砲(仮)である。だが、その威力は竜を一瞬怯ませるのには十分なものだった。発射された魔力の弾丸は、大きく開かれた口内に吸い込まれるように飲み込まれていき、喉をいとも簡単に突き破った。


 さすがに口内に反撃を受けると思わなかったのか、竜は1歩後ろに下がり、憎しみの篭った目で私を睨み付けていた。


「はは……ざまぁみろ……」


 魔力が本当の意味で底を尽き、徐々に視界が曇る中、私は普段絶対に使わないような言葉を吐き出し、そしてーーー。


 ゆっくりと地面に倒れ込んだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ーーー無属性魔法 フルブースト


 ーーー六葉流呼吸術 竜の息吹


 自分の出せる最高倍率の強化魔法を常にかけ続け、動きに合わせた呼吸で体力消費を限界まで減らしてただひたすら走る。


 遠目に見えた赤黒い空も、今や上を見上げれば一面に広がっている。半日かけて来た距離を、ものの十数分で詰めてこれた。あと数分も走れば、元の場所まで行けるはずだ。


 そのまま走り続けていると、突然身体の中を冷たい何かがすり抜けるような感覚に襲われた。すると、それと同時にかけていた魔法の効果が弱まってしまった。


 少しだけペースを落として後ろに振り返ると、うっすらと膜のようなものが鳥籠のように、ここら一帯を覆っていた。目を凝らさなければ見えないほどだが、恐らくこれが魔法が使えなくなった原因だろう。


 結界の類か?


 頭の中で疑問符が浮かび上がったが、今はそれどころではないと、正面を向き、落ちた強化倍率を魔力で強引に引き上げた。


 体内で発動する魔法には効果が薄いようで、案外簡単に元どおりの倍率を出すことが出来た。魔力も全快していたので、多少の無茶は出来る。


 その後、竜と恐らくレイアとの戦闘跡を目印に、彼女を探した。


 奥に進めば進むほど、周囲の被害は酷くなっていき、所々に生々しい血痕が散っていた。


 そして、5分と走らない内に、倒れたレイアとそれを今にも喰らおうとする竜の姿を見つけた。


「やめろぉぉぉぉっーーーっ!!」


 大声で叫びながら、ぼろぼろになった剣を構える。


 頼むーーー!!一撃だけ……もってくれーーー!!


 心の中で祈りながら、自分の出せる中で最強の型を繰り出す。


 ……助走距離も速度も充分!!!


 ーーー六葉流 奥義


 一撃に全神経を集中し、助走距離を用いた速度での絶対的な一手ーーー!!


 俺の接近に気付いた竜がこちらを振り向く。


 ありがたい、頭部を狙える!!


 戻ってきた敵をすぐに迎撃しようと体を動かし始めるが、俺の方が速い。


 竜が剣のように変化した尻尾を振り上げるまでに、俺は竜の頭部まであと僅かというところまで接近していた。


「そこを……どけぇぇぇぇーーっ!!」


 振りかぶった剣を、最大限に強化された腕力を活かして、全力で竜の頭部に叩き込む。


 ーーー竜攘琥珀!!!


 パァァァアンッと剣と頭部がぶつかり爽快な音立て、頭部が地面に勢いよく叩きつけられる。


 衝撃で地面がクレーターのように大きく凹む。


 そこでようやく俺は、剣が淡い光を纏っていることに気付いた。ほんの一瞬だったが、光球が剣を守っているように見えた。だが、それはすぐに消えてしまい、それと同時に銀剣も完全に壊れてしまった。ここまでもってくれただけでも、八面六臂の活躍と言えるだろう。


 脳震盪を起こしたのかぴくりとも動かなくなった竜を横目に、倒れ込んだレイアの元に駆け寄る。


「レイアっ!!」


 ぐったりと力なく横たわっている彼女を抱き上げる。最悪な可能性が頭の隅をかすめる。そっと彼女の口元に耳を近づける。


「よかった……生きてる……」


 弱々しいが、まだ息はあった。


 竜の意識が戻る前にここを離れなくては、と俺は彼女を優しく背負い、アルハの村へと足を動かすのだった。


サブタイトル書いてて思ったことがあります。




モン○ンに似たような名前のクエストあったよな…

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