21.瞬間防御
「っ!?レイアっ!!」
叫び声とも取れそうな声を上げてぐったりとした彼女のすぐそばまで駆け寄る。あれほどの威力を秘めた雷だ、俺とは比にならない頭痛に襲われたはずである。俺は最悪のケースまで想定していた。
しかし、それは杞憂に終わった。
「ケホッ、ケホッ……」
いきなり咳き込んだと思ったら飛んでいた意識が戻ってきたのだ。
「レイア……!?はぁ、よかった……」
「けほ……ふぅ、死ぬかと……思った……」
便利化した無属性魔法で彼女の体を隅々まで調べてみるがどこにも異常は見られない。
(しかし一体どうやって……)
あれほどの威力だ。寝たきりの状態のレイアが数分(数秒かもしれないが)の意識不明で済むなど奇跡に近い。
「……ふふ、凄いでしょ?」
俺の表情から感じ取ったのか得意げな表情で俺を見つめるレイア。
「今のは雷……かな?それが落ちる直前に雷魔法の防壁張ったんだ」
開いた口が塞がらない。雷が落ちるよりも早くそれを感知し、防御魔法を展開したということだ。凄まじい反射神経である。素直に凄い、と返すと彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
「ところでシュウ、料理はどうしたの?」
「あー……下も結構被害受けてたからすぐには無理だと思う」
「ありゃまぁ。それじゃあ仕方ないね」
それからしばらくたわいのない会話を楽しんだ後、俺たちは無事料理(ちなみに晩御飯である)にありつけたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……しまった」
俺がその失態に気付いたのは夕食を食べ終えそろそろ寝ようか、という会話をした時であった。
「これは……確かにまずいね……」
事態の大きさに気付いたレイアも困惑した様子であった。
いや、確かに空いてる部屋で2人入れればいい、とは言った。その上、少しでも安全な場所に行こうと必死だったので、部屋の明かりが妙に控えめだったことも、ベットが1つしかなかったことも、案内人が最後にお楽しみください、みたいなことを言っていたことも全く気にしていなかった。
つまりこの部屋、地球で言うところのラブホ的な場所ではないのだろうか。
まさかと思ってベッドのすぐ側にある小さな棚を開けてみると、ありましたよ、避妊具。授業で言葉を聞いただけで見たことなかったけど多分それであってるでしょ。写真で見た形してるもん。
俺はその棚をそっと閉じてからレイアに向かって言った。
「俺は食堂のソファーでも借りるからさ。レイアはここで寝て……」
そう言って部屋のドアに向かおうとした俺の手首をキュ、と彼女が掴んだ。女の子座りで顔を真っ赤にして俯いてその上寝巻きに着替えている美少女にそんなことをされ、俺の精神は物凄い勢いで削られていった。
「……わかりました」
やっと、俺が下で寝ることを承諾してくれたか、と一安心したが次の一言で危うく心停止しかけてしまった。
「私がベッドの半分を使うから、シュウはもう半分を使って。それでお互い背を向けて寝る。それでいい?」
え?ちょ、まっ。それってつまり要するに……
添い寝ってことですか?