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色なし勇者の戦い方  作者: Momiji.FS
第1章
16/43

16.出発と予想外

 大小2つの太陽から燦々と降り注ぐ日差しがあたりを明るく照らしている。暑くもなく、寒くもない。長袖でも十分快適な気温の中、俺は舗装された道を南へと進んでいた。


 目的地アルハのまでは徒歩で約4日かかる距離だ。しかし、ラディアの依頼で道中にあるいくつかの街に寄らなくてはならないため、おそらく1週間ほどかかるだろう。


 ラディアの依頼というのは、王都での最近の出来事を記載した手紙を地方の街の領主に渡してほしい、というものだった。もっと面倒な依頼をされるのではないかと思っていた分どこか安心感のある依頼であった。ついでに異世界観光を楽しんでこい、ということだそうだ。


 アルハの村からクラスメートの情報が入ってからすでに3日が過ぎている。あの後すぐに準備に取り掛かったものの装備を用意したり、食料を購入したりと色々と手間取ってしまい出発が遅れてしまった。そして、その持ち物は現在腰のアイテムポーチにしまいこまれている。このポーチ、事前に注いだ魔力の量に比例して容量が増える優れものでその効果は最大で1週間ほど続くそうだ。異世界には本当に非常に便利なものが多い。俺が地球にあるものを真似して考案したポーチなど、このポーチの前では完全に無力だった。お洒落用品としての注目度は高かったらしいが……。


 ピョーッ、と甲高い鳴き声をあげながら羽ばたいている鷲のような鳥を遠目でぼんやりと眺めながら石畳みの道路を歩く。この調子なら今日中には次の街へとたどり着けるだろう。


 そんなことを考えている俺のすぐ横でシルバーブロンドが風になびいている。白いコートを着た可憐な顔立ちの少女が楽しそうにあたりを見渡している。


 そうレイアである。


 どうして王女であるレイアが護衛も付けずに外を出歩いているのか。勿論理由がある。


 まずはじめに、こうなったら経緯をざっくり説明しよう。


 実はラディアの依頼というのは2つあった。1つは先程述べた配達の依頼、そしてもう1つがレイアの護衛であった。

 ラディアはレイアに社会見学をさせたかったそうだ。しかしなかなか良い機会がなく、渋っているうちに数年が経ち、いい加減そろそろと思っていたタイミングで今回の件が出た、ということらしい。


 レイアは「社会見学」という目的で外出しているため、護衛は必要最低限にしてなるべくひっそり行いたい、という理由での決定であった。


「レイアの護衛」という役割で行動を共にしている俺であるがはっきり言って俺は守るどころか守られている。


 ここまでに3度モンスターとの戦闘があったが、どれもレイアが遠距離から魔法で仕留めるという作業と言ってもいいようなものであった。魔法の使えない俺は横で指を咥えて眺めることしか出来なかった。


「うわっ!」


「ひゃっ!」


 突然の突風に俺たちは思わず小さな悲鳴をあげて足を止める。


 ……ん?


 一瞬、すぐ側にある茂みが風とは違った方向になびいたような気がした。


 右手を腰の剣に伸ばし、いつでも抜刀出来る姿勢を取る。レイアも異変に気が付いたのか少し下がって魔力を練り始める。


 ふぅーっ、と息を吐いた瞬間、警戒していた茂みから何かが飛び出す。それとほぼ同時に俺は剣を勢いよく引き抜き、一閃。


 まだだ……!


 十分な手ごたえが伝わってくるがまだ油断出来ない。この世界の生物は皆生命力が強く、致命傷を負っても数日は生き延びる。

 俺はすぐさま足を切り替え、怯んだ相手の胴体に右斜め下からの切り上げと、左から右への平行切りを素早く叩き込む。カウンターからの2連撃。


 ーーー六葉流剣術 十八式 3連撃技 燕返し【疾風】


 大地の祖父にあたる英光(ひでみつ)さんから教わった剣術の1つだ。


 首元に3度も斬撃を受けたハインドロウと呼ばれる狼のモンスターは再び地面に足をつけた時には既に絶命していた。


「ふぅ……」


 ひと息ついてから刃に付着した血を落とし、鞘へと戻す。ようやく護衛としての役割を果たせたような気がした。


「……すごいね。今の攻撃」


 呆気にとられたような表現をしたレイアが感心したように言った。 


「前に言ったろ?英光の爺さんから教わったんだよ」


「すごい人なんだね。そのヒデミツって人」


「すごいどころか化け物だぞ?……あの人は」


 俺と大地が2人掛かりで襲っても一瞬で返り討ちにされるほどの強さである。ステータスやスキルを手に入れた今でも勝てる気はほとんどしない。


 あの人も実はスキルとか持ってるんじゃないか?


 そんな気がしてならなかった。



「あっ!あれじゃない?」


 日が傾き始め徐々にあたりが暗闇に染まっていく中、レイアが数キロほど先に光輝く魔光石と思われる多数の光を見つけた。


「……うん。間違いないだろうな」


 地図を確認してみるが、周囲の地形は地図と寸分狂わず一致している。


「あそこがカリフォンだ」


 俺たちは最初の街へとたどり着いた。

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