15.1人目の情報
「疲れたぁ……」
あの後レイアと魔法勝負もしてくたくたになった俺は部屋に戻るならソファに倒れ込んでしまった。
「……痛つつ」
結果は分かりきっていた。当然俺が負ける。魔力量が違えば経験量も違う上に魔法適性の数も彼女の方が圧倒的に多い。
この世界には8つの基礎魔法とそこから派生した無数の派生魔法があるのだが、レイアの適性が基礎全てと派生4つなのに対し、俺の適性はまさかの無属性のみ。召喚された者は大抵5、6つは適性を持っているので1つしかない俺は逆に希少な存在らしい。全く嬉しくない。
ちなみに今日は風の刃で切り刻まれて負けた。
その前は氷漬けにされ、その前は水圧で押し潰された。
基本的に温和で優しい性格のレイアであるが、魔法となると容赦がなくなる。万が一でも死なないように威力を調整しているだけまだましだと言えるが、それでもかなり痛い。
それに対して俺が使うのは属性を持たない無属性魔法による身体強化や衝撃魔法。自身や他人を強化したり妨害したり、また攻撃も可能なオールラウンドの魔法ではあるが他の属性のある魔法と比較すると威力に欠けるという欠点がある。まぁ、「器用貧乏」というのが1番合っている。
したがって、適性も多く尚且つ大規模な攻撃魔法を使用するレイアには勝てないのである。
願わくば、もう少し威力を下げて欲しい……。そんなことを思いながら俺は徐々に重みを増していく瞼を閉じていった。
コンッコンッ。
部屋に響き渡るノック音で目が覚めた。
ゆっくりと覚醒していく意識を頼りにドアに近づき鍵を開けて少し開く。
「夜遅くにすまんな、少し話があるのだが構わないか?」
ドアの前に立っていた想定外の人物に緩んでいた意識が一瞬で覚醒する。
「ラディアさん!?何の御用でしょうか?」
思わず大声を出してしまう。
「そこまで驚かんでもいいだろう……。話がある、ひとまず中に入れろ」
そうしてこの国の国王が俺の部屋へと入ってきた。
向かいのソファでコーヒーを飲むラディアを俺はがちがちに緊張した表情を浮かべながら座って眺めていた。
ラディアとはこちらの世界に来て以降何度も話をしたが、お偉いさんという意識が抜けずにずっとこんな感じで接していた。
「そんなに緊張するな、別に変な話をするわけではない」
そう言われましても……。
「話というのはお前さんの今後についてだ」
おっと、そういうわけなら話は別だ。緊張が少しだけ緩んだ気がした。
「お前さん、今度どうするつもりだ?」
「そうですね。ひとまず隣国のノティア共和国を目指そうと思います」
「ほぅ、ノティアか。なかなかいいところだぞ、あそこは」
ノティア共和国というのは大陸の南西に位置する、この国から見て真南にある観光業が盛んな国である。多くの国から人が集まるため情報量も多い。召喚された他のクラスメイトの情報もきっとある、と踏んでの決断であった。
「いい判断だが、それは却下だな」
「えっ?どうしてですか?」
我ながら良い判断だと思っていたのだが、ラディアはそれを良しとしていないようだった。
「別にノティアに行くこと自体を却下しているわけではないぞ。それより先に向かう場所があるということだ」
ラディアは頰を緩んませて続けた。
「この国の北西、アルハという村でお前の仲間と思われる者が保護されたと言う情報がつい先程入った」
「……!?」
思わず目を見開き、息を飲む。そして徐々に嬉しさが滲み出してくる。
生存者が……いた……!
それは俺を大きく励ます知らせであった。1ヶ月も情報がなかったため「最悪の事態」を覚悟していたのだ。
「本当ですか!」
「あぁ、王都の調査隊の隊長の話だ。まず間違いないだろう」
「準備してすぐ行きます!」
そう言って荷物をまとめようとした俺の腕をラディアは待て、と言って掴む。
「迎えに行くのは止めん。ただ1つ、頼みがある」
嬉しそうな、いや楽しそうな笑みを浮かべながらそう言うラディア。
この男、俺が断れないとわかって面倒ごとを押し付けようとしているのである。




