14.1ヶ月後
ーーーそれから1ヶ月
俺は王城の客室の1つを自室として使わせてもらいながら着実に知識を蓄えていた。
最初の課題であった言語を5日で完璧に覚えるとしばらく図書館に籠り、ひたすら本を読み漁っていた(思っていたより難しくなかった)。ある程度の知識を頭に叩き込んだ俺が次に取り掛かったのは、この世界で生き延びるための術を身につけることであった。
「ふんっ!!」
2メートルはあろう大剣が凄まじい速度で振り下ろされる。刃の付いていない訓練用の木剣ではあるが、当たれば大怪我、最悪死に至るだろう。
「は……ぁっ!」
その一撃に対し、俺は右手の木製片手剣を横から当て、滑らせるようにして受け流す。ピシィッ、という嫌な音が鳴り、剣の一部が欠ける。腕の痺れを下唇を噛んで堪え、隙だらけとなった相手の懐に潜り込み、剣先を相手の胸元に当てる。
「はいっ!そこまでっ!今回はシュウの勝ち」
僅かな静寂ののち、1ヶ月で聞き慣れた少女の声が耳に入る。
何度も受け流しを行ったせいでボロボロになってしまった剣を腰のベルトに戻し、彼女の元へ向かう。はい、と手渡されたタオルで顔の汗を拭き取る。試合時間およそ30分、それだけの時間がありながらまともな攻撃を繰り出せたのは最後のみだった。ちなみに12戦中11敗である。
まだまだだなぁ、と実力不足を噛み締めつつ、レイアに感謝を伝える。
すると、背後から対戦相手をしてもらっていた大男が木製と言えどもかなりの重量の大剣を片手で軽々と担ぎながらこちらに歩み寄ってきた。その額には汗粒ひとつない。
「いやぁ〜、だいぶまともに戦えるようになったなぁ」
「クロスさん。それ、そんな爽やかな顔で言われても……」
「ハッ、俺に疲れた顔して欲しけりゃステータス1万超えてから出直して来い」
大剣にも負けないほどの巨体を持つこの男、クロス•ヴォルトはそう言って豪快に笑いながら俺の背中を力強く叩く。痛い。
彼はこの国の騎士団長の1人である。ステータスが4桁なのは当たり前、中でも攻撃力がずば抜けて高く、5桁に乗っていると噂される程だ。
剣の素振りをしていた時に出会って以来、訓練場でよく会うようになり、話をしたり、模擬戦の相手をしてもらったりするようになった。そんな彼に鍛えられた俺のステータスはスキルの恩恵もあって、この期間で飛躍的に上昇していた。しかし、それでも3桁。手加減しているクロスに辛うじて勝てる程度だ。圧倒的な実力差を思い知らされる。
ちなみに、レイアとも戦ったことがあるが、はっきり言って勝負にならなかった。パワー特化型のクロスとは異なりスピード特化型のレイアは俺と全く同じ木剣を使用していた。目にも止まらぬ連撃を舞っているかのようなステップで繰り出す、手数、速度重視の彼女の攻撃はややスピードタイプよりのバランス型ステータスを持つ俺とはとことん相性が悪かった。
攻撃、反撃を許さないレイアの攻撃に対し、俺は防御と回避に徹底するしかなかった。それでも避け切れるのは5回に1回、よくて2回程でそれ以外は隙だらけの身体に吸い寄せられるように叩き込まれていた。ステータスが上昇してこれなのだ。泣きたくなる。
レイアを見ながらそう思い返していると、視線に気づいた彼女は俺の顔を覗き込む形で見つめ返してきた。上目遣いのその体勢に、思わずたじろいでしまう。
俺がレイアと目を合わせられないでいると、彼女は何を思ったのか小悪魔じみた笑みを浮かべると俺の耳元に顔を近づけて小さく囁いた。
「やる?」
「イイエ、ケッコウデス」
一方的に叩きのまされる未来しか見えてこない。乾いた笑みを浮かべながら、慇懃に断った。
「よきかなぁ」
そんな2人を少し離れたところで微笑みながら眺めるクロス•ヴォルト。王国最強の矛と呼ばれる彼の趣味。
それは、若い男女の恋愛事情を遠目に眺めることである。
テスト期間って勉強以外のことがスムーズに進む気がするW(`0`)W
こんな話を入れたらどう?
ここが面白い!
こんな人物を出して欲しい!
...等の感想を下さい!やる気が上がります。
場合によってはキャライラストを載せます!