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第28話 闘い済んで夜が明けて


「アキきゅーん! やりましたね! とってもかっこかわいかったですよ!」


「アキくん、きみは本当にたいしたヤツだよ。素晴らしいプレイだった」


 フォレストガンマとの死闘を終えた俺を迎えてくれたのはヒナとキンさんだ。

 ヒナはピンクツインテを振り乱しながら俺を抱きしめて労ってくれた。

 火照った俺の頬が、ヒナの冷たい頬で癒される。

 幼女対少女のぷにぷにほっぺ対決。

 んー……引き分けっ!


「しかし勝ったはいいけど、色々バレちゃったよなぁ」


「でも、あんなのが相手じゃ仕方ないですよ」


「うむ。多少の情報流出は必要経費と割り切るべきだね」


「そう……だよな」


「それにしてもアキきゅんのツンデレ幼女ぶりはお見事でしたよ。私まで萌えましたもん」


「確かに随分と板についてきたもんだね。もうこのままずっとロールプレイしたほうがいいんじゃないのかい?」


「えぇ~?」


 などと話していたところへ。


「あのー、幼女ちゃん……いや、アキちゃ……さん。あんたのおかげでレイドボスに勝利したようなもんだ。本当にありがとう。オレらは一生首都へ辿り着けないんじゃないかと不安になっていたんだぜ。あんたには感謝しかないよ」


「アキさん……さっきのあれってユニーク関連でしょ? ああ、やっぱり答えなくていいです。私たちは誰にも見たことを話すつもりはありませんから安心してください」


「なぁ、アキ姫ちゃんって呼んでもいいかな?」


「お仲間の人もありがとう。えーと……名前は読めないけど、侍祭さんにはヒールをかけてもらったし」


「ヒナさんにはポーション代をお返ししますね。ポーションを分けてくれてありがとうございました」


「アキ姫ちゃん! 頑張ったご褒美に罵ってくれぇ!」


「いやー、いい戦いだったなぁ」


「久々に燃えたよ」


「俺は幼女ちゃんに萌えてたけど」


「楽しかったわアキ姫ちゃん。また一緒にやりましょうよ」


 またしても俺たちはプレイヤーに取り囲まれたのである。

 いいヤツらだな。

 共闘ってのは友情を育むもんだ。

 ま、一部変態も交じってるけど。

 それでも楽しかった!


「みんなで頑張ったの、とっても楽しかったよ! ありがとう!」


 巻き起こる拍手喝采。






 だが、そんな俺たちを闇夜に紛れて秘かに監視していた者が少なからずいたなどとは知るよしもなかった。




「ふむ……どうやら掲示板の噂とヤツの情報は本物だったらしい。我らの動きを『ユニバーシティ』に気取られてはおるまいな?」


「……ええ……ご心配なく……」


「さっきのぉ【大号令】でしたっけぇ? すっげぇ壊れスキルでしたねぇ。現環境じゃぁブッチギリでしょぉ?」


「……チートの可能性は……ないの……?」


「あるわきゃねぇだろぉ。ここの運営は色ぉんな意味で頭イカれてるしぃ」


「自称ハッカー気取りの愚か者が【OSO】に攻撃を仕掛け、即座に捕縛されたようだが」


「……じゃあなんで……あの子だけ……?」


「わからぬ。バグなのかもしれぬし、運営側がなにかを目論んでいるのやもしれぬ」


「……あなた……その口調なんとかならないのかしら……」


「……お前もな」


「口調の話なんてぇ、どうでもいいでしょぉ? 取り敢えずぅ、最前線に戻ろぉよぉ」


「お前も相当酷いがな。ところで『ツナ』はどうした?」


「……さぁ? ……またどこかをふらふらしてるんじゃないかしら……」


「あやつめ、実力は確かなのだが……」


「……確か実家に帰省するから……ログインは不定期になるかもって……」


「ふん……まぁ良い。転移門ワープポータルを頼む」


「……了解よ……」


 バサリと黒いマントを翻し、ポータルに入る赤黒い鎧の人物プレイヤー

 そのマントには、下向きの剣を挟むように吼える二頭の猟犬が描かれていた。






「ほぉおー!」


「ふわぁー! すごいですー!」


「首都ともなると、流石に大きいねぇ」


「ニャル、ここでもしゃべっちゃダメだぞ」


「はいニャル!」


「もうしゃべってんじゃん……」



 夜明けの早い夏ゆえに空もだいぶ明るくなってきた頃、俺たちは首都アランテルの南大門前に辿り着いた。

 延々と続く城壁に度肝を抜かれ、その城壁の高さに感嘆の声を上げる。


 そしてこの賑やかさたるや!


 南大門前は広場となっており、NPCも含めた人々の憩いの場として開放されているらしい。

 そして広場にはもうひとつの側面もあった。


 ここの通称が『臨公広場』と呼ばれる所以である。


 臨公とは臨時公平パーティーのことだ。

 つまり、経験値公平システムを使ってレベルを上げたい者や、アイテム採取目的などの同志を募り、臨時の野良パーティーを組んでクエストへ向かうのが目的なのである。


 ベンチに座ったり、地べたへ直接寝転んでいるプレイヤーの頭上には吹き出し状の看板が浮かんでいた。

 そこには『レベル60代の人募集!』、『西の古代遺跡ツアーへ行きませんか?』、『レベル上げを手伝ってください!』などと言ったパーティーメンバー募集の文言が書かれている。


 中には、『団員募集中! こちらまったり団です!』とか『当方レベル90↑ ガチ団に入れてください!』等々の団員募集や自分を売り込むプレイヤーもいた。


 ともあれ、この臨公広場はそう言ったプレイヤーで溢れかえり、賑やかさと熱気に包まれているのである。


 うーん。

 こう言う光景はいつ見てもいいね。

 みんな全力で遊んでるって感じがするもんな。

 ただ、便乗商売してる連中はどうかと思うけど。

 大抵は街の中まで買い物に行くのが面倒な連中を狙って、市場価格よりも高値で消耗品を売ってたりするからな。

 ま、それも商売のテクだと言われれば、ごもっともなんだが。

 しかしまぁ、明け方だってのにみんな元気だねぇ。


「ふわぁぁ」


「ん、眠いかヒナ?」


「少しは」


「キンさんは?」


「僕も結構眠いよ。もう朝になるしね」


「んー、俺も疲れたなぁ。ボス戦で一番頑張っちゃったし? ……チラッ」


「わ、私だって魔法が効かないとわかってからポーションの補充をしに街まで全力疾走したんですよ!?」


「僕だってヒールを求めまくる子羊プレイヤーたちに頑張ってかけ続けたよ!?」


「はっははは、わかってるって。ほんじゃセーブしたら仮眠しようぜ」


「あ、アキきゅん。午前中にデートしません? あとお姉さんにもご挨拶したいなーなんて思ったんですけど」


「ああ、いいよ。何時に……」


「こんのリア充どもがぁぁあああああああ!」



 キンさんの怒りと悲しみと血涙に満ちた絶叫が木霊するのであった。




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