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第24話 迫真の姉


夏姉ナツねぇ!?」

「『お姉ちゃん』、だよ秋乃くん」

「お、おう、夏乃ナツノお姉ちゃん……」


 この、ものすごくおっとりとしながらも、なんでか押しが強い人こそ俺の姉、夏乃だ。

 髪形とか顔立ちとか雰囲気とか口調とかが、全体的にほわほわふわふわした感じなのに芯は滅茶苦茶強いと言う、このギャップたるや。


 何が一番ヤベェって、この夏姉はだな……


 極度のブラコンなんですっ!

 いや、妹も含まれるからブラシスコンなんですっ!!


 忙しい両親に代わって、三者面談に俺の学校まできちゃうほどにっ!


 姉は大学生で一人暮らし中なんだけど、わざわざそんなもんのために帰ってくるんだぜ?

 有り得ねぇだろ……


 しかもこんなにホワワンしてると思えば、専攻は理系な上、料理も家事もバッチリとわけのわからんハイスペック持ちなのである。

 とても俺の姉とは思えない。

 ってかホントに俺の姉か?

 共通点が一個もないぞ……


 ちなみに妹は春乃ハルノと言う。

 春乃、夏乃、秋乃ときて『冬』はおらんのかーい、と突っ込むなかれ。

 俺の母親が冬子トウコだったりする。


 わーい。

 四季制覇だー。

 ちなみのちなみに親父は秋人アキヒトで俺と同じ秋生まれだ。

 うむ、本気でどうでもいいな。



「それより、なんで姉ちゃんがここに?」

「うん? ほら、お父さんとお母さんが例の旅行に行っちゃったから、可愛い弟と妹のお世話をするために帰ってきたんだよ」


 相変わらずズレてんなぁ。

 まぁ、そう言うのんびりした性格も嫌いじゃないけど。


「いや、それは知ってるよ。そうじゃなくてさ、なんで俺の部屋にいるのって話」

「あぁ~。だって、わたしが帰ってきたのに、秋乃くんったら全然顔を見せてくれないんだもん。何度も呼んだんだよ? だけど返事がないから心配に(寂しく)なっちゃって、合鍵を使ったの。ゲームばっかりしてちゃメッだよ~」


 こわっ!

 なんて怖いことをするんだこの人は。


「やっと秋乃くんの顔が見られた~。はーい、お姉ちゃんと再会のハグですよ~」


 って、ぎゃーーー!

 脈絡なく抱き着くなぁ!

 しかも俺の頭を抱えるなぁ!

 でっかいアレが当たってソレがアレだろがぁ!


 この過度なスキンシップはいくら姉弟であっても慣れるもんじゃない。

 ましてや俺も健全で思春期真っ盛りの男の娘……じゃなくて男の子なのだ。

 たとえ相手が姉だとしてもなんだかモヤモヤするんですよ!


「姉ちゃんさぁ、いつまでも俺らに構ってないで彼氏のひとつも作ったらどうなんだよ」

「えぇ~、めんどくさいも~ん。男の子は秋乃くんだけで間に合ってまーす」

「モテるのに勿体ねぇなぁ」

「わたしより春乃ちゃんのほうがモテるよ。夏休み前に告白されちゃったんだって。どうすればいいかなって相談されたよ」

「なにぃ!? 許せん! あいつにはまだ早い!」

「そういう秋乃くんはどうなの? 可愛い顔してるんだからモテるんじゃない? 前に男の子からラブレターをもらってたよね」

「ぶっ! そっち!? 嫌な記憶を思いださせないでくれよ……あ、でも」

「うん?」

「姉ちゃん、俺の後輩に松宮日菜子マツノミヤヒナコってのがいるんだけど」

「うん、しってるよ。一度会ったもん。ツインテールの可愛い子だよね~?」

「……俺、そいつと付き合ってる。と言っても実質今日からだけど」

「えぇ~!? そうなの!? そっかぁ、秋乃くんも大人になっていくんだね。お姉ちゃん、なんだか寂しいなぁ」


 俺の頭を撫でながらしみじみと言う夏姉。

 おばさん臭いぞ。

 まだ19歳だろ。

 あ、もうすぐ二十歳か。

 姉ちゃんこそ大人になるじゃん。


「でもお姉ちゃんが秋乃くんを大好きなのは一生変わらないからね。いっぱい甘えていいんだよ~」

「そ、そうですか」

「秋乃くんもお姉ちゃんが大好きだよね?」

「そ、そりゃもちろん好きだよ。姉ちゃんがいなかったら俺も春乃も何度か餓死してたと思うし」

「うんうん、いい子だね~。あ、そうだ! 晩御飯! 春乃ちゃんもお腹ペコペコにしてるから早く食べよう」

「あいよ。本日のメニューは?」

「秋乃くんの大好物、ハンバーグでーす」

「うわーい! って、子供か俺は」

「えぇ~? 去年も『お姉ちゃんのハンバーグが一番うまい!』って言ってたよ~。だから張り切っちゃった」


 確かに言った覚えもあるが、どんな記憶力だよ。





 最高に美味いハンバーグを食べ終え、風呂に入り、課題を済ませ、水分補給とトイレも完了。

 ついでに待ち受ける長丁場に備えて栄養剤も摂取!

 夏姉も春乃も既に就寝済みを確認。


 時刻は零時少し前。

 頃合いや良し。


 へっへっへ。

 ヒナにかました啖呵通り、徹夜でプレイしてやらぁ!


 ヘッドセットを被ってヒョインとログイン。



「あ、遅かったですねアキきゅん」

「やっとお出ましかい」

「ご主人さまーこんばんはニャルー!」

「ぐあっ! 出遅れたっ!」


 NPCのニャルは飼い主の俺がログインすると同時に具現化するからともかくとして、ヒナとキンさんはとっくの昔にログインしてやがったのだ。

 なんちゅう暇人だよ。


 そんな暇人はごまんといるらしく、そこかしこでプレイヤーが絶賛戦闘中だった。

 そういや今日は土曜だもんな。

 人が多いわけだよ。


「随分遅かったですけど、リアルでなにかありました?」


 そっと寄り添ってくるヒナが可愛らしいなぁと思いつつ、幼女の自分を恨めしくも思った。

 身長差がぁ……


「あったなんてもんじゃねぇよ。姉貴にとっ捕まってた」

「お姉さん帰省してたんですね。私も会いたいなぁ」

「お前も姉ちゃんの魔の手に引っかかった口かよ」

「えー、だってお姉さん素敵じゃないですかー。可愛いし、優しいし、スタイルもいいし、頭もよくて家事もできちゃうなんて憧れますよ」


 『ヒナのほうが可愛いよ』などとキザなセリフを言ってやろうとしたんだが、思わぬ横槍が入った。


「そ、その、アキくんのお姉さんとやらを僕にしょ、紹介すると言うのはどうだい?」

「キンさん……諦めてください……お姉さんはアキきゅんにゾッコンなんです」


 言い方ァ!!

 ヒナ、その言い方は誤解を招くゥ!

 こいつ!

 クスクス笑ってやがる!

 わざと言ったのか!


「アキくんはその、お姉さんといけない関係にあるのかね……?」

「違っ!」


 ほれ見ろ!

 普通はそう思っちゃうわな!


「そうなんです、お姉さんはアキきゅんを溺愛してるんですよー」

「で、溺愛……」


 なんだよキンさん。

 その変態を見るような目はよぉ!?

 変態はあんただろうが!




「あのー、すみません。その猫ちゃんはどこでテイムできるんですか? おや? あなたのその姿は……?」



 しまった!

 油断してた!

 この明らかにハイレベルっぽいプレイヤーに俺はなんて答えればいい!?

 できればユニークモンスターであるニャルの情報は伏せたままで!

 俺が幼女になった経緯も話せないぞ!


 ……無理ゲーじゃね?





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