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第163話 激突! 邪神戦! 2



 超高度から降り注ぐ邪神アポピスのブレス────毒か!?


「ディフェンスシフト! リフレクションシールド! ペインオブカース!」


 ツナの缶詰さんが発動したスキルによって、俺たち全員が彼女の背後に集められた。

 更に敵の攻撃を反射する盾、いや壁を展開する。

 これは、ユニークジョブ【カースナイト】の固有スキルで、俺も且つて幻魔ゲンマから食らったものだ。

 最後のは……初めて見るのでよくわからない。


「あっ! すごいですよ! 邪神の身体が紫色に!」


 ヒナの言う通りであった。

 鉛色だった邪神の胴体が、みるみる紫に染まっていく。

 アポピス自身の毒か、それともカースナイトの呪いか。とにかくそう言ったあまり良くないイメージの色だ。


「ぐぅぅっ! 全ては跳ね返しきれません! みなさん散開を!」


 ツナの缶詰の声に俺たちは素早く反応し、その場から散った。

 ヒナとキンさんは後方へ。


 そして、俺とシーナさんは────前方へ!


 途中で左右に別れ、紫に染まったあまりにも太い邪神の胴体に攻撃を加える。


 ザシュッ

 ドゴン


 俺の斬撃とシーナさんの拳はまとがデカすぎる故に余裕で命中した。

 見ればしっかり傷ついている。


 いいね。

 やれそうだぞ。

 もしや紫の部分は防御力が低下してる?


「ヒナ! シーナさん! 色の変わったところを狙って! 【勇猛果敢ブレイブハート】! 【姫の誇り(プリンセスプライド)】!」

「アキお嬢さまの仰せのままに。チャクラアクセル! 硬気功! 周天! 双龍脚!」

「了解ですアキきゅん! ブーストマジック! ダブルマジック! クイックスペル! 万物に宿りしマナよ、天に代わりて雷の矢を降らせ! 轟雷テスラ・スパーク!」


 ヒナの魔法を皮切りに、全力攻撃を開始する。

 俺たちの放つスキルは、どれも確実に邪神へダメージを与えている。

 途方もない大きさであろうとも、途轍もないHPであろうとも、削りを繰り返せばいずれは倒せるはずだ。


「みんな! 上だ! ぐああああっ!」

「上? ぐっはっ!」

「きゃあああ!」

「くっっ!」

「ああああっ!」


 キンさんの声が耳に届き、見上げた時にはすでに遅かった。

 得体の知れない攻撃を全員が貰っていたのである。


 いってぇー!

 なんだ今のは!?

 一瞬だけ見えた……ピンク色の柱のような……

 ……あれはまさか、舌!?


「離れていた僕には見えた! 先が幾重にも分かれた邪神の舌だ!」


 地面に穿たれた穴は8か所。

 八岐大蛇ヤマタノオロチならぬ八岐のベロってか!


「上にも注意してくれたまえ!」


 素早く近付き、俺たちに回復魔法をかけてまたさがっていくキンさん。

 こういう時の彼は異様に俊敏だ。

 もっとも、回復役に死なれては困るので納得はいかないが問題は無い。


「みんな、怯まずに攻めるよ!」


 スキルのクールタイムを終えたツナの缶詰さんも加わり、四人で再度攻撃を開始する。

 時折降ってくる邪神の舌攻撃をキンさんの合図で躱しながら。

 来るとわかっていれば避けるのはそれほど難しくはない。

 後衛への攻撃はツナの缶詰さんが範囲シールドスキルで軽減していた。


 これならいける!


 そう確信しかけた時、異変は起こった。


 SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA


 蛇特有の威嚇音が遥かな頭上から聞こえた途端、邪神の胴体が纏う無数の鱗からが生えだしたのだ。

 触腕や触手などの比喩ではない。

 文字通りであった。

 それも鱗一枚につき、一対の両腕である。


「なっ、なにこれ!? 気持ちわるっ!」

「いったい何万本あるんですか!」

「アキさん、気を付けてください! この腕は伸びます!」

「掴まれでもすれば厄介でございます。アキお嬢さま」

「だね! あの鋭い爪にも注意だよ!」


 まるで一本一本が意思を持ったかのように蠢く人間と変わらぬ腕の群れ。

 基本的に人間サイズの腕とは言え、これでは下手に近付くこともできない。

 しかし、ただ手をこまねいているわけにもいかん。


「腕を斬り払って攻撃の起点となる場所を作ろう! 集中攻撃!」


 俺の言葉に頷くみんな。

 作戦が決まれば行動も早い。


 ヒナの魔法が炸裂した部分に俺とシーナさんが特攻する。

 群がる腕を斬り飛ばし、ブチ折りながら接近した。

 だが、近隣の腕はツナの缶詰さんが言った通り伸び出して俺たちを捕らえる気だ。

 中には指を揃え、その鋭い爪で貫こうとするものもあった。


 それらをどうにか躱し、あるいは斬り裂きつつ、胴体へ肉迫する。

 聖剣エクスカリバーを両手持ちに替え、身体ごとぶつかるように深々と突き刺した。


 GIIIIIIIIIIIIIII


 手応えあり!

 邪神は明らかな苦鳴を発し、巨体をのたうたせている。


 だけど……何だろうこの違和感。


「アキきゅん。なんか変じゃありません? 痛がってる割に邪神は移動してませんよね」

「確かに……」


 ヒナの言葉に同意する。

 普通なら本能として、痛みの元となるものから遠ざかろうとするものだ。

 なのに邪神はほとんど動いていない。


 もしやこの場から動けない理由でもあるのか?


 例えば……何かを守っているとか。


 いや、それを考えるのは後だ。

 今は邪神こいつを倒すのが────


「くぅぅぅっ!」

「シーナさん!」


 悠長に話していた俺のバカ!

 シーナさんが無数の腕に捕らえられてしまった!


 慌ててエクスカリバーを胴体から引っこ抜き、シーナさんに絡みつく腕を断ち切ろうと振りかぶる。


「ぐあっ!」

「アキきゅん!」


 油断した。

 迂闊だった。

 背後から伸びてきた腕が俺をも捕らえたのだ。


 メキメキメキ


「がっは!」

「ぅうううっ!」


 容赦なく絞め上げてくる腕。

 嫌な音を立てるのは俺の鎧か、それとも肋骨か。


「アキきゅん! シーナさん!」

「二人とも!」

「今お助けいたします!」


 ヒナとキンさん、ツナの缶詰さんの声が下から聞こえる。

 俺はどうやら持ち上げられたようだ。


 油断大敵。

 万事休す。

 絞め上げは激化し、HPゲージがみるみる減って行く。


「ぐぅっ! く、悔しいけど、死に戻ってくるよ。この状態で蘇生されてもまたすぐ死んじゃうしね。ハカセたちを連れてくるまで退避してて」

「アキきゅん!」


 苦しいが、どうにか笑みを浮かべる俺。

 ヒナの泣きそうな顔が胸に痛い。


 しかし、その時。



 ドゴォォォオオオン! ドゴォォォオオオン!



 とんでもない轟音と振動が、邪神ごと俺を揺さぶったのである。




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[一言] たがねさん達到着したか?
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