第1話:AIスキルと謎のじいさん
「まあ、とりあえずそんなところに立ってないで座りなさい」
状況をまだ呑み込めずボケっとしていたら、
小さなじいさんにそういわれた。
「あの、ここは?」
ちゃぶ台で座っているじいさんに近寄りつつ質問をした。
「ここは管理者エリアのさぼr...休憩室じゃ」
さぼりって言おうとしなかったか?
状況は今だ理解できないが、警戒しつつもこのじいさんだけが
今の貴重な情報源なので会話を続ける。
「さきほど執事服の格好をした『セバス』という男に招待状を
もらったのだが、場所はここであっているだろうか?」
赤い封筒と永久証を見せながら質問をする。
「そうだな、ここであっておる。待っておったぞ。
しかも、赤を選ぶとはな...おぬし、本当によいのか?」
「いきなりで驚いたけど、面白そうな話だったからな」
「前の世界に未練はないか?」
「まあ、研究が完成しなかったのは未練だけど
それはどこでもできるから構わないさ」
パソコンと自分がいればどこにいても問題ない。
「そうか、でもこれから行く世界はおぬしの世界ほど
電子機器は進んでおらん。だからお主が好きなパソコンはないぞ?」
「なにぃぃぃ!!」
確かに飛ぶ世界の状況を確認してなかった。
「ショックを受けているところ悪いが話を進めるぞ」
「セバスから話を聞いていると思うが、こちらの世界がめんどうな状態にあってな
私が世界に干渉できる範囲が限られておるのだ。」
「そんな状況なのだがバカ邪神側で負因子を使って
世界を闇で埋め尽くそうとしておる。このままでも
最終的には奴らを滅することができようが今を生きるものたちに
多大な負荷がかかってしまう」
パソコンないのかぁ...
「前管理者のせいで後手に回ってしまったが、
奴らの包囲網に小さな穴をあけることに成功した。」
「わしや部下が直接手を下すことはできないが、
異世界の人間にある程度のスキルを与えて世界に投入することは可能だ」
「それも、数が限られているのでな。セバスに有能な人間を選定して
連れてくるように言ったのだ」
はぁ、パソコン...
「これからお主が向かう世界は剣と魔法とスキル溢れる
ファンタジー世界だ。他種族がおりダンジョンなど様々な
ギミックが合わさった巨大な世界として複数の権限者とともに
開発した世界で管理ワールドランキングでも上位のものであったのだが...」
「帰ります」
「そうであろう、男ならそのロマンに...え!?今なんと?」
「パソコンないなら帰ります。さようなら」
・
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・
静寂な時が流れる
「それは無理だな。お主は帰れぬ。」
「いや、帰る」
「お主は、契約時に帰れない契約をしたであろう?
こちらの世界に渡るときに体の構成が変わっておるのだ」
「無理やりゲートをくぐったとしても体が耐えられずに消滅してしまう」
なんてこった...ガックリとしてその場に手をつく。
「だが、似たようなことをできなくもない」
その一言に、飛びついた。
「何!?本当か?」
爺さんの肩をつかむ勢いで迫ったのだが躱されてコケた。
「そう慌てるでない。順序立てて説明してやるから」
とりあえず、畳だったので正座して姿勢を正した。
「それで、似たようなこととは?」
「お主が持っている赤い招待状と永久証、それを手に入れるときに聞いたはずだ。
強力な特典がもらえると」
「たしかにそれは聞いた。どうせこちらに来るなら強力なほうがよいとも考えた」
「通常であれば、剣聖、賢者、神速など あちらの世界では
最強と恐れられる能力を与えるのだが、それらの既存のスキルではなく
ワシの力と招待状のギフト能力を使えば新たなスキルを作ることが可能だ。」
「その力を使って、俺の望むモノを作ってくれると?」
「さようじゃ。お主の望みはパソコンと研究であろう。
だから、それ専用のスキルを作ってやろう。」
「ぜひ頼む!!」
マジか!やったぜ、異世界。
「ただ、お主はちょっと痛いけどな」
ぽつりっとつぶやく。
「えっ?今なんて言ったんだ?」
「では行くぞ?」
「ちょっ!待って!!」
ピカッ!!
バリバリバリバリ!!
「!?」
「イタイイタイイタイ」
体中を電撃が流れるような痛みが走る。理科の実験などでよくある
ピリッとしたものではなく、アニメの雷に打たれたみたいな感じ。
超イタイ...
そんな感じで体中を掛けめぐる電撃を受けてよくわかないうちに
「完成じゃ」
じいさんがそう言ったタイミングで電撃が止まった。
「ふう、久しぶりでちょっと張り切ってしまったわい。」
「おい...」
「ん?なんじゃ。礼なら大丈夫じゃよ」
「礼なんていうか!あそこまで痛いなんて聞いてない。
これで本当に望むスキルでなかったら覚えとけよ...」
今だにピリピリする腕をさすりながら、じいさんを睨む。
「ほっほっほ、まあそういうな。面白いスキルを作ったから見てみよ」
「どうすれば確認できるんだ?」
「ステータスオープンと唱えてみよ」
「ステータスオープン!」
言われたとおりに唱えてみた。
すると目の前に半透明のゲームに出るような画面が出てきた。
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ステータス:
名前:クロセ レン
種族:人族 性別:男
年齢:20歳
職種:村人 Lv1
HP:120/120
MP:75/75
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筋力:35 耐久:40 敏捷:45 器用:120 魔力:60
精神:112 魅力:78 直感:82 幸運:50 騎乗:75
魔法資質:火E 水G 木G 風G 地G 光G 闇E
スキル:自動言語翻訳/AIスキル/鑑定
魔法:魔力操作 Lv1/
加護:守護神の加護/
称号:異界人/神に直接文句を言った男/神からの(笑)っぷぷw
スキルポイント:100
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『AIスキル』というものが恐らく目の前のじいさんが言っているものだろう。
だけど、翻訳と鑑定も今回ので作成したスキルなのであろうか?
そして、俺は今年で34歳になるはずだったので年齢がおかしい。
ステータスについては、これが高いのか低いのか他の人と比べていないので分からない。
っておい、称号がおかしくね?
「スキルに翻訳と鑑定も追加でプレゼントしておいたので、たいていのことは自分で分かるだろう」
ステータスを確認していたら、じいさんに話かけられた。
「年齢が実際の年齢と違うのだが故障か?」
「いや、ここに来るときに動きやすいように体の構成を変える際に変更しておいた。
若いほうが何かと便利であろう」
本当に自由だな、このじいさん。っていうか神なのこのじいさん!?
「うむ。そうじゃ」
心の声に反応しないでいただきたい。
「わかった。それは確かにありがたい。...で、この称号は?」
「神だといっておるのに、態度を変えないんだな。それはワシの趣味じゃ」
「...は?」
今さら神様!とかめんどうだしな。称号については
確認していないからあれだが、誰かに見られたら大変なのは分かる。
だって、異世界から来て神に直接文句を言って、さらに笑われるような男だぞ。
どこから見ても危険人物じゃないか!?っていうか(笑)ってなんだよ。
どこかの宗教団体とか見られたらやばそう......
「誰かに見られたらどうすんだ!?」
「大丈夫じゃよ。通常は職種レベルまでしか鑑定スキルで見ることはできんから。神殿で保管されているステータスの石板で分かるくらいだ。それに称号は表示のオンオフもできるから詳しく見ようとしてもほぼ見られることはない。」
とりあえず、オフだ!OFF!こんな称号、危険すぎる......
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