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リアル勇者  作者: パパス
第一章 立ち上がれ十人の勇者達
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VS ジャミル・リゴール①


 辰美は新潟駅東口の駅のホームに続く階段に腰掛け、勇者の証を眺めていた。


 おかしいな。 辰美は白いスーツの男と対峙したあの時をずっと疑問に思っていた。地図の味方の印が二つ突然消えた。その時、地図上には敵の印が表示されていなかった。不思議に思い、あの場所へと行ってみると、白いスーツの男が、あの酒場にいたおっさんに刀を突きつけていた。それをみたから動くことができた。


 白スーツの奴等は明らかに俺達に敵意を向けていた。見た目は人間のそれだが、人間の力を大きく超えている。しかし、このレーダーに映らないということは、ターゲットではないのか?


 辰美は考えてみてもわからなかった。白いスーツの男は、おそらくまた辰美の前に現れる予感がしていた。

 それから、辰美にはもう一つ。実はこの方が気になっていたのだが。それは、あのジャミルという白いスーツの男と剣を交えた後だった。辰美はその後ですぐに大型のサイのような角が生え、外皮は堅い鎧のような皮膚をした四足歩行の魔物と戦っていた。その魔物の装甲は硬く、外皮は刃が通らなかった。おそらく、口の中か、目は刃が通る。そう予想した辰美は、剣を魔物の目に向けて構えた。辰美の刀を握りしめている手から、白い湯気のような気体がまるで加湿器から吹き出た蒸気のように空中に向けて立ち上っているのが見えた。

 そして、その気体らしきは辰美の体全体から立ち上っていることに気づいた。

 自分の体から吹き出る気体らしきを漠然と眺めている辰美に向かってサイのような魔物がその大きく鋭い角に力を入れ、辰美目掛けて突進してきた。辰美は慌てて剣を構え直し、向かって来る魔物に何も考えず、ただ思い切り剣をまっすぐその強靭な角目掛けて振り落とした。

 この時、辰美の体から吹き出た蒸気のような気体は、辰美の体だけじゃなく、剣までも包み込むように覆っていた。気体に覆われた剣がサイのような魔物の鎧のような堅い体を角ごと真っ二つにした。まるで豆腐でも斬ったかのような柔らかい感触を柄を握りしめた手に伝えた。湯気のような気体が体を覆った途端に剣の切れ味が増したようだった。

 この力は……いったい? 体が半分に別れて地面に伏せる魔物には目もくれず、体を覆う湯気のような気体を眺めた。が、気体は辰美の体を覆うことを止めて再び上空へと立ち上っていた。

 辰美は今も体から出ている気体を体に覆わせるイメージを浮かべた。頭の先からつま先まで。気体はイメージ通り、体を覆った。


「すげぇ!! じゃあこういうこともできんのかな?」


 辰美は興奮したように勢いよく立ちあがって、駅の壁に向かって、左手を構えた。辰美は左手の手のひらから光線を出すイメージをして、脳に命令した。 放て!


 ーードオーン!!


 辰美の手のひらから放たれた白い光線のような光が当たった箇所の壁を粉々にした。


「マジだ!! すげぇ!! この力は本物だ」


 辰美はさっきよりもスムーズに体全体を気体で覆わせた。それから勇者の剣の左側のトリガーを引いた。


「試してみたい。さっきの白いスーツの奴ともう一度戦いたい」


 辰美は階段を下り、東口を出た。辰美は道路に出て、建て並ぶ高層ビルや、商業ビルを見上げた。

 

「そこにいるんだろ? これを纏ったらあんたの力を感じれるようになったぜ。 そんな高い所から見下ろしてねえでこっち下りてこいや!!」


 辰美は勇者の剣の右トリガーを引き、ビルの屋上目掛けて飛ぶ斬撃を放った。

 斬撃が放たれると同時にビルの屋上から白いスーツの男、ジャミル・リゴールが飛び降りた。飛ぶ斬撃に当たったビルを切り裂き、先に着地したジャミル・リゴールの頭上に数メートル程のビルの破片が降り注いでくる。

 ジャミルは降り注いでくる破片を自分に当たる直前に右腕を振り上げて粉々に砕いた。


「へえ~、今の斬撃には『魔力』がちゃんと込められてたな~、約束通り、お前を殺しに来てやったぞ!」


「……なるほど! この力は魔力って言うのか」


 辰美は勇者の剣を覆う気体のような白い湯気。『魔力』を見つめながら言った。


「そうだ! 魔力ちゃんと使えるんじゃね~か! おもしれ~!!

久々に『勇者』を殺れるぜ~!!」


 白いスーツの男を禍々しい黒い湯気のような気体が覆っていく。


「お前だけじゃね~よ、特別なのは!!」


 辰美は額に汗が流れた。敵の力はとても巨大だった。

 気圧されるな! 下がるな! 気持ちで負ければ勝ちはない! 

 辰美は笑みを浮かべて、剣を構えた。

 

 恐怖を捨てろ! 代わりに勝ちを拾え!


 辰美の目はまっすぐジャミルを見据えている。


「ほぉ~! その目! お前戦士としての素質あるぜ!

 名前を名乗れよ、俺達魔人の流儀は、戦士として認めた相手には敬意を示し、生涯その名を忘れない」


「ふっ……んだよそれ、俺は二三日もすればあんたの名前なんか忘れるぜ」


「お前が勝てばそれでもいい。勝てれば好きにしろ。

 ムジート国十四番隊三尉、ジャミル・リゴールだ!」


「……三条南高校、三年、出席番号29、山田辰美だ

 俺のことは覚えてなくていい。

 死人には思考も記憶も流儀も無いからな」


 辰美は勇者の証に目をやった。辰美を示すマークの真ん前に、赤い敵を示すマークが表示されていた。

 

 そういうことか!

 

辰美は笑った。 ジャミルも笑った。 声を上げて高らかと笑った。

 やがてしばしの静寂のあと、二人は刃をぶつけあった。


 


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