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リアル勇者  作者: パパス
第一章 立ち上がれ十人の勇者達
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帰還


「あの時山田が来てくれなきゃおいらも死んでいた。そして地図を頼りに仲間を探していたら、八十吉、お前がいた」


「おお……でもさ、俺じゃあどう考えても役不足だろ~よ」


「いや、おいらが基本的にメインで戦うさ、おいらはあの時死ぬはずだった。なんとかおいらが死ぬ気で奴の隙をつくるから、その時はお前がおいらのかわりにとどめを刺してほしい」


 繁沢は真剣な目で麗斗を見つめた。麗斗はその繁沢の目を力強く見つめ返した。


「おっちゃん、二人が死んだことはあんたのせいじゃない。だから、あんたがそのことで責任を感じる必要なんか無えよ。

 怖いけど、俺も一緒に戦うからさ、だから死ぬようなこと言うなよな!」


「八十吉……」


「とりあえずさ、俺らには他にも勇者の仲間がいるじゃん、探してみようぜ」


 麗斗は勇者の証の地図を拡大図から広域図に広げてみた。仲間を示す白い小さな丸は、ここから北西に一つと、東に二つ、それから麗斗と繁沢の丸の全部で五つしか無かった。


「数が五つしか無いぞ! 永井と照子を除けば全部で八つあるはずなのに」


「まさか、じゃあ永井さんと照子ちゃんの他に三人殺られたってことかよ?」


 麗斗は勇者の剣を地面に叩きつけた。繁沢は拳を握りしめ、声に出して泣いた。


「俺が……俺のせいでみんなが……」


 繁沢は地面に崩れ落ちて溢れる涙を拭いもせずに、涙が枯れるまでただ泣くことしか出来なかった。




「ひどい……本田さん、有莉栖さん、それに絵理奈さんまで……」


 優は目の前の三人の生首を目にして、ショックで口を手で覆ったまま勇気のように、その場で固まったように動けなかった。優は視線を生首から、まるで椅子のように積み上げられた首の無い三人の死体に腰掛けた五十代くらいの白いスーツの男に向けた。普段の愛らしいクリクリとした目からはおよそ想像がつかないような憎悪のこもった目つきで睨み付けていた。

 

「あなたが三人を殺したの?」


 優は抑揚の無い声で白いスーツの男に尋ねた。白いスーツの男はまるで挑発するような笑った目で優を見据えながら口を開いた。


「君だって、蚊が目の前を鬱陶しく飛んでいたら手で振り払うだろう? 私もそうしただけなんだがなぁ。賢く危機管理能力に長けた蚊は手を避けれるんだが、そこに転がってる三人は……どうやらノロマな蚊だったらしい」


 ーガキーン!!

 

 優が白いスーツの男に斬りかかっていった。

 白いスーツの男を真っ二つにしようと振り下ろした剣は、白いスーツの男の右手で握った刀に受け止められた。


「あんたは絶対殺す!!」


 受け止められている勇者の剣を素早く引き抜き、右トリガーを白いスーツの男目掛けて引いた。風を裂くような鋭い音とともに勇者の剣から斬撃が飛んだ。白いスーツの男は刀を払うように鋭く振り、斬撃を掻き消した。


「もったいない。実にもったいない。魔力を使えないとは。

 そんな魔力が通っていない風なんぞ、いくら撃ってきても私には効かない」


「魔力?」


 白いスーツの男が発した魔力という言葉に反応したのは、勇気だった。


「魔力も知らんのかね? 妖力も? 

 やれやれ、それじゃあ魔物は殺せても我々魔人は殺せないな」


「魔人?」


 再び勇気は白いスーツの男の魔人という言葉に反応した。


「うるさい!!」


 優は反応しない。怒りで我を忘れている。優は勇者の剣を居合い切りの形で構え、白いスーツの男目掛けて走り出した。


「魔力は我々は持たないので見せてやれないが、妖力は見せてやれる」


 白いスーツの男の纏っている空気が変わった。体全体を黒い湯気のような気体? に一瞬で覆われた。

 

 ヤバイ! 勇気は白いスーツの男の異様な気配と、まるで深海のように深くて暗い、ゾッとするような底知れぬ力を感じた。 


「三奈木ちゃん! 行くな!!」


 だが、優は止まらない。風のように疾走し、居合い切りを放った。


 ーーガチッ


「うそ……斬れ……ない!」


 刃は白いスーツの男の腰にほんの数センチ程度食い込んだだけで、止まっている。優は手加減などしていない。むしろ腰から下を切り離すつもりで切った。


「太刀筋はいい、だが、妖力を纏った魔人の体を魔力無しで斬ることはできない」


 白いスーツの男の強烈な蹴りが優の右脇腹にクリーンヒットし、優は民家を突き破る勢いで吹き飛ばされていった。


「三奈木ちゃん!! くそっ」


 勇気の背後に白いスーツの男が立っている。


「この世界はなかなか良いな。今日のところはこれまでにしておくとするよ。収穫もあったしな」


「あんたらの目的は何なんだ? どうしてこんなことをするんだ?」


「どうして? フフッ、お前達は本当に何も知らないんだな。」


 白いスーツの男はポケットからスマホのようなものを取り出して、操作をしている。


「今日は、この世界の住人達にあいさつに来ただけだ。まぁ、少しばかり土産に魂をいただいたがな。少しくらいいいよな?」


 その時だった。白いスーツの男の正面に、まるで空間を裂くように亀裂が入り、亀裂から、銀髪の白いスーツを着た美少年が手をさしのべている。


「私の名前はベルトゥだ、また会おう」


 ベルトゥはそう言い残して亀裂の中に入り、姿を消した。









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