絆
死んだ勇者を生き返らせられる?
勇気達はエリッサの言葉を理解するのに時間がかかり、その間沈黙が続いた。
やがて沈黙を破るように麗斗が口を開いた。
「本当……なのか? 本当に死んだ奴を生き返らせられんのか?」
「はい! 本当ですよ!」
エリッサはニコニコしながら何度も頷いた。
「で、何ポイント必要なんだ?」
辰美は冷静にエリッサに尋ねた。
「四千ポイントです」
「よ……四千ポイント!?」
勇気は驚きのあまり、声が少し裏返りそうになった。優と麗斗もポカンとした表情をして口を半開きにし、辰美は何かを考えるように、ただ黙って目を瞑って腕を組んでいる。
「はい、四千ポイント必要です。今のパーティーポイントは二千六百ポイント。そしてみなさまの個人ポイントの総計は、千四百六十九ポイント。合わせて四千六十九ポイント。
もし、みなさまの個人ポイントをパーティーポイントに還元すれば、誰か一人を生き返らせることができます」
「あ……あの、エリッサさん、ちなみに、この『転職』ってなんですか?」
「転職は、勇者の証を返還し、ここでの記憶を一切消して、一般人に戻ることができます。つまり、この転職をすれば、もう戦うことはありません。
ちなみに、転職も、必要ポイントは、四千ポイントです」
またしてもエリッサの言葉に場は静まりかえった。
それもそのはずだ。どちらを選ぶにしろ、かなりの時間がかかる選択肢だろう。みんなのポイントを集めて、誰かを生き返らせるにしろ、誰かを開放するにしろ、全員一致の承諾と、ポイントがいる。この選択をするには、やはり、場をまとめられるリーダーの存在が必要不可欠だ。
「もちろん、この選択はみなさまの自由です。今ポイントを使わずに地道に貯めてから使ってもOKです。ただし、次の戦闘までに、勇者の墓場から誰かを生き返らせなければ、次回の戦闘は、こちらで六人新しい勇者様をお連れすることになります。
まぁ、次回の戦闘でも死者は出ると思いますので、その時でもいいですが」
四人は黙って考えこんでいた。しかし、自分一人で悩んでも答えが出ないことを各々は理解していた。
やがて、辰美が口を開いた。
「おっさんを生き返らせようって考えてんのは俺だけなのか?
おいっ! 八十吉! あんたはどうなんだよ!?」
「俺だっておっちゃんを生き返らせて〜よ! けどさ、それにはお前らのポイントをほぼ全部使わなきゃならね〜じゃね〜かよ!」
勇気は麗斗の肩をポンと叩いた。
「それでも繁沢さんを生き返らせられるんなら、生き返らせましょうよ」
「私達が生き残れたのは繁沢さんのおかげでもあるでしょ?」
「佐々木…優ちゃん…」
「ポイントならまた貯めればいい。それに、本来俺はあいつに勝てなかった。おっさんの剣をあんたが投げてくれなきゃあのとき死んでたのは俺だ。だからあんたとおっさんには借りがある。それを俺は今返したい。だから俺のポイントはおっさんを生き返らせるのに使ってくれ」
「山田…」
麗斗の目からはとめどなく涙が溢れてくる。今日あったばかりで友達ともいえない関係の四人だったが、苦難を乗り越えて生還したことで、絆が芽生え始めていた。その繋がりはか細く、引っ張れば簡単に切れるような脆い糸のように見えるが、一本二本と重なり合えばやがては強靭な強い絆の糸へと変わる。
そして、その繋がりの糸がまた一つ。
「決めたぜ、エリッサちゃん! 俺達のポイントを全額パーティーポイントに還元する。そんで、勇者の墓場からおっちゃんを生き返らせてくれ!!」
四人の表情はまっすぐで曇が無い。誰一人とて、この決断に悔いは無いというような、そんな清々しい顔をしている。
「わかりました。では、繁沢豪蔵様を生き返らせます」