成績発表
「あれ? ここは」麗斗はあたりをキョロキョロと見渡して、自分に、手を振る勇気を見つけた。
「なぁ佐々木、おっちゃんはどうなった?」麗斗が勇気に尋ねたが、下を向いたまま首を横に振った。
「そっか……そうだよな」
「みなさま! お疲れ様です。私達の想定外の敵の出現で一時はどうなるかと思いましたが、よくぞご無事で戻って来てくださいました」
エリッサは笑顔で労いの言葉をかけてくれたが、勇気達の表情は重たかった。この酒場に集められた十人はまだ会って間もないし、お互い別に友達という訳でも無かったが、この奇妙な体験を共有したことで、少なくとも繋がりを感じることができた。しかし、今は四人だけになってしまった。
「みなさまのお気持ちは十分に察しております。しかし、私達は前に進まなければなりません。みなさま、勇者の証をご覧ください」
エリッサに促され、全員勇者の証を取り出した。
画面には『成績発表』と表示されていた。
「今回の戦いの評価がこれから行われます。引き続き勇者の証をご覧ください」
しばらくすると『成績発表』の表示が消え、新しい文字が表示されてきた。
『パーティーポイント』
『個人ポイント』
「まずはパーティーポイントを開いてみてください」
全員はパーティーポイントを開いた。
パーティーポイント
二千六百ポイント 獲得
TOTAL 二千六百ポイント
「パーティーポイント…二千六百ポイント…獲得?」
「パーティーポイントの確認はみなさまお済みになられたようなので、次は個人ポイントを開いてみてください」
エリッサに言われたとおり、全員は再び個人ポイントを開いた。
佐々木勇気
四百一ポイント獲得
TOTAL 四百一ポイント
「四百一ポイント獲得だそうです」
三奈木優
二百五ポイント獲得
TOTAL 二百五ポイント
「私は二百五ポイント獲得だって」
佐久間麗斗
五十ポイント獲得
TOTAL 五十ポイント
「俺は…げ!? 五十ポイント〜!? なんかみんなより少なくね?」
「俺のポイントはお前らよりも高いぞ」
辰美はみんなに見えるように勇者の証を掲げた。
山田辰美
八百十三ポイント獲得
TOTAL 八百十三ポイント
「高っ!」勇気、優、麗斗の驚嘆の声が見事に重なった。
「素晴らしいですよ! 山田様!! 初陣でそのポイントを獲得できる勇者はそうそういません」
エリッサは拍手をしながら辰美を讃えた。
「それよりも、このポイントの使い道を教えてくれ」
辰美は少し照れたのか、若干頬が赤くなっていた。
「そうですね。まずは個人ポイントの説明からしますね。今回獲得した個人ポイントは、今回の戦闘の個別評価を数値化したものです。報奨金だと思ってください。
それではこのポイントの使い方をお教えします。
勇者の証のホーム画面に、『強化』の項目があると思うので、まずは確認をお願いします」
再び全員で勇者の証を操作した。
「あったあった!」
「この個人ポイントを使って、勇者装備の強化が可能です。まずはゆっくりと強化項目を眺めてみてください」
勇気は『強化』を開いてみた。
強化項目
勇者の服 必要ポイント 三百ポイント
勇者の靴 必要ポイント 三百ポイント
勇者の剣 必要ポイント 六百ポイント
「これにポイントを割りふると、性能が上がると思っていればいいのか?」
「そうです! 勇者の服ならば、耐久力、防御力、攻撃力が強化されます。勇者の靴は、スピードの強化。勇者の剣は、武器に様々なスキルをつけたり、切れ味を上げたり、武器の種類を変えたりもできます。
それでは次です。ホーム画面に戻って今度は『購入』を開いてみてください」
『購入』を開いてみた。
回復ミルク
効果:魔力を三十パーセント回復する。
必要ポイント 三十ポイント
回復サイダー
効果:魔力を五十パーセント回復する。
必要ポイント 五十ポイント
全快水
効果:魔力を全快にする。
必要ポイント 百ポイント
怪力の丸薬
効果:一定時間筋力を大幅に強化する。
必要ポイント 百ポイント
鋼の丸薬
効果:一定時間勇者の服の耐久力と防御力を大幅に強化する。
必要ポイント 百ポイント
神速の丸薬
効果:一定時間スピードと反応速度を大幅に強化する。
必要ポイント 百ポイント
万能薬
効果:様々な状態異常を治す。
必要ポイント 五十ポイント
修復スプレー
効果:損傷を治す。(勇者装備も適応)
必要ポイント 百ポイント
「購入では、消費アイテムをポイントで買うことができます。値段は高いですが、生存率が大幅に上がるので、もしポイントに余裕があれば、購入をオススメします」
「なんかゲームみたいですね」
「俺もそれ思った。RPGっぽいよな」
初陣を終えた僕達はまだまだ勇者なんてよべるようなたいそれた存在ではなかったが、あの強いジャミルに勝ったことは大きな自信に繋がった。
「それでは、最後にパーティーポイントの説明を行いたいと思います。こなパーティーポイントは、個人ではなく、パーティー全員が共有しているポイントです。ホーム画面の『パーティーポイント』を開いてみてください」
パーティーポイント
ポイント還元
勇者の墓場
転職
の三項目が表示された。
「ポイント還元の項目を開くと、今いらっしゃる勇者様達の名前が表示されているはずです」
佐々木勇気
三奈木優
佐久間麗斗
山田辰美
ポイント還元を開くと、四人の名前が表示された。
「名前をタッチすると、パーティーポイントを任意の分個人に還元できます」
「へぇ〜、てことは、個人ポイントが少ない人にポイントを多めに与えたり…」優がそこまで話すと、辰美が続きを話し始めた。
「強い奴を更に強化するのにポイントを多めに与えたりもできるわけか」
「そうですね。ポイント還元を選ぶ場合は、各々相談してポイントを上手に分けてください」
「これ喧嘩にならなきゃいいよね」
「まぁそこは喧嘩にならないようにみんなで相談だな」
勇気は辰美に話しをふってみた。もしかしたら、辰美は「自分に全ポイントを振り込め!」とかって言ったりするのかなと思ってカマをかけてみたのだが、どうやら、意外にも辰美は、ポイントを独り占めしようとかは思っていないらしい。それどころか、みんなで相談して決めると自分から言ってくれた。
「ふふっ。そうだね」
「何笑ってんだよ?」
辰美は不思議そうな表情をして、勇気を見ていた。
「あと、逆に個人ポイントから、パーティーポイントにポイントを還元することも可能です」
「えっ? なんでそんなことする必要があるんだ?」
麗斗が首を傾げながら呟いた。
確かにそうだ。今の時点では個人ポイントをパーティーポイントに還元することに何のメリットも無い。
「この勇者の墓場と転職が関係しているの?」
優の問にエリッサは少しの間を置いてから答えた。
「一つずつ説明しますね。まずは勇者の墓場ですが、これは戦闘で亡くなられた勇者様を手厚く埋葬した墓地です」
「それでなんだ? ポイントを使って墓参りでもするのか?」
辰美の問に、エリッサは少し微笑みそれから全員を見渡して、答えた。
「亡くなられた勇者様を生き返らせることができます」