空から
頭に、空から降ってきた金の延べ棒の直撃を受け、友人が路上へと叩きつけられる。
クチから言葉にならない音を漏らしながら、友人は、水揚げされたばかりの魚のように転げまわっている。
空を見上げると、真上に大きな飛行機が飛んでいる。
たぶん、あそこから落ちてきたのだろう。
延べ棒に驚き、友人に驚き、飛行機に驚き、ボクは立ち尽くした。
足元の友人が静かになったので、視線をもどす。
友人は大きな痙攣をしていたが、それがじょじょに小さくなり、やがて完全に動かなくなった。
なんとなしに友人を見下ろし続け、しばらくして、ようやく我に返った。
ボクはオロオロしつつ助け起こそうとする。
が、ふいに手を止めた。
――ボクが犯人にされるのではないだろうか?
突如降ってきた金の延べ棒、それを巡ってふたりは争い、最後はボクが友人に手をかけた。
そう思われてしまう、かもしれない。
ボクは二・三歩下がって周りを見渡す。
ボクの無実を証明してくれるような人間はひとりもいない。
犯人にされた場合、それを否定する材料はない、ということだ。
そして、金の延べ棒が落ちてきたことを知っている人間もいない。
ボクは周りに警戒しながら、ハンカチで金を包んでバッグの中へ突っこんだ。
ダレにも見られぬように急いでその場を離れる。
平静を装うため、早足程度の速度で歩いていたが、こらえきれなくなり、いつのまにか走り出していた。
あとの路上には友人だけが残された。
人通りのほとんどない、抜け道のような場所だ。
時間に追われて急いでいる人間が利用する道であり、そんな人間が通報などという面倒なことをするはずがない。
すべての通行人が、見て見ぬふりをして、友人の横を通りぬけていった。
ある日、急いでいないにも拘らずそこを通った人間が友人に気づき、写真に撮り、ソーシャルネットワークサービスで公開した。
それが大きな反響を呼んだ結果、『人が倒れている抜け道』として地元では知らない人はいないほどの有名な場所となった。
町は、この盛り上がりをなんらかの町おこしに使えないかと思案している。




