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第三話 できる奴には出来ない奴の苦労がわからない

「だからそうじゃないって言ってるでしょ!?」


 魔法を教えてくれると言うリリアの提案は渡りに船であったが、現状ただひたすらにウザイだけだった。

 辺りの地面には、俺の放った魔法の影響による破壊の痕跡が刻まれて………いたらよかったのになぁ。

 実際には、自分でつけた足跡で散らかるだけの地面がそこにあるだけだった。

 それというのも、


「素人の癖に、ポーズをとって魔法を使うってのは割と良い線いってると思うのよね!」


 というリリアの教えに従った結果である。


 慣れればそれこそ突っ立ったままでも魔法が使えるという話だけど、先ずは形から入るのが魔法を使うコツだという話であった。


(結果は無駄に体力を減らすだけだったけどな!)


 それと、悲しいかな。

 さっきまで同じ空間で訓練していたはずの兵士達は、俺がポーズを取り始めて少しもしない内に消えてしまっていた。

 最初の内は何を始めるんだという好奇の視線をひしひしと感じたものだが、やがて飽きたのか訓練が終わると早々に出て行ってしまったのだ。


(俺だって必死なんですよ!?)


 心の叫びは誰にも届くことなく、自らの感情をマイナス方向に揺らすだけであった。


「………一向に使えるようになる気配がないんだが」


 恥ずかしさはもうどこかに行ってしまった。

 気にするだけ今更だもの。


「おかしいわね?こうして、こうよ!」


 身振り手振りで指導してくれるのは大変可愛らしいものがあるのだが、漠然としすぎていて何も分からない。

 それなのに、リリアが踊るようにクルリと回転して魔法を唱えると、その軌跡にそって魔法の光がきらめくのであった。


「こうしてこうって言われても全然わからん!」

「あんた才能無いんじゃないの?」


 魔王からあんたに格下げされた瞬間である。

 魔王に選ばれて魔王になったんだから、才能は有り余るほど溢れているはず、と俺は信じて疑わない!


「絶対に教え方が悪いと思うんだ」


 こちらから具体的に聞いた方が良さそうだという事に今更ながら気がつく。

 無駄に動くのも疲れたし、丁度いいだろう。


「このまま続けても使えるようになる気がしないから、ちょっと話をしよう」

「む~、仕方ないわね!で何を聞きたいのよ?」


 ぷりぷりと怒りながらも、リリアもこのまま続けても無駄だと思ったのか、話をしてくれる気になったようだ。


 さて、魔法について何を聞けばいいだろうか?


 そういえばリリアはフェアリーだし、生まれた時から魔法を手足のように使えた、と考えられなくもないだろうか?

 それなら、こんな質問はどうだろうか?


「リリアは魔法の流れみたいなのって感じられるの?」

「え?あんたは感じないの?」


 うん、どうやら一つ目の質問で正解を引いたようだ。


「今まで魔法なんてのは存在しない世界にいたんだぜ?そんなん感じるはずないじゃないか…」


 元の世界で、


「む?ここは魔力が濃いな…」


 とか、


「あいつから強大な魔力を感じる…」


 なんて奴がいたら完全に危ない人である。

 俺は中二病患者ではあるが、態度に出さないむっつりタイプなのだ。


「アプローチを変えよう。魔力の流れって具体的にはどうやって感じるんだ?」


 ここを越えればいける気がする!

 形が分からないから手を加える事ができない、多分そんな感じに違いない。


「えと、まず体を流れている魔力を意識してみて、血液みたいなイメージでいいよ」


 目を閉じ、言われたとおりに体を流れる魔力を意識してみる。


「これは…」


 やはり俺に才能はあったのだ!

 確かに自分の体を循環している魔力を感じる。

 それは力強くも静かに流れる大河のようであった。


「わかった?今度はそれを体の外に押し出していくの」


 ポーズを取ったのは、体の先端などはそこから魔法がでるというイメージをしやすいかららしい。

 最初からそう言ってくれればいいのに…


「次は、それをドーンよ!!」

「おい!」


 面倒臭がらずに最後まで説明してほしい。


「そこが一番大事な所だろうが!」


 やれやれと頭を振るリリアであったが、こっちがやれやれだという気持ちは分かってもらいたい。


「そこからは使いたい魔法のイメージを頭に描きながら、押し出した魔力の形を変えるだけよ」


 なるほど、今度こそ成功させてみせよう!

 今ならやれる気がする、やり方がわかったからな!


 ターゲットは、兵が訓練に使っている巻き藁のダミー人形でいいか。

 幸い誰も使っていないしな。


 イメージするのは赤、全ての物を燃やしつくし灰にする………かもしれない炎。

 腰を落とし、右手を前に突き出し左手でそれを支える。

 今の俺の右手は銃身だ。トリガー一つで対象を殺傷せしめる魔法の凶器。

 そして唱える。


「ファイア!」


 右腕から手の平に向かって魔力の波動が駆け巡る。

 それは手の平から押し出され、赤い光となって収束した瞬間、熱を持ち具現化する。

 勢いよく打ち出された炎がダミー人形に接触すると、見る見るうちに燃え移り燃やし尽くすのであった。


「よし!」


 普通に嬉しい!生まれてはじめての魔法!

 随分と回り道をしたけど、ついに第一歩を踏み出したんだ!

 感動に打ち震えていると、少し関心したという風に声がかかる。


「流石あたしが教えただけの事があるわね!威力も合格と言っていいわ!」

「だろう?魔王様だからこれ位当然だ!」


 今位天狗になっても罰はあたるまい。

 よし、このまま次の魔法を…


「ここにいましたかリリア様」


 この声は…


「あらルイーナじゃない、私に何か用かしら?」


 さて次の魔法だと、勢いこのままに続けようとした所に現れたのは、褐色美女ルイーナであった。

 魔王代理が様付けなのに、こんな気さくでいいのだろうか?


「これから兵の配置についての会議があると伝えていたはずですが?」

「あぁ~そうだったわね。魔王様の訓練に付き合っていて忘れていたわ」


 あんたから魔王様に格上げされた!今だけかもしれないけど!


「そうでしたか。既に集まっておりますので早々においで下さいますようお願いします」

「そうね。丁度終わった事だし、行きましょうか」


 会議とな?俺が呼ばれないのはもう諦めているとして、リリアって何か重要なポジションなのだろうか?


「そういえば、リリアってここでどんな役職なの?」

「聞いて驚きなさい!あたしの仕事は兵の「リリア様は兵の配置、派遣先などを取り仕切る責任者です」


 最後まで台詞を言わせて貰う事もなく、さぁ行きますよとばかりに半ば引きずられるように連れて行かれるリリアであった。


「アレが………アレでいいのか?」


 人格と行動が能力に関係ないと思わされる一ページであったのだった。


執筆ペースががが…


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