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外つ国の興り

作者: 霜月栞那

その大陸には、国があった。


大きな国、小さな国、歴史を抱える国、技術を産み出す国―――等々。


時には血を交えて支えあい、時には血を断つために反発しあう。

それは、複数の国があればこそ発生する事象と言えるだろう。


そんな国々が予てより“未開の地”と呼ぶ領域があった。


国の形をとらない、複数の民族が共存して暮らす地域。

それは国ありきの人間から見ると奇異に感じる。


国主というリーダーを持てない彼らは、“民”と認められない人種と見なされた。

自分達と異なる人間と、分かり合えることはないだろう。

国ある人々の中でその考えは蔓延し、かの地に住む者を、いつしか蛮族と呼び下すようになっていた。


そのような状態で“未開の地”に隣接するのは、たった一ヶ国のみ。


隣りあうこの国も、“未開の地”に住まう者を蔑んでいた。

その一方で、かの地の人々が生活の糧とする狩猟動物や野草を始めとする植物など、その地ならではの生産物が魅力的に映るのも事実。


結果、他国には警戒を促しつつ、自国の為の利益ならば“未開の地”の住民との接触を、流通を通じて維持し続ける―――はずだった。


その均衡を破ったのは、他でもない隣接する国の王族。

王位継承を目前に控えた男は、父である国王の指示で“未開の地”を訪れた。

田舎と見下したその地で、男は一人の少女を見初める。


「この私自ら、蛮族の地より連れ出してやろうというのだ。喜ぶがいい」


来訪をもてなすために設けられた場での、一方的な宣言。


唖然とする言葉を紡ぐ男に、この地に住まう者は隣国の本音を知る。


薄々感じていた侮蔑は、事実だったのだと。

善き隣人でいようと考えていたのは自分達だけなのだと。


これまで目を瞑ってきた数々の行為は、無駄だったのだと。


周囲の止める声を、少女本人の拒絶を、彼らには通じない王族の権力を振り翳すことで潰そうとする男。

主を真似て、他の女たちに手を伸ばそうとする、その同行者達。


男達はまるで戦利品のように少女たちを抱えようとし―――失敗する。

喉元に突きつけられたのは、小型のナイフ。

背中には剣の刃先が軽く刺さる。


彼らを蛮族と呼ぶ本来の意味を、男達は身をもって知ることになった。


男達を予定の期間通り滞在させ、その間に“未開の地”に住まう他の一族へ使いを出す。


同格の“人間”と見なさない他国を、なぜ自分達だけが配慮する必要があるのか。

我々は決起する―――と。


返ってきたのは、賛同と時期の詳細確認だった。


どの一族も、誤魔化し続けていた事実に向き合った結果といえよう。


彼らが“国”を戴かないのは、単に国という形を求めなかったからにすぎない。

必要あらば、興せばいい。


誰が言い出したのか、何が切っ掛けかというのは些末なこと。


明白なのは、自分達が“国”に負ける立ち位置にいないということを知らしめたいという思い。




蛮族と呼ばれた“未開の地”の人間が隣国に攻め入り、その地を治めたのは当然の流れだろう。


蛮族が決意をして約一年。

“未開の地”と呼ばれる領域は地図上から消え、新しい“国”が産声を上げた。




・・・という夢を見たんです(笑)。

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