プロローグ
「きゃあああああ!!」
昔馴染みの女の子がゾンビになった。噛まれそうだったので倒した。武器は枕元の電気スタンド。
ツインテールが似合わないとからかった綺麗なロングの髪が、白くてすべすべだった手のひらが、緑色やらなんやらに気持ち悪く変色して蠢いて襲いかかってくるのを、必死で殴り倒した。
ゾンビは生前の記憶をほとんど保持しないと聞いたが、どうやら本当だったようだ。
彼女が後ろ向きに大きく倒れ込んで動かなくなってから、「おい、」腰が抜けて、ついに塩っぱくて熱い涙が、出「恵、寿太郎! お前、な、な、なに、なにやって」た。
__どうして。どうして、彼女が。
「寿太郎!?」
胸倉を掴まれた。
昔馴染みは、俺を含んで3人。
死んだ方。恵。俺。寿太郎。
おれの胸倉つかんでいる方。雄真。
恵の家に二人で来ると言って、雄真は先にコンビニに行っていた。
「何やったんだよ! めぐ………どうした!?」
ぼろぼろぼろぼろあふれ出る涙のせいで目が見えない。脚が浮いている感触がする。持ち上げられている。喉が苦しい。「ぐ、ふ」息が苦しい。
ぼやけた視界の端で、頭が大きく凹んだ恵が見えた。
正面には、雄真が、「なんとか、言え、言えよお!」
「ごほ、ごほ」いきおいいっとう強く力を込められ、ぱっと離された。「俺、だって、!知りたいよおおお!!」
雄真にはこちらの言い分が聞こえていないようだ。もう一度掴み上げられそうになったので、ようやっと力が入るようになった脚を動かしかわした。
いつもそうだ。
怒ると周りが見えなくなって、誰の言うことも耳を塞いで、恵がなだめて、俺が後始末をする。
「見て、ないんだな……!? なった、瞬間……!」
まだ息が苦しい。
でもお優しい恵はそこの床に転がっているし、俺は今混乱している。ファンファンおかしな音が聞こえる。うるさい。ガラスの向こうが赤く見える。顔もぐしゃぐしゃだ。しんどい。(体も、精神も)
「恵の顔を……恵、め、めぎぐ」
「うるせえ!」
それでも、恵の顔を見ろ。ゾンビになっているはずだから。そう言おうとして、大きな足音で誰かが入ってきて、大きな声で言った。
「警察だ! 容疑者確保!」
ぐったりしている俺と雄真は警官に連れられ、幻聴でもなんでもなかったサイレンとこちらを恐ろしげに見ているおばさんたちの視線に囲まれ、恵の家を後にすることになった。恵を殴る前の悲鳴は、きっとこの中の誰かだろう。でもこの人たちはゾンビを知らない。袖を引かれた。
俺たちは今から取り調べを受けさせられるらしい。鑑識の人たちが恵を調べている。「そこの人、恵に、触らない方が、いいよ! 俺の所為じゃ、ない、けど」
まだ息が切れている。