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僕と俺の最弱で無敵な事情  作者: 冬桜
第一章 入学とクエストと最弱
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第十二話 無くした記憶 5、知らない記憶 c

他の人の作品を見て、凄すぎると思うこの頃。

「ぐっ...がぁぁ」


 お腹が痛い。いや、腸が働いてるからではなく銃撃によってだ。

 でも、視線は動かさない。父を見据える。

 生きていた父。

 驚きや喜び、そして怒りや不満の混ざり合った感情が胸中に渦巻く。


 前者の感情は分かるだろう。死んだと思ってた父が生きていたのは素直に嬉しい。

 何故後者の感情が生まれるのか、

 それは


(咲耶が悲しんだ一番の原因....)


 咲耶を悲しめた。この理由以外は基本的にどうでもいいし、逆に、この理由だったら許しはしない。俺が出るくらい(・・・・・・・)咲耶は悲しんだ(・・・・・・・)ということだからだ。


 父さんにこの複雑な気持ちをぶつけたい。

 だけど身体が動かない。

 腹が痛いからとか、動揺しすぎてとかそんな理由じゃない。

 ただ全身が痺れてもう立ってられない。

 膝から崩れ落ちる。


「ハァ...ハァ....咲耶、悪いな...麻痺弾を撃たせてもらった」


 そうか、身体が動かないのはそれが原因か...。

 寝伏せたまま動けない。


「あなた!」


 母さんは父のもとへと駆けていく。


「飛鳥....無事で何よりだ..うっ」


「大丈夫⁉︎」


「あ、ああ。ありがとう」


 少し辛そうな父を母は支えながら、こちらへ歩いてくる。

 そんな父と視線が交錯する。


「...咲耶じゃないんだな」


「....そうさ。うっ、父さんが原因でね」


「ゲホッ。なるほど...」


「...........俺を殺すのか?父さん、母さん......」


「.......いや、殺さないさ。ゴホッ...なんせ、」


「私達の子だもの。生きて欲しいわ」


 お互い痛みによってあまり喋れないが、父の言葉を母が紡いだ。


「.....なら、どうする?ゲホッ...この【悪者】を」


 少し顔をあげて辛い体勢で、皮肉を含んで言う。


「言ったでしょう。咲耶の中に戻ってもらうって。そのためには私達の力が必要なの」


「...二人なら咲耶を助けるのに全部の力を使わないが...くっ、早くしよう。時間がない」


 そう。実はさっきから周りの爆発音がすごいのだ。この島はあと数分で終わるだろう。なのに何故咲耶を助けようとするのだろう?


「ええ、そうね。...ごめんね白耶」


 そう謝ってから、動けない俺に向かって今まで撃ってきた弾丸と同じ物を撃った。


 ーーもう喋る気力もない。そのまま弾を受ける。弾は脊椎に当たった。

 すると弾は触れた瞬間に砕け(・・・・・・・・・・)、身体にダメージは一切なかった。


「ぐっああぁぁぁぁあぁああ!?」


 しかし、脊椎から脳に伝わった衝撃は凄まじいもので俺は途端に意識を失った。...否、それは何かに吸い寄せられる感覚だった。








 暖かい風を感じて、ふと目を覚ます。


「う、うーん...」


 唸りを上げて起き上がる。

 視線を少し動かすと、ここが港だと分かる。


「咲耶...起きたのね」


 母の声が聞こえ、そちらを向く。

 そこには地面に横たわる満身創痍の母と父がいた。


「お母さん!」


 思わず叫んだ。

 母はアリバーと闘っていたはずだ。僕がここにいる理由は分からないが、何かがあったのだう。


 両親に触れようとした。しかし、壁みたいなのに阻まれて触れられない。

 だが母は諭すように手をかざす。


「咲耶、聞いてちょうだい。....あなたは強いわ。この世界の誰よりも。今はまだそんな自覚がないかもしれないけど、あなたの力は私達をも軽く越すわ。...もう普通でいなさいとは言わないわ。強くなりなさい、咲耶。あなたの呪い(・・・・・・)が自分で解けるくらい(・・・・・・・・・・)....」


「何を言ってるのお母さん!お父さんは!?大丈夫なの!?」


 ドンドンと見えない壁を叩く。

 そんな僕に


「咲耶...落ち着け...。もう時間がないが、お前に言いたいことがある。よく聞けーー」


「お父さん!無事だったんだね!」


 僕は父の無事を喜んだ。昂りのあまり、言葉を遮ってしまった。

 だが、2人が微笑んで


「「生きなさい、咲耶。愛しい、私(俺)達の息子」」


 そんな言葉を吐いた。

 瞬間、時間が止まるような感覚。そのあとーー


 ーードーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 爆発音が響く。

 両親はその爆発の炎に呑み込まれていった。

 僕のところには不思議と衝撃がこない。

 ただ、視界全てが真っ赤に染まるだけだ。


 目の前の出来事に理解が追いつかない。


「父さん?母さん?.....」


 両親がいた場所に声をかける。

 しかし、聞こえてくるのは鼓膜を震わす業炎の音だけだ。


 脳がやっと状況を理解する。

 理解してしまった。目の前の業火によって両親は...

 その途端。


「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ーー僕は悲鳴をあげ、崩れ落ち、さらに.......記憶は消えた。


いろいろ謎を残して終わりです。次は本線に戻します。

感想などありがとうございます。コメント受け付けてます。

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