面倒事は後回しにしないで、すっ飛ばせ
…………手を伸ばせるだけで嬉しい、そんなことはない、そんなことを言えるのは終わったあとや始まる前だけだよ。だって、だって、今すごい面倒だもん。
「ほらボーイ!早くしなさいっ!」
「わあってるよぉ」
俺は今、何故か修行させられてる。しかも、こんな一昔前の筋肉バカっぽいオカマに、なぜだろう。まぁ原因は分かる。あの幼女、いや……あのちびっころのせいだ。
一日前、氷の叔父の銀が出掛けてすぐ。
…………すごく気まずかった。風呂から上がった幼女は、頭にタオルをのせ、ツインテールだった髪の毛は下ろされ、膝の裏辺りまであった。幼女はそれを耳の横まで持ってきて乾かしていた。そして眼帯を外した左眼は青色で、俺が用意した妹の服を着ていた。その姿は妹と瓜二つで、それで、それで……泣きそうになった。
「何よ」
「えっ」
気がつくと、髪はもう乾かし終わっていた。
「じっと見つめて、何かついてる?」
「いや、ごめんつい見とれちゃった」
「なっ何言ってんにょよ」
話しかけられるまで少し見すぎたようだった。
「まぁ、ご飯でも食べて、色々聞きたいことも、話したいことも、お互いあるでしょ」
幼女は座り、そのままお茶碗と箸に手を伸ばす。
「私の名前はにょっ」
自己紹介しようとした幼女を、俺は軽くチョップした。
「にゃっ、にゃにすんにょよっ!」
俺はそのまま腰を下ろし、幼女の手を掴み、目の前で掌を合わせさせる。そして目を見つめる。幼女は少し顔をあからめ目を背けた。
「分かったか?」
「……?」
幼女は俺の目を見てくる。俺は正面を向き、手を合わせ、
「いただきます」
俺は幼女にウインクをした。
「いっいただきましゅ」
「よしっ」
俺は幼女の頭を撫でてあげる。
幼女はまた顔をあからめながら急いでおかずに箸を伸ばす。それだけお腹好いてたのかな。おれもご飯を食べ始める。
「「ご馳走さまでした」」
ご飯を食べ終わり、後片付けを始める。幼女は手伝ってくれた。食器を運んでくれたので、頭を撫でてあげると、どんどん運んできてくれた。最後の方は、頭を撫でるのが面倒だったので撫でなかったら、頭をこちらに向けて背伸びをしおねだりしてきた。
そんなこんなで片付けが終わり、暖かい緑茶を出して先程のテーブルに出す。
「まずは自己紹介だね。俺の名前は時雨 氷、ときあめで時雨で、アイスのこおりで氷 カッコいいだろぉ」
「…………」
いいよ分かってたよ、反応しにくいよな。
「今は15歳、今年からピカピカの高校一年生です」
「私の名前は熾貂 御火あんたと同じ15歳」
「うっそぉ」
「ぶちっ」
「へぶっ」
殴られた、親以外にしか殴られたことないのに、
「そして……信じられないかもしれないけど………異能者よ」
「知ってるよ」
何をいまさらそんな分かりきったことを、
「信じかだいかもしれないが信じてくれ、君みたいな一般人には異能者というのも珍しく聞いたこと無いかもしれないが………えっ?」
こいつは何を語ってんだ?
「そんなことより…」
「そんなことってにゃんにゃにょよぉぉぉぉぉ」
涙目になりながら胸ぐらをつかんできた。
「にゃんでにゃんでにゃんにゃにょよぉぉぉぉ」
「みっ御火さんっ、落ち着いてっっ」
「こんなに美味しいご飯食べれたから、御礼に異能者について説明してチャラにしようと思ったにょにぃぃぃ」
「落ち着けぇぇぇ」
俺は幼女もとい御火を落ち着かせる。そして冷蔵庫に閉まっておいたケーキを出す。そして食べながら話を再開させる。
「失礼取り乱しました」
「気にすんなよ。じゃあさっきの通り、異能者について説明してくれ」
「はっはい。異能者とは漫画やアニメのような特別な能力の使える人のことを指し、基本の異能と人それぞれ違う固有の異能があります。能力とは、人の使われていない脳の機能です。そして能力を使うと、人により動物の尻尾やら耳やらが生えるものもいます。能力を使いすぎると最悪動物に変身します。その種類も人それぞれです。さらに動物のパートナー、通称パートナー獣がいます………どうですか?」
「まぁそんな感じ……で、君は?」
俺は返す
「わっ私は、『天国』という異能者団体のリーダーです」
「ヘブン?それは何?」
「一様日本の異能事件を解決するため活動しています」
「あの厳つい男達は?」
「恐らく、『地獄』の人たちかと」
「ヘル?」
「『天国』と同じ異能者団体です。昔まで一緒だったんですけど、1、2年前から対立するようになって………今は敵です」
少し寂しげな表情をしたあと、覚悟のある顔をする。
「絶対に捕まえなければならないんです。今のうちに」
「今のうちに?」
「私たちはあいつらがすごくとんでもないことを企んでるところまでつきとめました。だけど、時間がないんです」
そういうと御火は立ち上がった。
「誰か友達でもいるの?」
「どおしてですか」
「すごく寂しそうな顔をしていたから」
「助けなきゃいけないんです。…………ご飯ありがとうございました」
「待って!」
俺は引き止めた。そして言う。
「俺は『天国』まで連れてってくれ。助けてやる」
長かった。あのあとも色々あった、異能者じゃないやつは連れていけないだの、この辺りに敵がいるかもだのごちゃごちゃ五月蝿かった。結局ここでの練をクリアできたら、とか言ってきやがった。
「ほらボーイ、早く早く」
「ああっもう」
長い。まだか、もう30分も特訓してやってるぞ。
「っもう、御火ちゃんの紹介だから訓練させてあげてるのに、全くだめね」
カチーン
「この修行なんて簡単なんだからすぐこなしなさいよ」
ムカついた。すごくムカついた。
「そういえば御火は?」
アイツは俺をここに連れてきたあとすぐどこかにいってしまった。
「今日は『天国』と『地獄』の全面戦争の日でしょっ。もう出発したんじゃない。」
「えっ」
「昨日は突然襲われたみたいで急に連絡とれなくなって心配してたけど」
「今日なのっ!?場所はっ」
「教えるわけないでしょ」
「分かった。何をすれば出てっていいんだ」
「最後の試練はあたしを倒せばいいのよ。それかあたしが認めるか」
「で、どこ?」
俺は両手につけたリストバンドを外しもう一度問いかける。
「そんなに聞きたきゃあたしを倒しなさい」
「そっか、間違えた、実力差が開きすぎてるからだめなんだ」
「やっと気がついたかい。オカマは強いのよ」
はぁ、俺はため息をつく。あのとき以来だ、本気を出すのは、ここまで大事になってるなんて、異能を解放し、リミッターを解除し、本気を出したから分かる。この状況が、あいつらがどこにいるか、どこを目指してるか。そして、この状況のヤバさが、恐らく『地獄』のやつらの実力が、
「分かったら帰りなさい。分かったでしょ、あたしの実力」
ああ、分かった。だからこそ、もっと落とせばよかった。五割くらいにすれば、圧倒的実力差が分かっただろうに、
「「じゃあ勝負だ」」
面倒事をすっ飛ばし、一番最後まで飛ばした。
掴み損ねるのはごめんだ。ここも即行で飛ばして、掴みとってやる。
登場人物&語句説明
・特訓場所のおやっさん
皆からママと呼ばれている。アラフォー
本名 男鹿 芽女 (おが めめ)
・天国 (ヘブン)
異能者団体、組織内には9の部署と神と呼ばれる部署がある。神は象徴であり、ボス。しかし実質的にまとめてるのは御火である。
異能関連の事件解決や、異能に目覚めた人達を集めたり、カウンセリングをしたり等多種多様。
・地獄 (ヘル)
異能者団体、組織的には小さいが強力な異能者が多い。
少し前に起きた事件以降、天国と対立するようになる。それ以前は、天国と地獄の二組織で、全ての異能関連の事件等を解決してた。
リーダーは御火の親友
・異能
基本的には二つの種類がある
基本の能力、通称ビート
固有の能力、通称キューブ
異能を使うと、獣の一部が出ることがある
使いすぎると、獣になる(ぬいぐるみみたいなものからリアルなものまで)
パートナー獣(幻獣)がでる
・ビート
基本の能力
筋力UP
飛行能力
索敵能力
……………etc
・キューブ
固有の能力
人それぞれ違う
属性がある
キューブと別に属性ごとに決まった能力がある
パートナー獣
………………etc