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「今日寝たらアンタは三日に飛ぶから。今日が四日だから昨日に行っちゃうわけ」
「今日寝たらアンタは三日に飛ぶから。今日が四日だから昨日に行っちゃうわけ」
「……マジ?」
「マジ。で、三日の前半を過ごした後に五日の後半に戻る。その時に今のアンタの記憶と繋がるはずよ」
確かに俺は五日の世界からここに来たわけだしな。
「さて、よーく覚えておきなさいよ。これからのアンタの時間を教えてあげるから」
そう言って、ハルカは親切にも理解しがたい意味不明なことを教えてくれた。
現在が四日の後半。明日は三日の前半に目覚め、途中で五日の後半に時間が進む。
なんと、五日を終えた俺は、ようやく当たり前に翌日である六日を迎えることになるらしい。
しかしまた、やっぱりというか六日の前半は途中から時間が狂い、三日の後半へ。
それから四日の前半――つまり今、俺がいる四日の後半の前に時間が戻る、らしい。
今ほど自分の記憶力の無さを恨んだことはないだろう。
結果から言うと、ハルカが教えてくれたことを覚えるのは不可能だった。むしろ、ハルカのやつはよく覚えているもんだな。
昼飯を食い終わり、混乱する頭をどう整理しようかと悩んでいると、食事の片付けを終えたハルカが小さく声を漏らした。
「明日はアンタと散歩なのかぁ」
「はぁ……お前は気楽でいいよな」
「なによその言い方。あたしだってアンタのために苦労してやってんのよ? せっかくのゴールデンウィークなのにさ。少しくらい休日の若者らしい過ごし方したっていいでしょ?」
神様の感覚では散歩するのが若者らしい休日の過ごし方らしい。理解に苦しむ。
「それよりさ、なんで明日のあたしは散歩の途中で勝手に帰っちゃうわけ?」
「知るか。いきなりお前が走り出したんだろ」
「ははは……まあ、なんとなく想像はつくけれど。アンタがそう言うってことは、そうなる未来なんでしょうね」
何をのんきなことを言ってやがる。お前が勝手に帰りさえしなければ俺はあんな激痛を体験しなくて済んだのに。
と、何者かにフルボッコにされた時のことを思い出してみてようやく理解した。
そうか。五月五日の半分をまだ終えていない俺は、あの時に戻るんだよな……顔面を踏みつけられた直後の世界に。五日の後半の記憶がないってことは、おそらく五日に戻る時はそこからスタートするわけなんだろ?。
ヤンキー漫画でもあるまいし、吐血するまでボコボコにされるのは相当珍しいことだろうよ。はっきり言って五月五日には戻りたくないぜ……。