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俺と糞ゲー  作者: ピウス
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決意

「こんばんわ佐々木さん」


 そう声をかけながら、俺は佐々木さんの家の近くにある渋い酒場のテーブルに腰を下ろした。


「こんばんわ東雲君。使いの子に連絡を受けたんだけど、50階層でボスの部屋を見つけたというのは本当かい」

「はい。おそらくは間違いないかと思います。階段もありませんでしたし、おそらくは50階層が最終階層で間違いないでしょう」


 オーダーをとりに来た店員さんに軽いワインを注文しながら応える。


「そうか。いよいよだね」

「ええ」

「それで、東雲君はいつ挑戦するのつもりだろうか。49階層まで魔法陣を作るのかな?」

「いえ。万が一この世界の冒険者に先を越されてもこれまでの苦労が水の泡ですから、これ以上は魔法陣は作らないほうがいいでしょう。それにレベルもこれ以上上げても大して戦闘力は上がらないでしょうから、このまま挑戦してみようと考えてます」


 俺がそう言うと佐々木さんの顔がほころんだ。なんだかんだ言っても佐々木さんは少しでも早くもとの世界に帰りたいのだ。


「しかし……東雲君。こんなことは言うべきじゃないのかもしれないが、君は本当に帰りたいと思っているのかな?」

「……」

「君はエルナ君やシルク君といい関係を築いているようだし、何よりもまだ若い。この世界に残っていたいと考えているんじゃないのかな?もしも、もしも迷っているのならラスボスに挑戦するのは後にのばしたほうがいい。そんな気持ちだと足元をすくわれるかもしれない……と俺は思うんだよ」


 さすがに年長者の佐々木さんは俺の気持ちを見抜いているようだ。

 正直にいうと俺は迷っていた。クリアーして元の世界に帰りたい気持ちと、このままこの世界でエルナとシルクの3人で暮らしていきたいという気持ちがせめぎあっているのだ。

 ……だけど。


「いえ。迷いはしましたが、俺はここのボスを倒そうと思います。正直俺は自分では決められませんでした。だからいっそ俺を呼んだ神様連中に決めてもらいます。倒してもしも神様にこの世界に残っていいといわれたのなら残る。ダメだといわれたのなら元の世界に戻る。それでいいと割り切りました」 


 一週間近く悩みぬいて出した結論はこれだ。

 俺がクリアーを放棄すればまた神様連中はどこからか人間を攫ってきて挑戦させるだろう。

 もしかするとその中の誰かがゲームをクリアーしてしまうかもしれない。そんなことを思いながら、びくびくとこの先暮らしていくのも無理だと思うのだ。どうなるのか予想もつかないが、白黒つけてしまいたい。


「じゃあ……」


 そういいかけた所で俺の注文したワインが来たので口を閉じる佐々木さん。


「ええ。明後日に挑戦します。明日はその準備ですね。買い物をしようと思ってます」

「お金は……まあ十分かな。いくらでも融通はするが」

「はい大丈夫です。それに俺がクリアーしても佐々木さんが帰れるとは限りませんから、お金は佐々木さんが持っておいた方がいいでしょう」


 佐々木さんをぬか喜びさせないために一応釘を刺す。

 だが、佐々木さんはなぜかにんまりと笑った。


「いや。先日ミューさんに呼び出されてね。頼みごとをしてきたからそのお礼として聞いたんだけど、君がクリアーすれば俺は帰る事が出来るらしいんだよ」


 おっ!どういった風の吹き回しだろうか?俺が聞いた時は教えてくれなかったのに。


「それはよかった。それなら俺も気兼ねなく挑戦できます」


 カツンとおたがいのコブシをぶつけ合った。

 冒険者がこうやっておたがいの健闘を祈るという慣習がこの世界にはあるのだ。


「しかしお願いですか。あの神様がえらく気前よく教えてくれたみたいですが……どんなお願いを受けたんですか?」


 俺がそう聞くとなぜかげんなりとした表情になる佐々木さん。


「ああ。ここ何年もミューさんには会ってなかったんだがね。俺はほら、もうレベルが上がらないからね。それが先日いきなり呼び出されて……何でもランさんという女神様が本を出してるみたいでね。その20巻の読者プレゼントにするから俺の手形を色紙に押してくれとお願いされたんだよ」

「ああ。そういえば俺も10巻の時にサインを書かされましたよ」

「…………なあ東雲君。君は……その、本の内容は見たのかな」

「いえ。時間もなかったもので見てないですね。嫌な感じもしましたし」


 ほっと息を一つ吐く佐々木さん。


「そうか。見てないのか。いやさすがだね。君は危険回避に優れているんだね」


 危険回避って。そこまで言われると逆に見たくなるな。


「ご覧になったんですか?」

「……ああ」

「どんな内容だったんですか?」


 佐々木さんは度数の強いエールを一気に飲み干した。


「聞かないほうがいいよ……東雲君!世の中には男が知らないほうがいいものは確かに存在したよ」


 なんか気になる言い回しだ。だがまあ佐々木さんほどの人がここまで言うのだ。素直に引き下がった方がいいだろうな。



 ■□■□■□■□



 翌日俺達は三人で仲良くランディのお店に買い物に出かけた。

 消耗品の傷薬やシルクの連射箱用の矢なんかの補充のためだ。

 無いとは思うが、ラスボスが吸血鬼だったことも考えて太陽石も購入した。


「消耗品はこんなところかな。買い忘れたものはないよな?」


 会計を済ませる前にエルナに確認する。


「はい。傷薬も買いましたし、シルクちゃんの矢も買いました。武器に付与魔法もかけましたから大丈夫ですご主人様」

「ん?そのシルクはどうした?姿が見えないんだけど」


 キョロキョロと見回すが姿が見えない。

 シルクはいつも子犬のように俺の後を着いてきているのにどうしたんだろうか?


「そういえば先ほどから姿が見えませんねえ。あっ!先ほどの指輪が売っている所でシルクちゃんが熱心に見ていましたからそこかもしれません」

「指輪?シルクもそんなお年頃か」

「……あのご主人様。シルクちゃんはキューブ様の製作なんですよね?でしたらもう100年以上生きていると思うんですけど」


 へえ。シルクはそんなに前に作られたのか。

 まあ、大事なのは見た目だから問題ないな。うん。問題ない。


「いやまあそうかもしれないが、最近シルクは感情豊かになってきたからな。……まあ、シルクが何かほしいのなら買ってやろうか。エルナも何か欲しければ買っていいぞ」

「そんなおまけみたいに言われても……」

「いや、おまけってわけじゃないんだけど……まあ要らないならいいよ」

「いえ。欲しいです」


 パタパタと揺られるエルナの尻尾。うん、素直で結構だね。

 エルナと二人で指輪売り場に向かう。

 案の定、シルクがガラスケースに入った指輪を熱心に見ていた。


「シルク。その指輪が気に入ったのか?」


 いきなり声をかけて驚かさないように、シルクの横に並んでから声をかける。


「あっマスター。ごめんなさい。綺麗な指輪なので見とれていました」


 シルクが見ていたのは淡く青色に輝く指輪のようだ。


「綺麗な指輪じゃないか。シルクが欲しいなら買おうか?」

「あの、マスター。この指輪はペアーみたいです。離れ離れになってもいつか必ずもう一度会えるんだそうです」


 へえ。縁起がいいな。今の俺たちにぴったりなんじゃないか?


「よし。じゃあシルクと俺で買おうか」

「はいマスター。あの、ありがとうございます」


 仲間はずれになって怒っているんじゃないかとチラッとエルナをみると、肩をすくめて見せる。

 目で買ってあげてくださいと言っていた。この二人は仲いいんだよな。

 追加で指輪を二つ購入してお店を後にする。


 帰りの道すがら、指にはめた指輪を見ながらニコニコと笑顔を見せるシルク。エルナもそれをみて嬉しそうだ。

 これだけ喜んでもらえると買ったかいがあったというものだな。

 なんだか見ているこちらまで嬉しくなってくる。


 ラスボスを倒した後でこの二人の笑顔をもう一度見ることが出来るのだろうか……

 俺は酷い裏切りを二人にしているような、そんな申し訳ない気持ちになってくる。 

 シルク、エルナごめんと胸の内で呟いた。




 ■□■□■□■□




 いよいよラスボスに挑戦する日。

 俺たちは冒険者ギルドの魔法陣の前まで来ていた。

 いつものように魔法陣に手を触れ45階層まで転移する。ここからは歩いて潜らなければならない。

 いつもとは違い銃や連射箱は温存して一つ一つの階層を慎重に潜っていく。


 エルナの索敵でモンスターのいないルートを選んでいるし、可能であれば迂回してやり過ごす。

 46階層、47階層、48階層そして49階層の階段を下る。


 50階層は以前来たときのように敵の出現はなく、すんなりと赤い大きな扉の前までたどり着いた。


「シルク頼む」


 俺の声に応えてシルクが重そうな両開きの扉をあけていく。

 俺とエルナはその扉の下に三角形の木片を差込み扉が開いたままの状態になるように固定した。

 ラスボスが強すぎて勝てなさそうであれば逃げ出さなければならないからだ。


「知らなかったのかな?ラスボスからは逃げられないのだよ」


 そんな状況は極力避けたいしね。


 扉の向こう側は石畳になっていた。その上に一条の赤い絨毯が敷き詰められている。

 ラスボスが奇襲を仕掛けてくるとは思えないのだが、一応警戒しながらその絨毯の上を歩き奥に進んでいく。


「ご主人様……モンスターです」


 エルナの緊迫した声が響いた。確かに俺達の前方に一段と高くなったところがあり、玉座のようなものが見えた。

 そして、その玉座には天使のような羽を持った人影が偉そうにふんぞり返って座っている。

 その上には青い大きな宝石みたいなものがプカプカと宙に浮いているのが見えるから、おそらくはあの青いものがこの迷宮の心臓なのだろう。


 慎重に一歩、また一歩と玉座に足をすすめる俺たち。

 すでにシルクを先頭にした三角形の陣形を組んでいる。


 そしてはっきりと玉座の人物が判別できる位置まで近寄った俺たち。

 玉座から俺たちを睥睨するとそいつはゆっくりと立ち上がり口を開いた。


「死すべき定めの者達よ。良くぞここまでやってきましたね。私はミュー。この世界を作りし地母神ミューです」


 ……まあ、予想はしてたよ。



 名前 東雲圭

 職業 冒険者

 レベル 63

 冒険者ランク 1等級の下


 ステータス

 HP 830/830

 MP 830/830

 筋力 415

 体力 415

 器用 415

 知力 415

 敏捷 415

 精神 415

 運勢 415


 装備

 右手 《MURASAMAブレード》

 左手

 頭  《ヒルデグリム》

 胴体 《メリディオン》

 足  《ヴィーザル》

 装飾  闇の外套

 装飾 《リュミスの指輪》

(装飾) 願いの指輪


 スキル

<伝説>・・・最も新しい伝説を紡ぐ者 すべてのステータスに大幅な補正

<英雄>・・・少女を救ったアクメド商店街の英雄 レベルアップ時すべての能力にボーナス

<制限解除>・・・レベル制限99まで解放

<幸運>・・・幸運になる

<究極鑑定>・・・見えるすべてが見える

<3次召集者>・・・美しき地母神【ミュー】により異世界より召喚された者

 経験値倍増P・・・パーティメンバー全員の取得経験値2倍

 刀の心得・・・剣道2段の腕前

 第二種免許・・・車ないですけどね

 14歳から大丈夫・・・なにが大丈夫なんだよペド野郎

 獣だって大丈夫・・・種族を超えて愛情を育むもの 要するにケモナー



 名前 エルナ

 職業 奴隷

 レベル 50


 ステータス

 HP 500/500 

 MP 304/304

 筋力 250

 体力 250

 器用 152

 知力 152

 敏捷 250

 精神 152

 運勢 152


 装備

 右手 エーテルの短槍

 左手 《アイジス》

 頭  エーテルヘルム

 胴体 エーテルガード

 足  エーテルフットガード

 装飾 

 装飾


 スキル

<獣人>・・・レベルアップ時いくつかの能力にボーナス

 俊敏・・・回避に補正

 料理M・・・おいしい料理が出来たらいいですね

 好奇心・・・人一倍好奇心旺盛 猫じゃないので死なないです

 野生・・・森などでの戦闘時に若干の補正

 鋭い嗅覚・・・犬ですから



 名前 シルク

 職業 人形

 主人 東雲 圭


 ステータス

 HP 1998/1998 

 MP 1099/1099

 筋力 999

 体力 999

 器用 999

 知力 999

 敏捷 999

 精神 100 

 運勢 100


 装備

 右手 オブシディアンハルヴァード

 左手

 頭  オブシディアンヘルム

 胴体 オブシディアンメイル 

 足  オブシディアンフットガード

 装飾 願いの指輪

 装飾


 スキル

<第三世代人形>・・・能力値上限999にアップ 常に情報を集め自己進化する 

<名匠キューブ>・・・最高の人形師に作られた人形

<自動修復>・・・体内の回復器官が故障しない限り自動的にHPの回復を行う

 心種・・・いまだ萌芽せざる心の種

 赤い瞳・・・暗視可能

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