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俺と糞ゲー  作者: ピウス
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メガネさんのお願い

「今回は1レベルの上昇ですね」


 そう言うとメガネは俺に手をかざした。柔らかな光が俺を包み、脳裏にステータスが浮かび上がってくる。

 このレベルアップの作業も何回目だろうか?すでに30回以上メガネとあっている。


 名前 東雲圭

 職業 冒険者

 レベル 40

 冒険者ランク 3等級の下


 ステータス

 HP 600/600

 MP 600/600

 筋力 300

 体力 300

 器用 300

 知力 300

 敏捷 300

 精神 300

 運勢 300


 装備

 右手 《MURASAMAブレード》

 左手

 頭  《ヒルデグリム》

 胴体 《メリディオン》

 足  《ヴィーザル》

 装飾  闇の外套

 装飾 《リュミスの指輪》



 スキル

<伝説>・・・最も新しい伝説を紡ぐ者 すべてのステータスに大幅な補正

<英雄>・・・少女を救ったアクメド商店街の英雄 レベルアップ時すべての能力にボーナス

<制限解除>・・・レベル制限99まで解放

<幸運>・・・幸運になる

<究極鑑定>・・・見えるすべてが見える

<3次召集者>・・・美しき地母神【ミュー】により異世界より召喚された者

 経験値倍増P・・・パーティメンバー全員の取得経験値2倍

 刀の心得・・・剣道2段の腕前

 第二種免許・・・車ないですけどね

 14歳から大丈夫・・・なにが大丈夫なんだよペド野郎

 獣だって大丈夫・・・種族を超えて愛情を育むもの 要するにケモナー



 かなり俺も強くなった。おそらくはこの国でも屈指の実力を持った冒険者だろうと思う。

 もっともステータスにかぎった話だが。

 いまだにエルナと訓練してもいいとこ五分なのだ。体術的なものや武器の熟練は時間をかけないと上昇しないらしい。


「東雲様。少しお願いがあるんですけど、よろしいですか?」


 レベル処理も終わり、帰る気満々だった俺にそうメガネが声をかけてきた。

 メガネから話を振るとは珍しいな。

 メガネと話すと神経がささくれるので、最近は極力話しをしないようにしているのだ。


「あの、ちょっと用事があるので……」


 嫌な予感だけしかしないけど、はっきり断るのも少し怖いので言葉を濁す。


「まあまあ、そう言わないでください。ラン様直々のお願いなんですから、人間ごときには凄く名誉なことなんですよ?お礼の品も用意していますしね」


 そう言うと俺の返事も聞かないで、いきなり四角い丈夫そうな紙を俺に手渡してきた。


「あの?コレはなんですか」

「この紙にサインをお願いします」


 サイン?


「サイン……ですか?何かの契約書でしょうか?」


 紙自体は白紙だがこのメガネのことだ。あぶり出しとかも十分考えられる。

 というか、ここに何か書き足せばいいか。


「いえいえ、東雲様のお名前を書いていただければ結構ですよ。読者プレゼントらしいですから」

「読者プレゼント?」

「あれ?言ってませんでしたっけ。ラン様とリュミスがナプールの世界での東雲様のご活躍を本にして出版しているんですよね。ナプール戦記という題名です」


 聞いてない。

 というか、戦記物なのか?いつ俺は戦争をしたんだろうか。


「本……ですか」

「はい。一部の女神に大人気らしいですよ。今回でちょうど10冊目ということで、ナプール戦記第10巻<佐々木×東雲 東雲総受け本>の読者プレゼントにするらしいですね」

「へー。佐々木さんも登場するんですか」

「勿論です。人気キャラクターですからね。今回も佐々木×東雲にするか東雲×佐々木にするかで、ラン様とリュミスで凄い激論してたぐらいなんですから。東雲様はどちらが良いと思いますか?」


 どう違うのか分からない。

 まあ、作家の人はいろいろ言葉にこだわるらしいからなあ。2人とも一応はまじめに本を作ってるんだろう。本なんぞ書いてないで仕事しろよとは思うが。


「いや、ちょっと内容を見ていないのでよく分からないですけど、佐々木さんのほうが年長者ですからね。佐々木さんが先の方がいいんじゃないですかね」


 俺がそう答えると、面白くて仕方がないといった表情をするメガネ。


「あっ、じゃあちょっと実物みて見ますか?」

「いえ、時間もないのでいいですよ」

「まあ、そういわないで。結構面白いですよ」


 なんか怪しい。メガネがやけに熱心に勧めてくる。

 コレはみない方がよさそうだ。俺とて伊達にメガネと長く付き合っていないのだ。


「いえ、ホントに大丈夫です。それよりなにかお礼がいただけるそうですが……」

「遠慮しなくていいと思うんですけどねえ……チッ」


 おい!このメガネ舌打ちしやがったぞ。コレは読まなくて正解らしいな。

 なんとなく勝利の余韻に浸る俺。


「あの?ミューさん?」

「ああ、はいはいお礼でしたね。東雲様は最近あの雌犬のレベルが上がらないことに気がついてますか?」


 雌犬って……エルナのことだろうけど。

 イラッとくるがこの話はあまり掘り下げるとメガネに色々言われそうだからなあ。

 こいつ俺がスキル【獣だって大丈夫】を身につけた後に開口一番「昨晩はお楽しみでしたね」とか言いやがったし。


「ええ。スキルの<熟練者>を手に入れるまではあれ以上あがらないと思ってるんですが」

「そうなんですよね。ただ、あのスキルを手に入れるまでに最低2年かかるのでラン様が気をもんでらっしゃるんですよ。だらだらとレベルも上がらないのに2年も見ているのも暇らしくて」


 自分で呼んでおいて相変わらず自分勝手な奴だ。


「それでもういっそのこと、スキルをあげちゃえば時間短縮になる!とお気づきになったみたいなんですよ。だからこのサインを書いていただければこっちの方で雌犬に熟練者のスキルをつけときます」


 おおっ!それはいい取引だ。

 スキル取得まで3年は覚悟していたのだ。


「それはありがたいです。俺なんかのサインでよければ何枚でも書きますよ」

「ありがとうございます東雲様。それではこちらの色紙全部にサインをお願いしますね」


 そう言って分厚い紙の束を俺に渡すメガネ。


「……あの、コレ何枚あるんでしょうか?」

「さあ?1000枚ぐらいじゃないですかね」

「……」


 どれだけ発行しているんだろう。

 登場人物の俺に印税的なものは入らないのだろうか?

 まあ仕方がないので渡されたサインペンで名前を書いていく。

 見ているだけで暇なのか「東雲様は金釘流の字体なんですね」と嫌味を言ってくるメガネを無視して黙々と名前を書いていく。

 右腕が痛くなるぐらい書き続け、とうとう最後の一枚を書き上げる俺。


「やー、ありがとうございます。限定100名様に送る読者プレゼントが出来てラン様もお喜びになると思います」


 笑顔を見せながら俺を労わるメガネ。

 だが!ちょっと待て。100名様限定だと!なんで1000枚も書かせたんだこの糞メガネは!


「はい。喜んでいただけるのなら俺もうれしいです。じゃあ転送お願いします」


 怒りを押し殺して俺がそう言うと、ひどくつまらなそうな顔をするメガネ。

 こいつの性格は大体分かってきたのだ。相手をしないに限る。相手をしてもこいつが喜ぶだけなのだ。


「じゃあ東雲様。貴方様にはラン様も期待していますので頑張ってくださいね」


 元気なさそうにそう言うと、俺に手をかざすメガネ。いつものようにあふれ出す柔らかな光もなんだか弱々しい感じがする。


 フッ。勝った。

 なんだか自分でもよく分からない達成感に包まれながら俺の意識は暗転したのだった。  

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