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俺と糞ゲー  作者: ピウス
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メガネさんと伝説の英雄

 軽い立ちくらみのような感覚がして頭を振る。

 この感覚にもだいぶ慣れてきた。

 あたりを見渡すと、俺は当たり前のようにメガネに最初に呼ばれた部屋にいた。


 頭に鈍い痛みがある。昨日はモンスターを撃退した祝勝会が町をあげて盛大に開かれのだ。

 俺は敵の大将を討ち取った殊勲の人形の所有者ということで、いろんな人にしこたまお酒を飲まされた。どうやらそのまま眠ってしまったようだ。

 骨折した右腕はエルナに添え木をしてもらってから傷薬をかけたのでなんとか骨はくっついた。

 とはいえ、さすがに少々痛いので手をさすりながらメガネを待つ。


 いつもの様に部屋の扉が開き姿を見せるメガネ。

 クス玉やクラッカーといった小道具は最初の1、2回ほどあったが、メガネが準備だか後片付けだかが面倒になったのかそれ以後はなくなっている。


「東雲様おめでとうございます。レベルアップです」


 何回も行っている作業なので事務的に喋るメガネ。

 手元のバインダーで確認しながら「今回はブラックリザードマンとリザードマン3匹を3人で倒されましたので2つレベルが上がりますね」

 そういうとメガネは俺に手をかざした。

 柔らかい光が俺を包み脳裏にステータスが浮かんでくる。



 名前 東雲圭

 職業 冒険者

 レベル 12

 冒険者ランク 6等級の下


 ステータス

 HP 320/320

 MP 320/320

 筋力 160

 体力 160

 器用 160

 知力 160

 敏捷 160

 精神 160

 運勢 160


 装備

 右手 エーテルブレード

 左手

 頭  エーテルヘルム

 胴体 エーテルジャケット

 足  エーテルブーツ

 装飾 闇の外套

 装飾


 スキル

<伝説>・・・最も新しい伝説を紡ぐ者 すべてのステータスに大幅な補正

<英雄>・・・少女を救ったアクメド商店街の英雄 レベルアップ時すべての能力にボーナス

<制限解除>・・・レベル制限99まで解放

<幸運>・・・幸運になる

<究極鑑定>・・・見えるすべてが見える

<3次召集者>・・・美しき地母神【ミュー】により異世界より召喚された者

 経験値倍増P・・・パーティメンバー全員の取得経験値2倍

 刀の心得・・・剣道2段の腕前

 第二種免許・・・車ないですけどね

 14歳から大丈夫・・・なにが大丈夫なんだよペド野郎



 おや?

 いつの間に俺は<伝説>などというスキルを身につけたのだろう?

 すべてのステータスに100も上乗せされている。すばらしい効果だ。スキル説明もおふざけはない。


「あの、ミューさん。<伝説>というスキルは俺はいつ身につけたんですかね?」

「あれ?東雲様、冒険者カードをご覧になってないんですか?ブラックリザードマン討伐の特別イベント<大将>を昨日クリアーされてますよ」


 ああそうか。昨日は気絶していたから多分そのときにカードに表示されてたんだなきっと。 

 ゴソゴソとポケットから冒険者カードを取り出して確認した。




 挑戦者<ケイ>さんが特別イベント<大将>をクリアーしました。

<ケイ>さんは特別イベントを5つ以上クリアーされましたので<伝説>のスキルが付与されます。

おめでとうございます♪




 どうやらこの特別イベントは汎用らしい。俺がクリアーしても消えていない。

 後で佐々木さんに教えてあげてもいいな。もう気付いてるとは思うけど。


 しかし<伝説>に<英雄>のスキルか。二つ合わせれば伝説の英雄だ。

 おいおい、なんかかっこいいじゃないか。嬉しくなって口も軽くなる俺。


「<伝説>と<英雄>のスキル持ちなんですね俺。伝説の英雄という奴ですかね?なんだか恥ずかしいですよ」

「なに言ってるんですか東雲さん。もっと自信を持ってください。……伝説の英雄でもなければあんな台詞いえませんよ」


 あんな台詞?

 俺のいぶかしげな視線に気が付いたメガネはコホンと一つ咳をすると、俺の口調を真似て喋りだした。


「なシルク。お前がいなくなると悲しむ人が2人もいるんだからな。ランドさんだってリンさんだってきっと悲しむ。だから頼むからこれからはあんな無茶なことはするんじゃないぞ。敵を倒したってお前が死んじまったら意味がないんだからな。

 ……ラン様はウルウルと少し泣いてらっしゃいましたけど、私は臭すぎて鼻が曲がりそうだったんですよね」


「……」


「それで私そのとき思ったんですけど……東雲様ってもしかして鏡とかご覧になったことがないんじゃないんですか?」


「……」


「隣にいたリュミスなんて……」


「ス、スイマセン!少しお聞きしたいんですけど」


 俺は話題を変えることにした。そうしないとメガネを刺し殺しそうになったからだ。

 まあ裁判沙汰になってもこの状況ならば無罪にはなるだろうが。

 ……こいつ1回や2回刺しても死にそうに無いもんなあ。


「あっ、はい。どうぞ」

「あの、前から気にはなっていたんですけど……俺がこの世界をクリアーすると、他の召集者は元の世界に戻れるんでしょうか?」


 うーんと少し考え込むメガネ。


「申し訳ありません東雲様。攻略に関するご質問はラン様より回答してはならないといわれていますので、そのご質問にはお答えできません」

「いや、でも、これって直接攻略に関係ないですよね?」

「いやだなー東雲様。もし誰かがクリアーすれば元の世界に帰れる!なんて情報与えたら自分の武器やお金を他の方にあげる人が出てくるかもしれないじゃないですか。それではラン様が楽しめませんよ」


 そういってニヤリと笑うメガネ。


「じゃあ東雲様。貴方様にはラン様も凄く期待されていますので頑張ってくださいね」


 話は終わりとばかりに俺に手をかざす。

 

 ……こいつはいつかぶん殴ってやろうと思う。

 そんなメガネに対する怒りを抱えながら俺の意識はブラックアウトしたのだった。

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