少女
見事吸血鬼を倒し、ついでに地下室を物色した俺たちは地下室から建物に続いている扉を開けた。
鍵はかかっていたみたいだけど、シルクがこじ開けました。
パンチで扉を破って鍵を開けたんです。
シルクにはシーフとしての才能もあるみたいですね。
館の中には囚われのスキル屋の娘さんがいるはず!
ただ、心配なこともある。
俺はメガネにたしか第三次募集とか言われたからもし最初の募集者……というか最初のこの世界への拉致被害者のときから攫われているんだとすればさ、かなり長いこと攫われている気がするんだよね娘さん。
普通は死んでるよね。
もしくは吸血されて吸血鬼になってる。
……いやここはイベントが進行していないのだから生きていることにかけよう。
信じているぞ!
神様。
地下室から館に侵入し片っ端から部屋を調べる俺たち。
時々襲い掛かってくる使用人というか多分吸血されて吸血鬼にされた人をシルクがヤリモドキの一振りで壁のシミに変えてます。
ほとんど空気な俺とエルナは部屋の物色係。
エルナは勘だかにおいだか知らないけど敵の接近を知らせてくれてるから空気は俺だけかもしれないけど。
よく考えると強盗のような気もしてきますが、よく考えてないので平気です。
……だって地下室で味をしめたんだもの。
俺がいい加減箪笥やなんかを漁るのも飽きてきたころ、ひときわ大きな扉を開けるとその部屋には大きなキングサイズのベッドがあった。
寝室みたいだな。
「ご主人様!また誰かいます」
エルナの声を聞き身構える俺。
武器はないのでとりあえず空手の構えだ。
空手なんかしたことないんですが。
たしかにベットの横に立っている女性がいる。
裸だ!
……凄い。
爆乳とも言うべき見事な体。
スキル【14歳から大丈夫】の保有者たる俺も思わず見とれてしまうほどだ。
まあ、14歳【まで】では無いので当然だ。
思わず凝視する俺。
「この人、ムシ人ですよご主人様」
ムシビト?
おおう顔は……蟷螂じゃないですか!
胸しかみてなかったから気が付かなかった。
なんという気持ち悪い生物なんだろう。
これは吸血鬼に違いない!
「シルク殺れ」
と俺が命じようすると「待ってくださいご主人様」
エルナがとめる。
「ムシ人には血がありませんから吸血鬼になることはありません!この方は凄くお綺麗な方ですからおそらくは吸血鬼に魅了されていただけだと思います」
綺麗ってエルナさん。
たしかに首から下はお綺麗だと思いますが……
蟷螂の美醜は俺にはわからないです。
というかだ。
……オチが見えた。
その後、吸血鬼さんの館をくまなく物色して宝石なんかを手に入れた俺たちは、ほとんど日が落ちかけて赤く染まった道をおっぱい蟷螂さんを連れておっさんの工房までやってきた。
背中で蟷螂さんの爆乳の感触を味わいたかったのですが、なんとなくこの子が気が付いたら食われそうで嫌だったのでエルナが背負いました。
工房でおっちゃんにおっぱい蟷螂さんを見せると、俺の鋭い洞察の通り!
この子は攫われたスキル屋さんの娘さんだったらしく、驚いた工房のおっちゃんが飲んだくれてたというスキル屋さんをよんできて、今まさに俺の目の前で親子の熱い抱擁が交わされています。
工房のベッドに横たえられたおっぱい蟷螂に、飲んだくれてたという蟷螂さんがしがみついて涙を流している。
いや、感動的なんだろうけど蟷螂だよ?
全然感動を共有できない俺。
おっぱい蟷螂さんは魅了の魔法にかけられているだけなんで、明日になったら魅了解除のアイテムで直すらしいです。
正直もうどうでもいいので、早いとこ俺は宿にとまって寝たいんですが工房のおっさんが帰してくれない。
仕方がないのでここで感動の再会をみているわけです。
ひとしきり泣いて娘さんとの再会に満足したのか、蟷螂のお父さんが俺に感謝の言葉をかけてきた。
「冒険者の方本当にありがとうございます。妻を早くに亡くして、この子は私のすべてでした。もう諦めかけていたのですが、あなた様のおかげでもう一度この手にこの子を抱くことが出来ました。なんとお礼申し上げてよいやら分かりません」
ものすごく感謝されてしまった。
正直悪い気はしないけど、凄くすわりが悪いというかなんというか。
……この世界の蟷螂さんは交尾しても男の人は食べられないんだね。
「運良くこの美しいお嬢さんを助けることが出来て私もうれしいです。聞くところによるとアナタは酒びたりになっていたそうですが、娘さんが戻ってきたのですからどうかまた元のようにスキルを販売して、私たち冒険者を助けてください」
適当に蟷螂さんに声をかける俺。
蟷螂さんは「勿論です。勿論です」
と涙を流している。
うん、これで腕のいいスキル屋さんも再開するしめでたしめでたしだ。
じゃあと、俺はおっさんに教えられた道向かいの宿屋に向かおうとする。
今日は色々あって疲れたから体を休めたいのだ。
「お待ちください」
俺を呼び止める蟷螂さん。
……
もういいじゃん。
もう休ませて。
「娘を助けていただいた御礼をまだしておりません。アナタ様は冒険者でございますので、是非私の作ったこのスキル石をお持ちください」
おおっ何かくれるんだ。
吸血鬼の分だけかと思ってた。
お礼を断るのも失礼だろうから、とか何とか言いながら俺は蟷螂さんの差し出した緑に光り輝く水晶玉みたいなものを受け取った。
……どう使うんだよこれ?
俺が受け取ると蟷螂さんがブツブツと何かつぶやく。
その瞬間水晶は粉々に砕け散り、俺の頭の中にポンというシステム音が響く。
ケイさんはスキル【経験値倍増(P)】を習得しました。
同時に冒険者カードがブルブルと震える。
挑戦者<ケイ>さんが特別イベント<少女>をクリアーしました。
<ケイ>さんはスキル<英雄>を手に入れました。
<ケイ>さんは特別イベントを4つ以上クリアーされました。
おめでとうございます♪
なお、特別イベント<少女>は消滅しました。




