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俺と糞ゲー  作者: ピウス
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帰路

 当初の予定とは違ったけど、これはこれで中々良い買い物だったな。

 と自分を褒めながら、新しい仲間というか新しい奴隷エルナを連れて工房へ向かって歩いてます。

 エルナの首筋には青い刻印があるけど少し襟を立てれば隠せる感じだ。


 道すがら、エルナに迷宮についての知識や冒険者としての心得を聞く。

 運のいいことにエルナは何年か冒険者として生計を立てていたらしいのだ。

 値段が高かったのはそういった理由もあるらしい。


 冒険者からなんで奴隷になったのかは知らない。

 聞いてないからね。この子も自発的には話してないし。

 ぶっちゃけると、この子って犬にしか見えないから俺は興味がない。


 ただ、何年か冒険者をやってたというだけあって俺の大抵の質問には答えてくれので凄く便利というか頼りになる。

 多分これからも色々質問するだろうと思う。


 エルナによると、何でもこの世界の迷宮はほとんど生き物だと考えられてるらしい。

 小さいうちは地中にあってひっそりと成長し、ある程度大きくなると地面に入り口が出来る。

 ほっとくとドンドン大きくなって、そのうちその迷宮からモンスターが大量にあふれ出してくるという話だ。


 だから町の近くに迷宮が現れると冒険者や傭兵、時には騎士団なんかが探索してその最深部で迷宮の心臓を壊して迷宮を殺すんだそうだ。

 

 迷宮の心臓ってなに?

 と思わなくも無いが、何でもそれっぽい宝石みたいなものが迷宮の最深部に必ずあるらしい。

 そしてその心臓のかけらが、おっちゃん達人形師の工房やスキル屋といったお店で貴重な魔石として使われるという話だ。

 シルクの強化にも多分使われているんだろう。

 

 因みに魔石は迷宮のモンスターの体内にもあるんで、普通の冒険者はそれを売って生計を立てるそうだ。

 腕の立つ冒険者は値段が1桁違うという迷宮の心臓を狙うようだが。


 田舎には腕の立つ冒険者が少ないと思うから悲惨なことになりそうだけど……

 なんでもエルナいわく

 

 迷宮は人や獣人やその他もろもろのファンタージーっぽい人たちの【悪しき心】を栄養にするので、人が多く集まった町の周辺に出来やすいとのこと。

 反対に田舎なんかには迷宮はほとんど出来ないし、出来ても自然と小さくなって消滅することが多いんだと。


 おうおう。

【悪しき心】とか神様はじけて設定作ったな。


 大学はいるまでは田舎暮らしの俺からすれば、田舎に【悪しき心】とやらが少ないとか物を知らないにもほどがある。

 ふふん、という感じだ。


 田舎はねえドロドロしてるんだよ人間関係とかその他色々とな。

 定年の夫婦が夢の田舎暮らしを始めて1月で都会に帰っていくとかよくある話なんだよね。

 現代日本での話だけど。

 まあ、【悪しき心】とやらの総量は町の方が人が多い分、多いのだろう。



 そんなことを俺に説明していたエルナだったが、不意に道の往来で足を止めた。

 

 ん?鼻をクンクンさせてる。

 つられて俺もクンクン。


 おっ!

 なんだか良い匂いがする。

 香ばしく焼けたお肉の匂いだ。


 キョロキョロ周りを見渡して串にさしたお肉を焼いてる露天を見つけた。

 そういやここに来てまだ何も食べてないからお腹がすいたな。

 

 1億の古銭しかないんだけど……

 露天で冒険者カードって使えるんだろうか?と少し躊躇する俺。


 しかしこの匂いには勝てない。

 エルナも涎をたらさんばかりにお肉を見つめている。

 色々説明してもらったし買ってあげたいんだけどな。


 露天で聞いてみる。


「こんちわー。旨そうですね。支払いに冒険者カード使えますか?」

「いらっしゃい。冒険者カードね当然使えるぜ」


 おおっ当然なのか。

 進んでるぞ異世界。


 じゃあその串焼き3本くださいなと購入して1本をエルナに渡す。

 もう1本はシルクにお土産だ。

 1本50ヘル也。

 ふむ。1ヘル1~10円ぐらいの価値なんだろうか?

 とするとエルナのお値段は3000万~3億あたりか?

 いやいや奴隷もお安くないね。


「ありがとうございます。ご主人様」


 うれしそうにお礼を言ってお肉にかじりつくエルナ。

 尻尾もパタパタと揺れている。

 この子仕草がかわいいんですけど。


 やはり尻尾は良い。

 シルクにも必ずやカスタムを施そう。

 改めてそう決心しながら俺もお肉にかじりつく。


 うんおいしい。

 何の肉か分からないけど、豚肉みたいな肉質だ。

 塩と胡椒っぽい香辛料が利いてていける。

 気にはなるけど何の肉かはあえて聞かない。

 もしもネズミとかヘビとかいわれたら食べられなくなりそうだからなあ。

 世の中には知らない方がいいこともあるのだ。


 初めて食べる異世界料理に俺が舌鼓をうっている横で、エルナは凄い勢いで食べていたのか、もう食べ終わって俺を見つめている。

 というか、もの欲しそうにお土産用のお肉を見つめている。


 お肉持った手を右に動かすと視線も右に。

 左に動かせば左に視線が動く。


 あらやだ。

 なにこの犬。

 ちょっとかわいいんですけど。

 エルナの催促に負けてお肉を手渡す。


 「ありがとうございます」


 耳をぴこんと立てて、尻尾をフリフリさせながらお肉にかぶりつくエルナ。

 

 シルクのお土産がなくなってしまったので今度は骨付き肉を追加注文する。

 ついでだし、工房のおっちゃんにもお土産で買ってくとしますか。色々お世話になったしね。

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