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さよならプラネット

作者: 櫻井秋月

「わー!!」


なんて叫んだりして。

星が降りそうな夜の校庭に二人きりで。

一番小さなブランコに二人で腰掛けたりしてる。

久しぶりにやって来たボクらの母校の小学校は今のボクらには凄く小さく見えた。

なんだか巨人になったような気分。そっか、あの頃はこんなにもボクらは小さかった。


「声がデカい」

「いーじゃんいーじゃん。どうせ人なんてここら辺居ないんだよ」

「もし聴かれてたら補導ものだな」

「田舎の高校生二人が夜の小学校の校庭で不純異性交遊?都会に夢見過ぎたカッコ悪い田舎者って感じだね」

「じゃあお前がそうなんだろうよ」

「キミもだよ~」


星明かりを頼りに二人の顔を見合う二人は昔から知る幼馴染み。

いつもこんなふうに冗談を言いながら笑ってきた。

二人で色々馬鹿して悪いことして。喧嘩もして沢山泣いて怒って。

でも結局一緒に居られる、そんな二人だった。

喜怒哀楽共にしてきた二人は多分きっとこれからもお互いに一番信頼して一番大好きな人になっているんだと思う。


「綺麗だねぇ」


周りの自然は今もそのままで、校舎もそのままで。

静かに過ぎていく星明かりの夜のその幻想的な世界を五感で感じながらボクは呟いた。


「ああ」


ボクのとなりの彼もそう呟きながら星空を眺めていた。

いつしか二人は手を繋いで、そうしてからはずっと無言で空を眺めていた。

ボクは咳をした。

もう当たり前のように、夜でも分かるような赤黒い液体が飛沫を遮る手に張り付く。

現実なんてこんなもんなんだなぁって少し思った。


「外、出たの後悔してるか?」

「んーん。全然。やっぱり終わりの場所ぐらい自分で決めたいもんね」

「そか…」


世界を包んだ白い光。

その日、世界の誰しもが間もなく来る死へのカウントダウンを開始した。

「あらそい」という人の歴史の中で必ず起こるその出来事はヒトを死滅させるまでにその行為を発展させていた。

多分、科学力の向上と共にヒトはヒトらしさを無くしていったんだと思う。

人が人を殺すのに躊躇わなくなった。そんな世界だったから、いつかはそうなると思っていた。

そんな日は突然やって来たのだった。


もちろんボクらの青春もジ・エンド。短い青春でしたさよならだなんて笑いながらボクは彼に言った。彼も笑って次は馬鹿に生まれないようにしないとなと返してくれた。


「あの、さ…」

「ん?」

「やっぱり、死にたくないなぁ」


笑顔を見せながら徐々に泣き顔に変わっていくのを感じる。

こんな時は意地でも笑顔でいようと思ったのに。湿っぽいのは嫌だからと泣くな悲しむなと彼に言ったのに。コレじゃただの約束破りだ嘘つきだ。

「枯れるまで泣けよ。泣けるのだって今だけだ」


そんなボクを抱きしめながら彼は一緒に泣いてくれたんだ。


ひと通り泣いて、涙に含まれるいろんな悲しい感情を流して、ボクらは二人で校庭の真ん中で大の字で仰向けで寝転がった。


「俺、イビキすげぇからな。眠れないって石投げるなよ?」

「え?もちろん不快だったら投げるよ?」

「やめろよ…。最後なんだから静かに寝かしてくれ」

「ん…まぁ、考えとく」

「よし、じゃあ、お休み」

「うん、お休み」


多分今日でボクらの毎日は終止符を打たれる。

多分間もなくすれば皆がボクらみたいになるのだ。


今度は幸せな世界に生まれますように。


さよならプラネット。

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