書店
三題噺もどき―はっぴゃくよんじゅうはち。
片耳にしたイヤホンから、次の曲が流れ出す。
適当に作ったプレイリストをさらにシャッフルで再生しているので、次に何が流れてくるか分からない。これが意外と楽しかったりする。
「……」
回りには、子供連れの親子や、ご老人、若者らしき人たち……年齢性別問わずいろんな人がこの店には来る。どこでもそうか、大抵の店は。
ただこの店は他の店よりもその年齢幅が広いような気がする。……この町唯一と言っていい、書店がここだから。
「……」
他にも書店はあるにはあるんだけど、品ぞろえがいい店はここだけだ。最新刊とか買いたいならここに来た方がいい。それでも、地方ではあるから公式の発売日から2、3日は遅れている。
一度、通販で買ったことがあったが、それも発売日から遅れてきたから、それはもう地方住みの運命なんだと思う。
「……」
目立つ位置には新刊が平積みされている。
いくつか並んだ本棚は、それぞれでジャンル分けされている。
参考書を眺めている学生や、自己啓発本のようなモノを手に取っている社会人らしい人。休憩スペースである椅子に座って、コーヒーを飲んでる老人。
「……」
ここの書店は、店の端の方に、パン屋さんとコーヒー屋さんがあるので、こういう事もある。アレは多分、パン屋さんでパンを買ったら貰えるコーヒーだろう。カップが小さいモノ。
パン屋さんと反対側にあるコーヒー屋はそれなりに有名な店だ。飲んだことはないが、あんな小さなカップじゃない。
偏見で申し訳ないが、レース生地のふわふわしたスカートを履きながら、ジャケットを肩にかけたような女性が持っていそうなカップだ。それか、女子高生が自慢のように持っていそうな……偏見が過ぎるな。
「……」
まぁ、本棚からは少し離れてはいるから、大丈夫なんだろう。汚す可能性は比較的ゼロに近い状態にしたうえで、こうして休憩スペースを作っているだろうし。
たまに、子供が走り回っているのでひやひやするけれど。
「……」
そんなことはさておき。
今日は目的があって、ここに来たのだ。
しかしその目的は、本ではなく。
「……」
年末は目立つ位置に置かれていたのに、徐々に端の方に追いやられているコーナー。
百円ショップとかで売っているものでもよかったんだけど、そうなると白地図がついていなかったいりするから……それだとやってみたいことが出来ない。
「……」
それも、あの子の真似事をしてみたいだけなんだけど。
それに、私はそこまで遠出をするようなことはないから、意味はないかもしれないが。
それでも、あの子が楽しそうにしているから、やってみたい……あわよくば会話の種になればいいなんて思っている。
「……」
何種類か並んだ手帳のコーナーを眺める。
特にこれと言ったこだわりとかはない。後ろの方に白地図が載っていればなんでもいい。
あの子が使っているのと同じ手帳があれば良かったけど、なさそうだ。書店ではなく、文具店とかに行った方があるんだろうか。
「……」
しかしこの辺りにその店はないからぁ。
車で1,2時間程度かけていくところにある。
休日に連れて行ってもらってもいいけれど、母はあまり運転は好きではないらしいので、遠出もしなくなった。幼い頃はよくしていたけれど。
「……」
どの手帳も同じように見えるが、中身にもいろいろ種類があるらしい。
……どうせなら、あの子と同じ手帳が欲しい。その方が、こう……ね。
通販でないかとその場で探してみたが、限定品らしく完売になっている。
あぁでも同じ型で、違う色のものは売っているらしい。
どうせ、カバーにはシールか写真を貼るだろうし、見えなくても問題はない。百合のステッカーとかあるんだろうか。
「……」
次の日曜日にでも、母に頼んで連れて行ってもらおうかな。
どうせ、今週は暇だし、なんなら明日母は休みのはずだから、その時でもいいが……平日にしかできない手続きとか色々あるらしいから、日曜日の方がいいだろう。
「……」
うん、そうしよう。
そうと決まればもうここに用はない。
欲しい本はいまないので、さっさと帰るとしよう。
お題:白地図・スカート・百合




