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第17話 リュクシュールの闇

その明るい応接室に一人の男が入ってくる。明るい緑の髪に金の瞳。現リュクシュール公爵、エポック・リュクシュールである。


「よくぞいらっしゃいました。リュクシュール公爵」


立ち上がり挨拶をしたのは漆黒の髪に緑がかった黒の瞳を持つ男、現トリスタン公爵、セクレテール・トリスタン。その隣に立つのは焦茶の髪と瞳の妻、クーラ。両親の一歩後ろに立つ息子キリグ。父に似た顔立ちと色彩を持っていた。


「紹介しましょう。息子のキリグです。どうぞよしなに」


「キリグです」


それぞれの挨拶が終わり、香木を削り出して造らせたと思われる美しい机を挟んで柔らかなソファーに座った。


「長ったらしい挨拶は省略させていただきます。我が父、前リュクシュール公爵が謀反を企てている。その話についてだ。父が偏った思想の持ち主というのは知っているだろう、セクレテール」


「ああ、知っているとも。その愚痴を何度聞かされたことか」


二人は友人である。見習い時代、共に同じ部署で勤めていたことがあるのだ。


「本格的に行動に移すそうだ。次の五芒星会議の時にヴィジラン、トリスタン、そしてドロワシオンに毒が盛られる」


「……なんの毒だ」


「聞かずともわかるだろう。月光の毒だ。初代皇帝フンダトール様の母上が受けた毒と同じだ。時の宰相オシアス様の子孫である其方なら作り方も知っているであろう?」


トリスタンは平民上がりの公爵として知られている。しかし、それは初代皇帝がその公約を守るために流した嘘であった。事実、他公爵家の当主であっても本来は知り得る情報ではない。キリグですら知らなかったのだから。エポック・リュクシュールは歴史家としても有名である。全ての事実を明らかにして物事の全体像をよく掴んでいるのだ。


「そうだな。だが月光の毒の製法は我が家にしか伝わらぬモノのハズ…。まさか姉上が?」


「ソラティオから流れてきたモノだと私も考えたのだ。だからこそソラティオには何も話さず、今行動している」


「しかし、肝心の丸薬!皇帝御本人が管理されているのではないのか?どのように手に入れるのだ!」


「簡単だ。完成してから奪えぬのなら未完成品を狙えば良い。今私が生かされているのはそれがあるからなのだから。私は作り方を知っている。最後の行程だけだがな」


キリグは考えていた。


なぜこのように全てを語るんだ?終わったら皆殺しか?話す必要などないだろう。ていうか、なんでこんなに知ってるんだよ、いろいろと。


と。


リュクシュール公爵の発言を最後に会話が途切れる。そのタイミングを見てキリグは口を開いた。


「リュクシュール公爵、それを我々に話す意味はあるのでしょうか?少なくともあなたに理があるようには思えないのですが・・・」


「それは・・・。私、いえ、僕はアニメイラストを描く画師なんですよ。あなたから連絡がきましたよ。皇女からの直々の頼みとしてイラストを描いてほしい、とね。父は絵を描くことに消極的な考えで僕を辞めさせたい。陰謀に加担させて一族全体の総意としたい。しかし僕はそんな面倒そうなことに巻き込まれたくないのだ。絵を描く僕を保護してもらう代わりに謀反について語っている」


「…、クエルポさんですか?」


「そうだ。なぜわかった?」


「だって、オッキオさんの一人称は『あたい』カベジェーラさんは『わたくし』アトゥコンドさんは『ウチ』。僕というのはクエルポさんだけですから」


「お前、絵を描いていたのか。その面で?ハハッ!本気か?お前の絵はかなり酷かった気がするんだが?」


話を聞いていたトリスタン公爵が大笑いしだす。その足を叩いてクーラが黙らされる。


「失礼ですよ。何をなさっているの?」


「い、いやだって見たことあるだろ、コイツの絵」


「確かにお世辞にも素晴らしいとは言えませんでしたけれど・・・。大笑いするほどではないと思いますよ?」


「…一応努力したんだが。あれは模写だから苦手だっただけでアニメーションに使われるようなデフォルメ化された(というらしい)絵は得意だぞ?模写は得意だがイラストを描いて皇帝に大笑いされたことがあるお前にだけは言われたくない」


「いつ聞いたんだ?それ!」


「皇后アナッサ様からだが?」


なんとも醜い争いが始まった。模写とイラストどちらが正攻法な絵と呼ばれるのか。決着が非常に気になる問題ではあるが問答無用にクーラによって切り捨てられる。


「そのようなことはどうでもいいです。どちらも得意な私からしたらね。今重要なのは、リュクシュール公爵。あなたは家族を、血族を切り捨てる覚悟がおありなのですか?」


「ある。そのためにここにきた。こうして話を伝えているのだ。いざとなれば私が父と妻の寝首を掻きましょう。トリスタンとしても秘薬の製法を流したソラティオをそのままにしておくのは無理でしょう?」


「そうだな。姉上は断罪しなければならぬ。しかし・・・」


目を瞑り何か深く思考するように押し黙る。


「なんだ?」


「あの、冷静沈着、氷の令嬢とまで呼ばれていた姉上があのように明るく派手に後先考えず行動するなんて・・・と思ってな」


「それは・・・、そうですね。お義姉様はもっと静か、でもないけれど落ち着いた方だと思っていました」


「あの叔母上に限って冷静沈着?その噂をなさっていた方は目が節穴なのでは?」


最後に一つ、違う意見があったがトリスタン公爵夫妻の考えは一致しているようだ。リュクシュール公爵もうなづいていることから同意見だと伺える。


「もしかして・・・。いやなんでもありません」


「なんだ?」


少し考えたような仕草を見せるキリグにめざとく聞くリュクシュール公爵。


「…例えば、公爵の気を引きたかったとか?または浮気相手がいる・・・。単なる憶測で根拠があるわけではないのでその・・・」


「どこから浮気や気を引きたいという言葉を覚えたの?」


「かぐやから」


「姫様・・・。貞操観念をお教えしなければなりませんね。アナッサ様に相談しましょう。」


(姫様は本当に危なっかしいですね。見ているこちらがヒヤヒヤしますよ。この前もキリグに『投げキッスって大人向け〜?』などと連絡したようですし・・・。本当にうちの姫様は・・・。やはりキリグに抑えさせるのが一番ですね)


ビューっと冷たい風のような冷気がクーラから発せられる。

隣に座るキリグが顔を真っ青にしていた。


(ごめん、かぐや!)


「リュクシュール公爵、親族を切り捨てるご覚悟があり、姫様のアニメ改革の手伝いをするというのであれば皇帝陛下も信用なさるでしょう。あなたは引き続き其方の家の様子や動きを探ってください。こちらはヴィジランへの連絡をさせていただきます。制圧が迅速に行われるように」


「わかりました。ではよろしくお願いします」


そうして帰っていくリュクシュール公爵の背中を見送りつつ


(あれ?なんでクーラが綺麗に閉めてるの?こういうのって当主の私の仕事じゃないの?)


と考えているバカがいたことは気づかれなかったのである

題名を少し変更させていただきました。

「アニオタな私、皇女に転生したら王道アニメだらけの世界で本気の改革を始めます」

                 ⇩

「アニオタな私、皇女に転生したら王道アニメしかない世界で本気の改革を始めます!」

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