第10話 皇女はドS?ドM?私は…黙秘します!
コンコン
「陛下、お食事の時間でございます。こちらにお運びしてもよろしいでしょうか」
もうお昼の時間だ。早いな。
「私、お腹、ペコペコなんだよね。朝ごはん食べれなかったから」
「……それは姫様が起きるのが遅かったです。アナッサ様から昨日は寝るのが遅かったからぎりぎりまで起こしちゃダメだと言われたのですよ」
「そうなんだ。でもよく眠れてすっきりしたから、ありがとう!」
「眠れたならよかったわ」
なんだかんだ言ってお母様はとてもやさしい。
その優しさを10分の1でも隣で足が痺れて立てなくなっている自分の夫にも向けてほしいけれど…
「……アナッサ、助けてくれ。足が…」
「あら、ご自分が仕事を押し付けるからじゃない。自業自得よ」
「いてて。……クーラ、見てないで立ち上がるのを手伝ってくれないか?」
「あらあら、それは自分が悪いでしょう。お義父様が可哀想だわ。引退しても息子から仕事を押し付けられるなんて」
「ねえねえ、キリグ。この国って尻に敷かれる夫が多いのかな?それともこの二組限定?」
「それはないんじゃないか?歴代皇帝は全員そうだったみたいだぜ。あとヴィジラン公爵家でもよく妻に怒られる党首が確認されてるぞ」
「じゃあ、貴族限定ってこと?でもブリシオ叔父様はそんなことなかった気がするのだけど」
「あそこは恋愛婚だと公表こそしているものの皇族としての血を濃くするためにブリシオ公爵が考えたことだと言われている。愛の結婚であれば尻に敷かれること自体がないらしい。だけど、本当に好きな相手であれば尻に敷かれるのが気持ちよくなると言っている」
「ドMじゃん」
でもまあ、二組ともまだラブラブなようでよかったですね!私は所詮彼氏いない歴=年齢ですよ!
「ドMってなんだ?」
「殴るのが好きなのか、殴られるのが好きか、ね。簡単に言うと…」
「ナギ様。えっと、殴られるのが好きな人っているんですか?」
「あの二人がいい例よ。なんだかんだ言って頬が緩みまくって笑みをうかべているでしょ」
「……気持ち悪いですね」
「世の中、そんなものよ」
「ちなみに殴るのが好きな人はドSと呼ばれるんだよ!私も昔、SかMかの診断をやったことがある…」
「どっちだったんだ?」
「黙秘権を行使させていただきます」
「なんだ、それ?」
「黙秘権を行使させていただきます」
「キリグ君、こういう流れで黙秘権を行使するってことはMってことなのよ」
「…お前、殴られたいのか?」
キリグが拳を作って見せる。
「絶対イヤだよ!むぅ、ナギ様はどうでしたか?」
「あら、もちろんSよ!」
「キリグはどうなんでしょう?」
「見た限り、半々というところかしら?SにもなりえるしMにもなりえると思うわ。甚振られたい時と甚振りたい時があるって感じね。通称ドNよ」
「なんですか?その中途半端な感じ!イヤですよ!」
「そう?完全なMよりかはいいと思うよ?」
ないものねだりはよくないよね。
「あの…、陛下?大丈夫ですか?」
そんな会話をしていると扉からもう一度声がかかった。そういえばご飯の時間だったね。逃がすなんてありえない。良かった、良かった。
「バシレウス、誰かを待たせているみたいよ。返事をしてあげなさい」
「…大丈夫だ。食事は皆で取る。ここに運んでくれ」
お父様がまだ痺れている足で何とか立ち上がる。
「かしこまりました」
「ナギ様、うちの父さ…父上と母上はSかMどちらでしょう?」
「そうね…。トリスタン公爵はどう考えてもMよね」
「ばあやはS寄りのNじゃない?」
「まあ、母さんは結構優しいからな」
「確かに…」
涙目になりかけたトリスタン公爵を助けているばあやがいる。
「でも、お母様はお父様に優しくなくても私には優しいからね!」
「それもそうだな。アナッサ様は厳しくはあるけれど優しいアメと鞭を使い分けることができる方だからな」
「うふふ、うちのお母様はすごいでしょ!」
「あら、何の話をしているの、かぐや?」
「お母様の自慢をしてたの!優しいお母様だって」
「厳しくしてほしいならしてもいいけれど?」
「遠慮します…」
「失礼します。お食事をお持ちいたしました」
いいにおいが漂ってくる。やっと、お昼ご飯だ!
皆さんはMですか?Sですか?私はSでしたね…。




