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真昼の月と背伸び

作者: 菜の花
掲載日:2026/02/03


背が伸びた君に

置いていかれてしまうと

僕も一緒に踵を浮かせた

つま先立ちで君に対抗する


君のほうが少しだけ

ほんの少しだけ大きかった

夢の希望もこれから先のことも

僕は隣に並べるくらい

大きな夢なんかなかった


君の隣にいたい

君の隣で

君の笑顔を見ていたい

それだけで

君の横顔を見るのは

駄目だったみたいだ


君は青空を見上げた

白い月が浮かんでいた

昼には不似合いの満月は

いつもそこにいることを

誰にも気づいてもらえないのだろうか


(僕もそうだよ。)


君に追いつけそうにないのに

つま先立ちのまま

踵を浮かせたまま

君の後ろをついていく


隣に並びたくて

急いで足を動かしても

つま先立ちじゃあ

ちっとも速く歩けない

背の高い君は

走って先を行ってしまうから


(待って、待って。)


声に出せない

声には出さない

君の足を引っ張るなんて

僕にはできない


足の指は赤く腫れた

血は出なかったけれど

ずっと背伸びをしていたから

傷ついてしまったみたいだ


僕は走るのをやめた

追い続けるのは君のまま

隣に並ぶのはもうやめにした


いくら君の隣に並べたからって

痛い足じゃ上手く笑えそうにないから


真昼の月もきっとそう

太陽にはなれないけれど

誰にも気づいてもらえないけれど

ただそこに存在して

僕の背中を撫でてくれる


世界が暗くなったら

またつま先立ちをして

君がどこにいるのか見てみよう


君は笑っているだろうか

幸せだろうか


僕が夜に

呑み込まれそうになったら

名前を呼んで

振り返ってもらおう

ご覧いただきありがとうございました。


君の背中を追いかけて。


誰かに届きますように。


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