08 奇襲
代理戦の開始の合図が鳴る。
それと同時にフィールドに仕込まれた仕掛けが起動する。
砂漠から、森から、基地からミサイルが雨のように飛び出し、
機体が配置された箇所に襲い掛かる。
完全な不意打ちで協定違反だ。
本来なら代理戦は、指定されたフィールドで
互いに用意した機体のみで戦闘を行う事を協定ルールとしている。
公平性を保つ為でも。
違反すれば、それはもう代理戦ではなく、力比べ…いや戦争になる。
それを回避するための代理戦だ。
それをいきなり破って見せた。
向こうは、勝ってしまえば何とでもなる、
と考えていてやることに手段を選んでいない。
ガキの考えである。
だが、たとえガキの考えでもそれが権力という名のおもちゃを得れば話は変わる。
これは、ガキが愉悦に浸り、弱者を蹂躙するイジメなのだ。
そして、力を持ったものはそのペラペラなプライドがあるゆえに引かない。
面倒極まりない事である。
着弾するたびに地響きと爆炎が上がる。
連続で上がる炎は、北側の対戦相手を蹂躙する。
戦いの狼煙が上がり、その狼煙は理不尽の名の元に
相手を焼く尽くす。
…ハズだった。
北側の上層部は、勝利を確信していた。
圧倒的な物量、そして自分たちの支配地域でやりたい放題。
どんな手を使っても勝てばいいのだ。
勝てば全てをもみ消せる、甘い考えだがそれが世界の法則でもある。
知恵を付けようが、理性を持とうが、暴力の名の元に全ては灰塵にされる。
それに抗えるものがいなければ…
絨毯爆撃が終わり、静けさが戻る。
完全な協定違反、それも勝ってしまえばどうとでもなる。
その甘い考えは、露と消える。
巻き上げられた煙の中から光が現れる。
その光は、今ねじ伏せたはずの相手の機体たち。
その最前列には、人型機が両腕につけられた不似合いな円筒形ガントレットを
ボクサーのガードのように構えていた。
その円筒形の筒から発せられる光は、人型機の仲間の機体を囲み、守っていたのだ。
シールド展開していたのだ。
強力なものだ、圧倒的な火力に耐えれるほどに。
基地側で見ていた北側勢力の上層部は唖然とした。
普通なら敵の基地すらも灰塵と化せるほどの火力をぶち込んだのだ。
それでも相手は、それを予測して耐えきったどころか、無傷で現れたのだ。
彼らの予想を超えた状況に慌てる北側上層部。
その隙を逃さず、相手は行動を開始する。
人型機はシールドを解除すると同時に片膝をつく。
機体のあちこちから吹き出る白い煙。
オーバーヒートしかけているのだ。
「てめら、お膳立てはしたんだ。
キチンとお礼をして来いよ!!」
人型機からの通信が味方機に届く。
その瞬間、
航空戦力が、三機飛び立ち、各機から通信が流れる。
「ことなかれ日本人に負けられないね」
中国人男性キム・リーロンが、スロットルを上げる。
「平和ボケにここまでされるとやらないわけにはいかん」
中東人男性ひげ面のモハリド・アードの眼が鋭くなり、
ハンドルを動かし目標を見据える。
「一言余計よ、やることやってから言いなさい」
アメリカ人女性ジャスタ・ホワイトがげきを飛ばす。
三人の目標は、本来の対戦相手がいる空母。
向こうが動き出せていない間に距離を詰める為に空を舞う。
そして、陸戦機も動く。
「毎度思うけど、非常識な事やってくれる相棒だね」
タイ人男性ノムイッカ・ラシタは、いつも組んでいるバディに軽口を飛ばす。
いつも彼の予想を覆すノブテル・ミズマの行動にあきれながらも
頼もしくも感じていた。
陸戦仕様に換装した自身の六本脚機動戦車が軽やかに地面を滑るように走らせる。
そして、後方にはまるで山の様なデカい機体が、緩やかに動き出す。
「ホント困るわ~。ここまでされちゃうと~
きちんとやらないとワガママ言えなくなるじゃないの~」
ロシア人女性チュク・ロイドカンが、重たそうな機体を動かし、
レーダーをチェックする。
隠されている仕掛け兵器に照準を合わせ、
お返しとばかりにミサイルを放つ。
その先には、砂漠に、森に、基地に置かれた兵器をねじ伏せにかかる。
北側は、突然の反撃で反応が遅れる。
相手の中にいた人型機に攻撃を防がれるとは思ってもみなかったのだ。
代理戦において欠陥機ともいわれる人型機。
しかも事前情報では欠陥機で殴るだけ武装を積んだ頭のオカシイ仕様。
その欠陥機に圧倒的な火力を防がれたのだ。
驚きもする。
代理戦は、登録された機体同士の戦いだ。
なのにもかかわらず、関係ない軍が攻撃したのだ。
本来、手出ししてはいけないのに手を出した。
相手側に正当防衛が成り立つ上に協定違反もある。
その上、相手からすれば、脅威の排除という名目が成り立つからだ。
それも言い訳出来ないくらい派手にぶちかましたのだ。
反撃されて反論できない。
北側戦力の協定違反戦力を蹂躙する。
まだ、使っていない兵器が、爆発によって誘爆し、火の海と化す。
自業自得と言ってしまえばそれで終わりなのだが、
それでもまだそこまでの武器を持ち込んでいたのか、と呆れる程である。
彼らの反応は送れたのだ。
一応、代理戦のパイロットたちは機体に乗り込んでいた。
エンジンもかけていた。
だが、最初の大火力奇襲の事も知っていた。
今、機体に乗り込んでいるのは、代理戦協定委員へのアピールでしかない。
そのあてが外れ、しかも相手側の反撃が始まったため、
慌ててスクランブルをかけたのだ。
事前の報告通り、空母から空戦四機飛び立ち、
陸戦二機が走り出す。
先行した西側の空戦機二機が、北側の空戦機の出鼻をくじく。
最初の奇襲は、北側に分があったのだが反撃を予想していなかった。
なので反撃に対応できなかったのだ。
北側の空戦機が攻撃態勢に入る前に攻撃をしたため撃墜はされなかったものの
ダメージは与えられ、しかも攻撃をよける為に分散することになる。
その為、北側の得意な集団戦が出来なくなったのだ。
西側の二機から奇襲のせいで連携が取れなくなった北側は、
必死に立て直しを図るが、西側の一機が北側の一機を追い回し、残り三機が集まると
それを邪魔するように西側の一機が邪魔をする。
北側は、立て直しを援護するためにまだ残っている仕掛けを起動させるが、
西側の空戦機が戦場を外側から俯瞰で見ていた。
しかもその機体にはドローンポッドを積んでおり索敵を行いながら指示を出していた。
その機体を操るジャスタ・ホワイトは大忙しだ。
自身で見た情報とレーダーの情報、そしてドローンでの索敵。
それを見方の各機に割り振る。
その上、空戦中の仲間の援護ともうひっきりなしだ。
敵が仕掛けた兵器を見つけては、
陸戦機で最大火力を誇る機体を操るチュク・ロイドカンに情報を送る。
彼女は、その情報を元に対象位置をロックオンし、ミサイルを叩き込む。
北側からすれば、味方の援護用に仕掛けた兵器が使用される前に潰される。
もう予想外でしかない。
このやり方をされていては北側の優位が壊され、
彼らの本来考えられた戦術がこなせないでいた。
その状況でチュク・ロイドカンは、機嫌よく吠えていた。
「もっと情報をよこしなさ~い。
きちんと跡も残らないくらい壊してあげるから~
あの子の分なんて残してあげないわよ~」
見た目の美しさとその凶悪な行動のギャップから
チームメイトからも恐れられていた。
「わかってるわよ、それでもこっちも忙しいのよ。
ほら、送るわよ。三か所あるわ。きちんと潰してね」
大慌てのジャスタ・ホワイトが通信を入れると
「任せて~。散々ズルしてくれてるんだもの~。
どうなるか~しつけないとね~」
と、ずれた言い方だが目つきは猛禽類のように獲物を狙うように厳しい。
その行動も苛烈である。
手加減する気がすでに無い。
勿論、ズルをしている北側の責任なのだが、
それを鑑みても相手がかわいそうに思える攻撃である。
大慌てな彼女であるが、一つ思うこともある。
『今回の電撃反攻作戦。
あいつの機体ありきだったんだよね、あれ反則じゃないの?
何でぶん殴ることに特化した機体があれほどのシールドを展開できるのよ。
ホント隠し玉が多すぎんのよ、このチーム。
その指揮すんのタイへンすぎだわ。
皆素直に動いてくれるのはいいけど、行動が早すぎんのよ。
次ぎの情報早くよこせが多すぎるわ。
…でも頼りになるわね、指揮はもうしたくないけど』
と、考えながらも索敵と連絡を繰り返す。
彼女の行動が、北側の仕掛けられた兵器を根こそぎ潰していた。
精神をすり減らしながらも彼女は、作戦をこなしていた。
陸戦ではノムイッカ・ラシタが六脚の高機動戦車で、
相手の二機の陸戦機をかく乱していた。
そして、ノブテル・ミズマの人型機は、
最初にシールドを展開していた場所で膝をついていた。
彼の機体は、大規模なシールドを展開したことで機体の負荷が大きく、
また出力が大きすぎたため、チャージの時間が必要となり、動けずにいた。
これは、チームメイトとの打ち合わせ通りなのだ。
空戦機一機がドローンポッドを使い、
隠し兵器の場所を索敵し、陸戦機一機が潰して回る。
そして、
空戦は四対二でかく乱し、
陸戦は二対一でかく乱する。
これは、ノブテル・ミズマの人型機が動けないことを隠すためでもある。
その上で、ジャスタ・ホワイトが相手の隠された仕掛けを探し出し、
チュク・ロイドカンがそれを潰して回る。
それも数があまりにも多いため対処でてんやわんやになっている。
ノブテル・ミズマの人型機が復帰するまでに10分。
彼が復帰すれば、攻勢に転じれる。
それまでの間、彼が動けないことを悟られてはならないのだ。
実際の話し北側勢力はそれどころではない。
予定していた初撃完封がとん挫し、
その上隠していた仕掛け兵器が次々と破壊されていく。
更に、本来の代理戦のチームは、翻弄されていて、
代理戦協定委員会から苦言が入りその対応に追われていた。
最初の飽和攻撃で全てが終わり、後はごまかすだけだった…
そのはずが、すべてが狂わされた。
軍事基地を三つ吹き飛ばせるほどの火力で西側のチームを屠る予定が、
向こうの立った一機の機動兵器に阻まれたのだ。
それは、慌てもする。
その上で発生した問題が積載する羽目となったのだ。
その焦りが彼らの眼をくらませていた。
絶賛妄想街道爆走中の妄想族(古い古すぎる)のオッサンです。
お題の奇襲は、二つの意味です。
両勢力に意味の違う奇襲を仕掛けている、ってことです。
分かりにくくてすいません。
しかもメンバーが、ここで登場です。
出番は少ないですが、多くなるかはお約束できません。
それは、私の妄想力次第です。
あしからず。
では、皆様の誤字脱字、感想など、どんとこいです。
まあ、単純に自分では見えないところを見つけてほしい、
ってのが本音ですけどね。




