54 戦略に嵌まる
ワクムスピ:ノムイッカ・ラシタ専用小型機動戦闘機の猛攻は続く。
ネオリア:南側最新機に襲い掛かるワクムスピを抑えることが、南側にはできない。
速さと機動性が、常軌を逸しているその機体は、攻撃をすり抜け
罠を躱す羽毛のようだ。
僅かな攻撃すらもかわす。
ネオリアのクリオネ:小型移動砲台と南側機動兵器、
更には一般機の攻撃や追撃すらも躱して見せる。
本当に人が動かしているのか、と思ってしまうほどに。
更に厄介なのが、ネオリアのクリオネ:小型移動砲台を撃墜する攻撃である。
どうやって撃墜しているのかわからないが、確実に落としてくる。
そして、南側機動兵器や一般機に目もくれず、ネオリアも狙い撃ちにしてくるのだ。
アメノミカゲ:ノブテル・ミズマ専用人型機は、
南側機動兵器が中心に足止めをしている。
アノ高速突撃機相手に戦うには、ネオリア:南側最新機でも大変だ。
なんせ、攻撃が当てられない。移動速度が速いため当たらない。
更に問題は、当たっても効果ない。
機体の装甲が堅いからだ。
人型なのにこうもやりにくい相手とは思いもよらなかったのだ。
両腕を前にしてボクサーのガード様な構えを取りながら、頭を前に飛び回る。
これなら、人型じゃなくてもいいのでは?と思いもする。
まだ、南側機動兵器が相手にしている分まじな状態である。
そして、更に面倒な
足止めすらかなわないワクムスピは、厄介すぎる敵なのだ。
11機いたネオリア:南側最新機もすでに後、5機にまでなっていた。
南側にとっての切り札ともいえる機体が、
こうも落とされては戦線の維持ができなくなる。
南側は、追い詰められていた。
考えている時間はそうない。
考えれば考えるほどに、味方は撃墜されていく。
手段が少なくなるからだ。
悪名高いこの二機を何とかしなければならないのだ。
敵の数は多いが、まだ対処できていた。
ネオリア:南側最新機が健在だからだ。
ネオリアのクリオネ:小型移動砲台が敵の数を減らす。
更に敵戦艦の撃沈にも一役買っていた。
その為か、敵は主戦力である艦隊を使えなくなっていた。
撃沈を恐れて近づいてこない。
ハズなのだが、その優位も崩れつつある。
その状況の中、南側の空母の一つが動きを見せた。
その少し前に別の戦場ではノブテル・ミズマを阻む戦いが行われる。
直線の攻撃力は、アメノミカゲ:ノブテル・ミズマ専用人型機が圧倒している。
南側機動兵器が、立ち向かう。
正面からの攻撃は通用しない。
既に、突破されている。
三対一で相手にもならない。
ならば、数で勝負することになる。
アメノミカゲの前に三機で突撃する南側機動兵器。
けん制しながら正面に立ち、
その後ろから、二機が、大型戦闘機サイズの岩石をけん引していた。
レーダーには映るだろうが、かまわない。
向こうには、戦闘機がいるように仕向ければいいのだ。
いくら攻撃力が高かろうとそれは直線で速く進めてこそだ。
ならば、その速さを奪えばいい。
南側機動兵器を率いる司令官はそう考えたのだ。
所詮は機動兵器。
いくら硬くても、攻撃力が強くてもそれは、高速直線移動があればこそだ。
ならば、その武器を壊せばいいのだ。
『幸い、奴は気づいていない。
ならば、こちらの戦術にはめればいいのだ』
南側機動兵器の一つに乗る司令官は、敵を見据えてそう考えた。
最初の三機がアメノミカゲと激突する。
三機を突き抜けるが、アメノミカゲの速度が一時的に落ちる。
吹き飛ばされた三機は、きりもみしながら煙と火花をまき散らして
爆発四散する。
その後に続く南側機動兵器がけん引する岩石が、
速度の落ちたアメノミカゲに激突する。
岩石は砕けることなくアメノミカゲが突き刺さる。
それを司令官は見逃さず、南側機動兵器の残りが攻撃に入る。
動けず、岩石に突き刺さったアメノミカゲを襲う。
いかに頑丈な機体でも、攻撃が全て通らないわけではない。
背中に乗せた追加武装はそこまで強固ではないからだ。
何発もあちこちからの砲撃により、追加武装は火花を散らし、爆発四散する。
司令官の口元が上がる。
『あの化け物を落としたぞ』
アノ手のつけようのない化け物を止めて、打ち落とせた。
岩石に突き刺さった機体は、火の粉を上げ爆発を続ける。
煙が立ち込める中から、小さな何かが飛び出る。
小さな何かが、付近を飛ぶ南側機動兵器の一つにあたる。
そして、煙の中から大きな何かが飛び出る。
その大きな何かは、ワイヤーを巻き取りながら南側機動兵器に勢いよく向かう。
異形とも思える大きな筒を振りかざし、南側機動兵器の側面に叩き込む。
南側機動兵器はへし折れ、爆発四散する。
その爆発の中、大きな何かは、両腕の大きな筒を構え、
更に背面の甲虫の様な羽を広げる。
「やってくれる、トラの子だったんだぞ。
アノ追加武装」
凶悪な笑みを浮かべるノブテル・ミズマがいた。
忙しなくコンソールをいじりながら、
レーダーを見据え、アメノミカゲの腰に付けられた、アンカーを飛ばす。
飛ばしたアンカーが南側機動兵器の側面に刺さったことを確認すると、
今度は、巻き取りを開始して、アメノミカゲは、南側機動兵器に向かっていく。
右腕を振り上げながら、南側機動兵器に突撃しへし折る。
他の南側機動兵器たちは、アメノミカゲの撃墜に走るが、それ以上に動きが速いため
捕まえきれない。
位置をコロコロと変える相手に照準を合わせきれないでいた。
その間に、宇宙をあちこちに跳ねるゴムボールのように動くアメノミカゲに
南側機動兵器たちは数を減らすことになる。
「バ、バカな。
ナゼ、こんなことができる?
訳が分からない」
その様子を唖然と見る司令官はつぶやく。
先ほどとは違い高速一直線の動きではない。
多方向直線攻撃に変わったのだ。
しかも、緩急が激しい。
方向も予測ができない、その為先ほどと同じ手は使えない。
更に、昆虫の様な羽を広げ、巨大なハンマーを振りかざす化け物である。
勝てるハズの戦いが、いとも簡単に覆されたのだ。
機体に何かが引っかかる音がしたモニターの先に見えるのは、
二つ目の異形の両腕を持つ巨人だった。
「化け物め」
司令官は、そうつぶやき爆炎に包まれた。




