51 砲撃戦
チュク・ロイドカン発案の無茶を絵にかいたような作戦が実行されることになった。
要は、南側最新機を撃墜できれば、軍部の問題はなくなるのだ。
なのでそれを排除しようというもの。
実に簡単にいうものである。
そして、現在艦隊の指揮権は、テノール・フォム・バースピリに移譲されている。
作戦案のない軍部の人間は、明確な作戦のある管理局に一時的とはいえ
作戦の指揮を渡したのだ。
こうでもしないと、艦隊の命令に不具合が出る為、緊急処置である。
もっとも、効果が出なければ、すぐにでも軍部が奪い返すつもりではあるが…。
砲撃して相手を混乱させて、最新鋭機を撃墜して回るという
単純な作戦である。
チュク・ロイドカン曰く
「曲芸機動が~出来るのは~、二人だけじゃない~。
なら~突撃するのは~二人でしょ~」
と悪ぶりもせず満面の笑みを浮かべて言う。
もう二人には反論の余地すらない状況で来るのだ。
カウンセラーである彼女は、チームの私生活の事も知っている。
だから、事情が分かる上での配置が出来るのだ。
ある意味彼女が一番腹黒いと言える。
ジャスタ・ホワイトがエリアの情報を集め、
モハリド・アードはポイントを提示する。
艦隊の各戦艦に指示は通達されるが、みんな半信半疑である。
今までの手痛い負けが込んでいるせいか、及び腰だ。
「早く指定ポイントに砲撃しろ!
あと10分ほどでポイントを変えないといけないんだぞ!
さっさっと撃て!!」
だが、それもお構いなしでモハリド・アードの檄が飛ぶ。
その言葉に触発されたのか、砲手が指定されたポイントに
照準を合わせた戦艦の主砲を撃ち放つ。
砲撃は、うねうねと動きながらも目標の戦艦に直撃する。
その事におどろく砲手と、軍関係者たち。
「続けて撃て!あと5分しかこのポイントは使えないんだぞ!」
モハリド・アードの言葉が飛ぶと、砲手は慌てて次弾を撃つ。
勿論、他の戦艦も同様に。
それが全て目標の戦艦と近くにいた支援艦に命中する。
砲撃を受けた戦艦一隻と支援艦二隻が火花を散らしながら、
爆発四散する。
その戦果に艦橋内で歓声が上がる。
相手の射程外からの攻撃。
しかも空間の状況が荒れていて、砲撃できない現状での戦果である。
だがその歓声のかなオペレータの声が響く。
新たな艦影を確認したのだ。
そうまだ南側新型機は、顕在なのだ。
自分たちに辛酸を味合わせてくれた相手は、まだいる。
惑星の宇宙港から、二隻の艦影を確認する。
空母である。
空母は、戦艦より離れた位置で止まり、14の戦闘機と6機の機動兵器を発進させた。
これからが本番だ、と言わんばかりに、相手の動きが見える。
最新機が14機確認されているがそれだけとは限らない。
つまり、まだ敵は増える可能性があるのだ。
モハリド・アードは次の射撃ポイントの調整に入る。
その前に軍部の指揮官がさらなる砲撃を命令した。
それに合わせ、各艦が砲撃を開始する。
勝手な命令に憤慨するモハリド・アード。
だが、軍部の指揮官は
「このタイミングで叩いてしまえばよいのだ」
「民間人が口を挟むな」
と、聞く耳を持たない。
他の連中もこれを好機と感じ、軍部の指揮官に賛同して攻撃を続けたのだ。
折角、手に入れた突破口を活かしたくてしかたがなかったのだ。
モハリド・アードからすれば、いい迷惑で完全な勇み足だ。
彼は、止めようと躍起になるが、誰も聞いていない。
反撃のチャンスだから、好機だから、今がその時だと思い手を緩めない。
モハリド・アードは舌打ちをする。
攻撃は、当たるがわずかにズレる。
そのズレは、砲撃回数を増やすたびに大きくなる。
そうなると今度は、モハリド・アードに
「早く!次のポイント指定せんか!!」
と軍部の指揮官が躍起になる。
なぜこうなったかも考えずに。
その彼に軍部の人間たちは早くポイントを指定しろとせかす。
彼は、拳を握りしめ、うなだれる。
「もう無理だ。エリアが荒れた。
相手の砲撃があるせいで熱やらプラズマやら更にエリアの状況を荒らしている。
ポイントを指定できても命中率は3割を切ってしまう。
ここからけん制攻撃しかできん」
モハリド・アードが苦虫を噛み潰すように言うと
軍部の人間たちの顔色が変わる。
「できるだろう、もったいぶるな!」
「まだ、狙えるはずだ!」
「奴らが、新型が来る前に何とかしろ!」
などと彼の意見を聞かずにせかす。
それでもいう事を聞かないモハリド・アードに業をにやした
軍部の人間たちは勝手に命令を出し始める。
戦闘機は出させ、各艦に砲撃を続けさせるよう命令する。
もはや、指揮権を委譲していることも忘れ、目先の勝利に固執していた。
管理局の人間の言い分を完全に無視していた。
こうなると止められない。
モハリド・アードと軍部の人間たちの口論が始まった。
テノール・フォム・バースピリは頭を抱えた。
功を焦りすぎた軍部の人間たちは、今までの負けを取り戻そうと躍起になっていた。
だからこそ、想定できたはずなのだが、彼が思うより早く動いたため、
対応に遅れてしまった。
モハリド・アードも義理堅い人間だ。
彼は、いっけん無茶をしているように思えるが、
仲間を危険にさらしたくないだけなのはチュク・ロイドカンのカウンセリングで明確になっている。
チームメンバーの優位な状況を作り出したくて必死なのだ。
だがそれを邪魔されてご立腹である。
このままでは、確実に共倒れだ。
共に勝つという同じ目的のハズなのに。
テノール・フォム・バースピリは考える、『このままではだめだ』と。
そこでチュク・ロイドカンとソプラ・バリトンに指示を出した。
二人は仕方なしと判断し、行動に移す。
まず、キム・リーロンとソプラ・バリトンがオペレーターを交代した。
そして、キム・リーロンがテノール・フォム・バースピリの指示を仰ぐ。
彼は、出された指示を渋々納得し、艦橋を出る。
テノール・フォム・バースピリはソプラ・バリトンの席に来ると
そして、モニターに映る今待機中の二人に声をかけた。
「すまないが前倒しで頼むよ」
と申し訳なさそうに言うと
「仕方ないね」
「やれるだけやるさ」
と、ノブテル・ミズマとノムイッカ・ラシタが返事をした。
「それから例のシステムを使えるなら使ってくれるかい?
君たちなら問題ないと思うけどね」
テノール・フォム・バースピリが言うと
「まだ調整中じゃないの?」
ノムイッカ・ラシタが聞くと
「そうなんだけどね、キム・リーロン君に調整済みのデータを
機体に入れてもらうように頼んだんだよ。
多分今からなら出撃して目的地に着くまでには済むと思うんだけどね」
テノール・フォム・バースピリが苦笑いを浮かべる。
「それも仕方ないね。あのシステムがないと今回は大変そうだしな」
ノブテル・ミズマが答えると
「毎度、すまないね」
「慣れてるよ」
「いつもの事だしね」
二人はそう返してきた。
「では始めようか」
と、テノール・フォム・バースピリが言うと
その言葉に合わせてチームが動き出す。
折角なのでみんな巻き込んでしまえ、って感じにしました。
無理な展開で申し訳ありません。




