50 水掛け論
しばらくして、テノール・フォム・バースピリが危惧した通り
強制徴兵で、彼ら西側代理戦チーム イサナガは、作戦に参加することになった。
勿論、話をするために軍部と合同ミーティングを行った。
見える限りでは軍部の人間はかなり憔悴していた。
内容は、ひどいものだった。
紛争惑星の対処戦は以下の通り。
退去勧告を無視した南側が居座り、実効支配に走ったため
それに西側が動くことになる。
南側の戦力は戦艦x4 支援艦x6
対する
西側の戦力は戦艦x30 支援艦x70
普通に考えれば、排除可能な戦力差である。
南側勢力圏も口出しはしてこない。
居座り戦力は、孤立しているのだが、戦いが始まり現在は、
南側の戦力は戦艦x2 支援艦x5
対する
西側の戦力は戦艦x10 支援艦x20
ボロ負けである。
これも南側最新機の威力である。
南側最新機は確認されているだけで16機。
その内、撃墜したのは2機。
戦艦10隻で南側最新機1機落としたことになる。
南側最新機はまだ14機いる。
それを落とす考えるならあと140隻の戦艦が必要となる。
流石にそれはできない。
いち紛争地帯に導入する戦力ではない。
何とか攻略の糸口が欲しいために、
代理戦とはいえ、南側最新機を3機撃墜したチームに
強制徴兵をかけて仕方がないのかもしれない。
例え、管理局の不評を買っても。
が、軍人ともめていた。
管理局から公開された情報が、彼らの期待した内容ではなかったのだろう。
当然だろう、あんな曲芸機動を一般兵が出来るわけがない。
後は、西側代理戦チーム・イサナガを矢面に出して何とかしようと考える。
だが、それも現実的ではない。
西側代理戦チーム・イサナガここで失えば、もう手立てが無い事になる。
管理局側と軍部側の水掛け論になっていた。
長い口論の中、
手を上げて、声を上げる人間がいた。
「もう~いいかしら~」
チュク・ロイドカンのおっとりした言い方とは裏腹に目は鋭かった。
「なんだ民間人風情が!だまれ!」
と軍部偉いさんの取り巻きの一人が彼女に噛みつく。
「呼び出して~おいて~それはないわ~。
打開手段が~あるのなら言ってほしいんだけど~」
と言われ、言い返せずにいた。
あれば、やっていると言いたげに睨みつけてくる。
「手段があるのかい?」
テノール・フォム・バースピリが、彼女に優しく問いかける。
彼自身もいい加減嫌気がさしてきていた。
呼び出しておいて、なんの対策も無い。
求めるばかりで何もしない…いや出来ないのだろう。
答えだけを求めてくる、これでは話が進まない。
そこに彼女が手を上げた。
ここで手を上げるという事は手段があるのだろうと考えたのだ。
「もちろん、あるわ~」
彼女はそういうと、提案を説明してきた。
方法は、簡単だ。
南側新型機の間合いの外からの攻撃をすればいい、と。
勿論、軍部から不満の声が上がる。
「出来ればやっている」など。
ここは、宇宙線と重量場が荒れているエリアで砲撃がうまく出来ない。
彼女は、それも理解していると言い、その上で
情報検索が得意なジャスタ・ホワイトが、情報を検索し、まとめ
その応報を元にモハリド・アードに狙撃ポイントを指定させ
砲撃するというものだ。
「我々が出来ないのに民間人が出来るか」
「素人の浅知恵だな」と軍部の人間たちは嘲笑してくる。
『なら何故呼んだ?』とチームのメンバーは思う。
呼び出しておいて、なんでその言い草だ、ともいえる。
それは棚上げして、テノール・フォム・バースピリが話を進めるように促す。
元オリンピック金メダリストにして元特務部隊狙撃手のモハリド・アードならば、
問題なく出来ると言う。
その言葉にモハリド・アードは顔を手で覆い俯く。
その姿を見たテノール・フォム・バースピリが、
彼に「出来ますか?」とたずねると
「エリアの気象情報があれば、何とかなる」と答えた。
「バカな」「出来るわけがない」と軍部の方々が吠えるが、気にしない。
チュク・ロイドカンは話を続ける。
砲撃を続け、その間にノブテル・ミズマとノムイッカ・ラシタが突貫を仕掛け、
南側最新機の撃墜を図る。
その間の情報はチュク・ロイドカンとキム・リーロンが請け負うというもの。
「そんなバカな作戦が出来るわけがない」
「ばかげている」と軍部側は言い始めるが、
テノール・フォム・バースピリが「では、何か提案できるのですか?」の一言で
黙り込む。
元々打開案があれば、呼び出されたりしない代理戦チームに
打開されるのが気に入らないだけなのだ。
子供理屈である。
軍部から別案が出ないことでテノール・フォム・バースピリがこの作戦を
押し通した。
結果、代理戦チームが仕切ることになり、軍部は仕方なしに協力することになったのだ。
言葉は難しいですね。
例えどれだけ親身になって説明しても、相手に聞く気が無ければ伝わらない。
理解しようとしてくれなければ伝わらない。
お互いが、それぞれ謙虚な姿勢でいなければ、いけない。
だからこそ、難しいんですよね。
最近特にそう感じてしまいます。




