42 不満の矛先
彼らの以外にも代理戦のチームはある。
南側との代理戦で勝ち星がない。
引き分けが多い。
西側からすれば鬼門でもあるのだ。
これは東側も同じである。
戦い方が根本的に違いすぎるのだ。
その状況でノブテル・ミズマたちに依頼が来る。
次の対戦相手は、南側である。
敗戦から数日後、ソプラ・バリトンからノブテル・ミズマに連絡が入る。
代理戦の打ち合わせの為、来てほしいと。
彼は、その連絡に従い、向かう。
彼がミーティングルームに入るとそこには、
見慣れた二人の姿があった。
軽薄、底抜け明るいタイ人のノムイッカ・ラシタ
慎重、くそ真面目アメリカ人のジャスタ・ホワイト
である。
ノブテル・ミズマから見ればそう見えていた。
容赦などしない、して後で後悔したくないからだそうだ。
判断を誤ることを異常に気にしている彼らしい考えだ。
ノブテル・ミズマに気づいた二人は、
「めずらしく遅いじゃないの、どこで遊んでたんだ」
「電車に乗ってたんだ、遅くもなるだろうが」
「なに真面目に社会人してるのよ、ウソつき日本人」
「誰が嘘つきだ、他の言い方知らんのか」
と、じゃれてきた。
その後もじゃれ合いは続く。
その中に彼女が…ソプラ・バリトンが入る。
「いい加減にしてください、ブリーフィングは始めますよ」
彼女は、そういうと今回の代理戦を説明する。
今回の案件は、西側エリアでの紛争惑星に南側が軍事介入した件である。
本来なら西側で対処する案件であるのに、南側が勝手に乗り込んできたのだ。
南側の言い分は「神の名の元に信者を援護して何が悪い」との事だ。
西側からすれば、意味が分からない。
だが、彼らはそれが正しいと言って引かない。
代理戦でかけられる権利は、
西側は紛争惑星へ介入禁止と軍事介入による被害請求。
南側は紛争惑星へ介入の正当性と対象惑星の南側編入である。
これに対してすでに決定事項なので文句は出ないが…
「これっさ、仕組まれたことなのかね」
ノムイッカ・ラシタが言うと
「そうなります。南側の最大勢力の輝聖教が絡んでます。
あそこは、宗教共同体である南側で他の宗教を異教、邪教と言っては
宗教紛争を起こすことで有名です。
その彼らが、西側で勝手に布教活動して、今回惑星で宗教紛争を起こしました。
勿論、証拠もあります。
ですが…」
「なるほどね、神の思し召しとか言って話にもならないってところか」
ノブテル・ミズマはため息を吐き、冷たく回答して見せる。
「その通りです。
神の名の元にを連発して、自分たちの勢力圏で混乱を起こしています。
北側が平等の名の元に独裁政治したのに対し、
南側は宗教の名の元に正義を振りかざしています」
ソプラ・バリトンは静かに淡々という。
「面倒ね、政治に宗教が絡むと何でも神の名の元にで済ますもの。
それが間違っていても非人道的であっても」
ジャスタ・ホワイトは寂しそうな目をしながら俯く。
「はい。ですが今回は代理戦に持ち込めました。
南側は、代理戦になかなか持ち込めません。
神の名の元にで済ませます。
勢力圏協定で抑え込んだ、と言うのが正しい答えになりますが、
代理戦の結果次第では西側勢力圏が荒れます。
ココでの勝ち星は譲れないのです」
冷静を装い気丈にふるまう彼女には覚悟が垣間見える。
「気負わなくてもいいだろ。
ようはいつも通りにやればいいんだろ」
「そうだね、それ以上にオレたちが勝った後が大変そうだけど…」
「そうよね、政治なんかわからないしね。やれることをやるだけだわ」
三者三様に答えを述べる。
「ありがとうございます。
それに悲観したものでもありません。
輝聖教も内戦をやりすぎたせいで、勢力が激減しています。
南側では輝聖教以外の宗教団体が纏まって政教分離を目指しているそうです。
どこまで信頼できるかわかりませんが、
輝聖教を叩くという意味では一致しています」
「なるほど、自分たちの所でやりすぎたから新しい住処を探しているわけか」
「迷惑なだけだな、さんざんあちこちで問題起こしておいて逃げてきたわけか」
「ホントね。
神様を勝手に都合よく使っておいて、
責任から逃げてきた代償を支払えないなんて。
バカじゃないの」
「そう言わないでください。
今回だって、なんてバカなことで戦争しようとしてるかって思いますよ。
仕掛けるのは、いつだって権力者たちの見栄で
そのペラペラな内容の無い行違いで何人もの人の運命が変わるのなんて。
でも、私たちの戦いはその抑止力です。
権力者たちの行違いで運命が変わる人たちを守る為の戦いです。
意味のある戦いです」
と、両手お前に軽くガッツポーズを取る形で熱く語るソプラ・バリトン。
三人はその勢いに押され、あっけにとられる。
「なんか、一番ディスってんの。ソプラちゃんじゃないの」
「普段矢面に立ってるんだものね」
「うっぷん爆発だな」
と三人にからかわれ慌てるソプラ・バリトンは困っていた。
ネタに大困りです。
敵のネタには困りませんが、どう切り抜けるか。
対処するかが、やはり難しい。
表現もつなぎ方も勢いだけではだめですね。
改めて感じました。




