33 心配と足止め
補給中のノムイッカ・ラシタは、コーヒー片手に一息ついていた。
今回の戦闘は、結構辛いと感じていた。
そこにソプラ・バリトンがやってくる。
彼女の顔は、お冠のようだ。
「な・ん・で!ノブテルは帰ってきてないんですか!」
怒気がにじむ言い分に
『オレに言ってもね……』
と言いたいがその言葉を飲み込んだ。
今言えば確実に火にガソリンをぶち込むことになる。
そう思ったのだ。
「現在テンション縛上がりのノブ(ノブテル・ミズマの愛称)に言ってもね。
北側さんはやりすぎたんだよ、完全に。
その状態でオレにたずなを上手く使えるかわかるでしょうが?」
「そ、それはそうですが…」
しょぼくれるソプラ・バリトンを見て、
「もうしようがないな、補給済んだらあのバカを追いかけるよ。
それで納得してよ」
頭を掻きながらノムイッカ・ラシタが言うと
「すいません…お願いします」
「それより、いい加減くっつけば?
早めにソプラちゃんが告白しないとジャスタにとられちゃうよ」
とからかう
「あの人も大概だと思いますけど…」
ジト目で見つめられ
「そうかもね。キミら二人とも同類みたいだし、進展しないか。
ノブ(ノブテル・ミズマの愛称)のやつも面倒くさいって言いそうだ」
「確かに言いそうですね」
少し彼女の雰囲気が和らいだ。
それを見て安心したのか、ノムイッカ・ラシタは動き出す。
「とりあえず、あの突撃バカのおもりに戻るわ。
アイツ、確実に今敵本陣に向かってるだろうし…」
「そうでしょうね、元気に向かってそうですね……」
諦めた顔で彼女は答えた。
普段冷静なくせに不満がたまると、何故ああも突撃したがるのか…
人型機は進軍していた。
「DON、姿勢制御を優先に調整してくれよ」
遠距離攻撃を器用に避けながらノブテル・ミズマは指示を出す。
「ok、サー」
AIが解答すると
コックピット内にアラームが鳴る。
「サー。
敵の遠距離攻撃が続いていますが、けん制だと思われます。
その為、敵陣営より複数の機体を確認しました」
「へえ、相手が一機だと元気だよね」
ノブテル・ミズマは小さくつぶやく。
そして、不審に感じた。
遠距離攻撃が単調すぎると感じたのだ。
確かに、けん制ならそれでいいかもしれない。
味方にあたらないから。
だが、相手は一機だ。
わざわざけん制する必要があるのか?
しかもミサイルが無い。
数が少ない相手なら自動追尾型ミサイルで済む話だ。
砲撃をする意味がない。
その疑問に答えは出ない。
その辺りは、割り切って突撃している。
やはり移動速度は、相手が上で会敵するのはどうしても敵陣営の手前になる。
相手の動きが速く、遠距離攻撃をされると人型機は攻撃手段がない。
なんせ完全な接近戦仕様なので本当に手が出ない。
高機動型からの攻撃は鬼門となる。
そして、それは現実のものとなる。
戦艦からの重粒子砲撃が人型機に迫る。
直撃コースだ。
だが、人型機は迫る重粒子ビームを左腕のハンマーでぶん殴る。
殴られた重粒子ビームは、光の粒に分かれ、雨のように周囲に振りまかれる。
光の粒は、岩石に降り注いだり、北側小型機に降り注がれる。
更に人型機に重粒子ビームが迫る。
今度は右腕のハンマーでぶん殴る。
殴られた重粒子ビームは、光の粒に分かれる。
「あと何回ぐらい殴れる」
ノブテル・ミズマの質問に
「サー。左右合わせて十二回が限度です。
粒子シールドはそこまでなら持ちますが、
粒子シールドが切れた場合は、左右合わせて四回までなら持つと思います。
圧縮リレフメタルの耐熱ならば、
重粒子ビームの熱量ならば連続片側二回までは持つはずです。
但し、冷却が出来るのであれば、問題はないです」
AIは冷静に答えた。
「なら、後どのくらい連続で重粒子ビームが来ると予測できる?」
「サー。戦艦は三隻、主砲は一隻につき四門なので十二回連続で来ると予想できます。
ただ、射線の調整に時間がかかる為と砲身の冷却の為、
連続で攻撃できるのは一門につき三回が限度と思われます」
「なら次を殴れば、即移動する」
ノブテル・ミズマが言うと
「ok、サー。出力調整に入ります」
人型機は三発目を殴ると、すぐさま移動を開始した。
次の重粒子ビームが来る前に逃げなければ、
また三発殴りとしないと動けなくなり、連続攻撃が続けば、
いかに頑丈な機体でも熱を溜め込んで融解してしまう。
北側小型機は人型機が逃げるのを邪魔しようと動き出すが、
殴られた重粒子ビームは、光の粒が北側小型機を襲う。
光の粒は、北側小型機のシールドを突き抜け機体を溶かし爆発四散する。
何機かが撃沈されてしまう為、動きが取れなくなり、戸惑いが出る。
そのタイミングで北側小型機に人型機のハンマーが突き刺さる。
小型機は、人型機を戦艦の射線上に追い込まないといけないのだが、
撒き散らされる重粒子ビームの粒を避けないといけないので
思うように動けないでいる。
追い込み役の小型機たちが上手く動けないことを利用して
戦艦の射線から人型機は離れた。
小型機たちは、撒き散らされる重粒子ビームの粒がなくなったので
あらためて追い込みにかかる。
いくら防御力に長けていても攻撃の衝撃は緩和できない。
要は吹き飛ばされて移動させられるのだ。
動きが取れない状況で押し込まれればさすがの防御力でもどうしようもない。
「くう~、速いし、遠いし、上手くやりやがる」
ノブテル・ミズマが、苦虫を噛み潰したような顔をする。
接近戦では無類の強さを誇る人型機であっても
相手はその土俵に上がらなければ何もできない。
「サー、今からでも補給を推奨します。
射撃戦の兵装が少なすぎます」
AIが提案してくる。
それに対してノブテル・ミズマは、
「そうかもしれないが…断る。
この状況で補給艦まで逃げれば、敵を連れ込むことになるからな。
せめて向こうが逃げてくれれば何とでもなるんだが…」
と強く言った。
「ok、サー。状況を理解しました。
レーダーに反応です。味方機を確認しました」
AIは返事をした。
「味方機?こっちに向かっているのか」
「サー。向かってきています。
数一です。
ノムイッカ・ラシタ機と思われます」
「ああ、もう相変わらず無茶ばかりする」
ノムイッカ・ラシタは、悪態をついていた。
相棒であるノブテル・ミズマは、突撃が大好きである。
その為か兵装は接近戦仕様で、射撃戦兵装をあまりつけない。
その為かノムイッカ・ラシタが中遠距離戦、
ノブテル・ミズマが接近戦と分けて戦う。
変に頑固な相棒を頼もしくも思い、また呆れもしていた。
ノブテル・ミズマの周囲を囲む敵小型機を蹴散らしながら。
相手のシールドに阻まれ、攻撃があまり通らない。
代理戦機なら多少のダメージも通るのだろうが、
軍用機だとそうもいかない。
SJ弾もそう数がない。
手持ちはあと一発、残りは、チュク・ロイドカンがもっている。
向こうには、手がかかるのが二人も居るのでしかたないのだが…。
せめて向こうの四人が戦艦を攻撃してくれると
楽なのだが、そうもいかない。
戦艦は防御も硬いし、何より戦闘機の火力では潰しにくい。
一番の可能性があるのは、ここで足止めを食らっている人型機だ。
なぜ戦艦のシールドをものともしないどころか、
装甲も吹き飛ばしている。
既に戦艦三隻を沈めている。
なら、この状況を片づけてこの人型機を戦艦に投げつければいい。
それで隠れている北側代理戦機だって引っ張り出せるだろう。
彼の思惑通りになれば、ここで足止めしている連中を潰せばいいだけだ。
なんせ彼が補給艦を出撃したタイミングで残りの四人が補給艦に来ていたからだ。
補給とわずかな休息を済ませれば、四人中三人は血の気が多い。
すぐに出てくるだろう、と目算も立てられる。
分かりやすい性格のチームメンバーでよかったと思う瞬間である。
ここで北側代理戦機に逃げられると、面倒事しか浮かばない。
なので、ここで決着をつけたいのだ。
なのでこのチームの最大質量兵器をぶつけたいのだ。
邪魔な小型機はここで退場させてしまおうと意気込む。
だが軍用シールドは、代理戦機のシールドより強力なため
突破できていないのが現状である。
ミサイルくらいじゃ牽制にしかならない。
重粒子砲ならまだ何とかなる。
その為のわずかな時間がない。
火力が足りないのだ。
敵の数が多い、SJ弾を使うにしてもせめて三発ないと
戦闘エリアにバラまけない。
不利なのは変わらない。
流石のノムイッカ・ラシタも困っていた。
ああ、何かせねば、考えなければ
やりたい放題するつもりが、なぜか違う方向へ
悩み多きオッサンになってしまいました。
妄想族のオッサンは
現在、妄想街道徐行中です。
爆走はできません。
それどころか一時停止も多いですね。
進みません。
落とし物も増えて気ばかりです。
拾いきれません、道路清掃会社に迷惑ばかりです。
申し訳ございません。
では、改めて
誤字脱字、感想など、どんと来いです。
まあ、単純に自分では見えないところを見つけてほしい、
ってのが本音というか、情けない限りです。




