28 裏技
その頃、ノブテル・ミズマとノムイッカ・ラシタは、右側から左側へと
移動していた。
そこは、岩石帯でもあり障害物が多く、隠密で移動するには適していた。
そんな中で彼らに向けてビーコンを出している戦艦が視界に入る。
こんなところに、と不信感があるが識別コードは確かに西側のものあることは、
間違いない。
だが、それも罠の可能性もある。
確認の意味もあるので通信を入れると
思いもよらない人間の声が返ってきた。
ソプラ・バリトンだ。
彼女は代理戦の裏方の立ち位置だ。
こんな前線に来る立場ではない。
情報収集と報告やら補給やら完全な事務方だ。
何故ここに居るかを確認したかったが、その前に着艦を進められた。
北側に位置を悟られたくないことと補給をしたいそうだ。
二人は知らさえていないことに驚きもしたが、その話に従うことにした。
武器弾薬や燃料にも不安が残る上に
信用できる人間の行為を無碍にしたくないからだ。
彼らは、彼女に従い戦艦に着艦する。
着艦した彼らの機体は固定され、慌ただしく整備員たちが動き出す。
彼らは、機体から降りると誘導され待機室に移動する。
待機室は、パイロットの出撃前や休憩に使われる準備室だ。
そこにソプラ・バリトンが入ってきた。
そこで彼女から説明を受ける。
話は簡単だ。
協定違反を盛大にやらかした北側に対してのけん制の為、
北側にばれない程度の戦力を投入し、西側のバックアップに回る。
これは協定員会で了承されているとのことである。
大々的にやると戦争に発展するので、そこは穏便にすることになる。
引きことを知らない北側に対する処置だ。
彼らの無駄なプライドのせいでこんな手間をかける事になったのだ。
ペラペラなプライドと大国の威信を見せつけておきたいのだろう。
内外的に。
彼らはしばしの休息の機会を得た。
ノムイッカ・ラシタなどはすでに仮眠に入っていた。無重力の中で浮かんでいた。
その横で、ノブテル・ミズマは自分の機体に視線を向けていた。
ソプラ・バリトンはその彼に改めて問うていた。
何で人型なのか?人型なのにマニュピレーターを付けないのか?
答えは、変わらない。
相手をぶん殴りたいから人型でマニュピレーターを付けないのは、
殴ると壊れることが確定の部分は不要なのだという事。
銃火器だって機体の指を使わなくてもコックピットで使えるのに意味がないと。
そもそも銃火器なんて使わないからさらに意味がないと。
彼の実力を知っているソプラ・バリトンからすれば惜しいとしか言えないのだ。
彼は、機体制御と射撃の腕前は、歴代の代理戦担当者たちから見ても群を抜いている。
それだけじゃない西側の正規軍でも彼に追随できる者が何人いるかわからないほどの
実力者だ。
なのに、機体は欠陥機の名がつく人型機。
まあ、彼の機体制御能力があれば問題も無いのだが、それでも惜しい能力なのだ。
それをわざわざ危険な接近戦を好む。
そのくせ変な所で合理的なのだ。
まあ、接近戦の出来る機体なので文句が言えないのだが…
北側の演習軍のすべてはさすがに投入していない。
全体の約七割はすでに帰還しており、残った三割の内一割のみ投入しているのだ。
これでも相当な違反ではあるが…
現在、その半分が撃退されている。
わずか六機相手にこれはもうプライド云々の話しでは済まない。
北側の威信にかかわる問題になる。
なら普通に代理戦をすればよかったという話になる。
それをしなかったのだ自業自得ともいえる。
なのでこれ以上の軍の投入はさすがに難しい。
権力者側からしても出来ないようだ。
ただ、これで失敗すると失脚の恐れもあるので必死ではあるが…
メンテナンスが終了した機体を見て呆れるソプラ・バリトン。
個性が出すぎている。
ノムイッカ・ラシタは高速機動戦を意識して、ミサイルコンテナは少なめである。
一般的な仕様と思われる。
問題は、ノブテル・ミズマの機体である、背中と正面につけられているブースターと
火器はいいとして、両腕につけられているごつい武器が問題だ。
左腕に杭打機が二つ、右腕に大きな円盤が幾つも並んでおり、撃ち出す砲身までついている。
リングシューターと呼ばれる武器である。
確かに射撃戦用なのだが、質量兵器でもある。
しかも見た目がごつい。
いっそレールガンの方がましに見える。
でも、その接近戦特化が、今の状況を打破していた。
そして、もう一つ彼らに伝えないといけないことがった。
本当はこちらが優先順位が高いはずだったのだが、これは後付け感の強い内容だ。
それを伝えた。
それは、なんと協定委員会に打診された意外な所からだ。
北側からなのだ、それも今バカなことをやらかしている強硬派ではなく穏健派だ。
彼らが無理にプライドを守る為だけに行動しているのに対し、
穏健派は、国を国民を守るために行動している。
その為、強硬派から疎まれている勢力だ。
しかし、強硬派がやりすぎたため、穏健派が静かに動いていることに
気づいてもいなかった。
穏健派は、無駄にケンカを売りまくり騒動を起こすだけの彼らを排除しようと
動き出していた。
今回の件で彼らを潰そうと考えたのだ。
そこで協定委員会に打診した。
つまり、バカな連中を潰したいから手貸してほしいとのことだ。
これに協定委員会どころか各勢力圏が、協力することになった。
戦争しても良い事はない。
勝っても負けても廃墟と焼け野原しか残らない。
手に入るのは、空しい空虚な空しさだけ。
負ければ憎しみが残り、勝てば悲しみが残る。
戦争に意味なんかない、ただの権力者の自己満足だ。
戦争から帰った者たちは心病み、勝利の喜びなんかない。
それを防ぐための代理戦争だ。
それを意味の無い物にしようとする行為は、
認められないのだ。
だから、潰す対象となったのだ。
つまり、彼らに意地でも勝てと言っているのだ。
その為なら、裏工作でも汚い事でも目をつむる。
と、了承ももらっていると伝えた。
この言葉は、今までやられたい放題の彼らには追い風となった。
その後、彼女は、他のメンバーにも補給とこの話を伝える予定だと言った。
その言葉に
「ok、ならもう無茶やっても問題ないな」
ノブテル・ミズマは、覚悟を決めた。
そして
「なんだ、なら加減しなくていいわけだ。
助かるね」
ノムイッカ・ラシタは相変わらずの軽い口調だ。
でも、心なしか気持ちに踏ん切りがついたようだ。
二人は、意気揚々と機体に乗り込む。
目標は、後二機。
そして、目の前にいるのは、ペラペラなプライドを守ろうとするおバカさんたち。
都合のいい正論を掲げ続ける者たちである。
それを倒せばいい。
なんてわかりやすいと、思える。
裏技とかは楽できますが嫌ですね。
自分の力にならないから、なりにくいからでしょうか。
考え方が古いんでしょうかね。
まあ、オッサンですしね。
妄想族のオッサンは
現在、妄想街道徐行中です。
爆走はできません。
それどころか一時停止も多いですね。
進みません。
落とし物も増えて気ばかりです。
申し訳ございません。
では、改めて
誤字脱字、感想など、どんと来いです。
まあ、単純に自分では見えないところを見つけてほしい、
ってのが本音というか、情けない限りです。




