22 捕り物
怪しい黒ずくめの人間四名は、二人を囲むように立ち、
こちらを見ていた。
「で、オレを狙った本当の理湯を聞こうか」
ノブテル・ミズマは、静かにたずねた。
眼は細めていたが、警戒はしている。
戦場を経験しているせいか落ち着いていた。
横に座る女性は、驚いていた。
打ち合わせとまったく違うからだ。
何が起きているのか理解が間に合っていない。
「なるほど、割と頭が切れる。
上層部が危険視するわけだ」
黒ずくめの男性は、感心するように相づちを打つ。
「答えてくれないのか?逃げ場もきちんと奪っておいて?」
「そうだな、答えよう。
資源群争奪戦で邪魔されたためだよ。
アレは、ウチの陣営に痛手を与えすぎた。
アンタをこのままにしておくとさらによろしくないことが続く。
ここで止めないといけないと判断したんだ」
キチンと答えた。
逃げれないから答えてやるくらい安いものだ、とでも思っているのだろう。
「なるほど、ここでオレと彼女をまとめて処分して
暴漢に襲われたことにしようという腹か。
彼女きれいだし、オレが守るという筋書きかな?」
ノブテル・ミズマは冷静に慌てることなくいうと
「いいね、よくわかっている。
その通りだ、こんな辺境でも法律や司法がある。
それを上手くごまかすためだよ。
脱北者は我々の裏切り者でもあるしな、
まとめて処分してしまおうという考えだよ」
黒ずくめの男性は、自分たちが優位な状況にある為、
よくしゃべる。
「じゃあ、もう一つだけいいか」
「良いですよ、最後のお願いですからね」
「この子の妹も工作員なのか?」
その言葉に
「すごいね、よくわかったわね。
そうよ、私はもともと諜報員なの。
脱北者を探し出して処分するのが役目なのよ」
黒ずくめの女性が、マスクを脱ぎ答えた。
その姿に言葉を失う姉に
「姉さん、今までありがとうね。
この星に逃げ込んだ裏切り者たちの処分はアナタで終わるの。
西側代理戦エースも潰せるから役に立ったわ」
見下すような目で彼女をみた。
言葉を失い涙する姉。
「ok、これで聞きたいことは聞けた。
オレからは、アンタらにもう用はないね」
というと黒ずくめの北側工作員の後ろから
スーツ姿の男女が複数人現れ、工作員たちを無力化する。
先ほどまで優位に立っていて油断していた彼らは、
テーザーガンで抵抗する間もなく拘束された。
まさに油断大敵である。
工作員たちが拘束された後、ノブテル・ミズマの良く知った顔の女性が現れる。
「すいませんノブテル。協力までしてもらって」
ソプラ・バリトンが申し訳の無い顔で二人の前に立っていた。
何故、こういうことになったのか、
ノブテル・ミズマが電車に乗った時には、
すでにメールでソプラ・バリトンに連絡を入れていた。
そのメールを受けた彼女は、すぐさま局長に相談し、
局長は、自身の権限で特務命令を発令し、西側の諜報工作部隊を動かし、
地球に向かわせた。
ノブテル・ミズマは
居酒屋にいたときトイレにいったときにさらに状況報告の連絡を入れていたのだ。
その後、連絡を受けたソプラ・バリトンは急いで行動し、彼が時間を作る間に
彼が指定した場所の周囲を監視していた。
北側工作員が待ち伏せをしている間に彼らの見張り役を確保し、
拠点を聞き出し、別動班が対処した。
残った班が、ノブテル・ミズマの安全確保に行動した。
つまりは、北側工作員たちは罠にはめたつもりが嵌められたのだ。
これも全て局長の采配なのである。
恐るべきは、局長の行動力である。
「いいさ、こうして面倒事一掃してくれて」
「本来は、こういうことに巻き込むこと自体がまずい事なんですが、
今回は仕方がないです。
こんな辺境まで北側が工作員を送り込んでいること自体が
問題になります。
その事実が明確になりました。
後は腰の重い上層部も動いてくれるはずです」
「そうかい、割と西側は緩いから工作員天国と化しているのかもしれないな」
「言い返せないですね、縄張り争いばかりして必要な事まで手が回らないのが、
実状ですからね。情けない話です」
ソプラ・バリトンとエージェントたちは、工作員を捕縛後連行していった。
勿論、シャルペ・ルメグも同行を求められた。
脅迫されたとはいえ、協力者として行動していたから仕方がない。
その前に彼女は、妹と口論になっていた。
なぜなの?何で?という定番の口論。
妹はもともと潜入工作員として活動するために
脱北という方法を選んだと答えた。
怪しまれず、活動するためだとも言っていた。
そして、妹は姉にコンプレックスを感じており、
今回の作戦は彼女にとって姉を始末できる絶好の機会となった。
先に潜入していた工作員は先に脱北した者たちの暗殺も
作戦の中に組み込まれていたからだ。
その内容にノブテル・ミズマはゲンナリしていた。
共産圏は、独裁になりやすい。
権力を手にした人間が、共産主義の理念に従い
まっとうな政治が出来れば問題はない。
だが、独裁となり権力保持に走れば、周囲を戦場にすることをいとわなくなる。
それどころか、逃げ出したものでさえ追い詰めにかかる。
細かな事は翌日、来てほしいとソプラ・バリトンが、
ノブテル・ミズマに帰る前に伝えていた。
事情聴取というやつである。
仕方ない事とは言え、行かないわけにはいかないので
行くことになった。
翌日、休みだったので早々に呼び出された。
管理局に来てみれば、眠気に押しつぶされそうなソプラ・バリトンが
デスクで端末と書類に囲まれ格闘中だった。
ノブテル・ミズマは、彼女に声をかける。
彼女は振り向き、ノブテル・ミズマ姿を見て、時間を確認した。
確認した時間を見て、ため息をつく。
「もうこんな時間ですか、すいません。
何かお出迎え出来なくて…」
彼女は、疲れと眠気にまみれ、焦燥感に満ちていた。
どう見ても完全な徹夜コースを爆走中だ。
『何か最近北側勢力に振り回されてんな』
同情はしていたが、自身も巻き込まれている当人なだけに
何とも言えない。
「面倒事に『惜し潰されてないか、オマエ…」
「そうだね、まあ私だけじゃないし、局長はもっと走り回ってるから
弱音は吐けないかな」
弱々しい声色に疲れがにじむ。
僅かな怒りをにじませているのは、
彼女の眼の奥に薄暗いものを感じたからだろうか。
「で、どうなったんだ。実際」
ノブテル・ミズマも本当は、話を聞いたくはない。
彼女を休ませてやりたいのが本音だが、
それを彼女自身が求めていない。
ここまでやられたんだ、やり返さないと気が済まない。
それが、今の彼女の原動力なのは間違いないだろう。
だからこそ、確認するのだ。
進むために。
「そうね、簡単に言えば…最近立て続けに起きてる問題事は全て…
北側のお家騒動のとばっちりって事かしら」
ランランと輝く目の奥の黒き帳が、意識を奪おうとする焦燥を
吹き飛ばす。
折角の美人さんも当て馬扱いです。
午年だけに…すいません忘れてください。
オッサンは
現在、妄想街道徐行中どころか
所々、停止しては徐行するの繰り返しです。
爆走はできません。
落とし物どころかよそ見もしてます。
申し訳ございません。
では、改めて
誤字脱字、感想など、どんと来いです。
まあ、単純に自分では見えないところを見つけてほしい、
ってのが本音というか、情けない限りです。




