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天に愛された王女は、王国を再興します!  作者: Hälou


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5.芽生え③

「ビアード様!」


コーネリアスは援護に向かいたい衝動に駆られたが、

彼女の目の前でも、アッシュ・ハウンドの巧妙な連携攻撃が展開されていた。


バルカスが拳で魔狼を弾いた隙に、

別の魔狼がカレンの負傷した腕を掠めるように襲いかかる。

コーネリアスは光の剣でそれを防いだが、その反動で自身の頬にも浅い傷を負った。


「あのじいさんなら大丈夫だ。前だけに集中しろ!!」バルカスが叫ぶ。


「さっきまでと全然動きが違う。」


コーネリアスの疑問にロイズが答える。


「親玉が戦闘に参加してきたからね。

      より厄介だ。このままじゃまずいね。何か打開策がないと。」


コーネリアスは光の剣で必死に防戦するが、

群れの凄まじい圧力に、たちまち押し戻される。



極度の疲労と、傷からくる焼けるような痛みがコーネリアスを襲う。

剣を握る手が滑り、膝が笑い、命の危機を感じる。


「このままじゃ…!」 彼女の心臓が警鐘のように激しく鳴り響く。


彼女は光の剣を振り上げようとするが、目の前の魔獣の波は途切れる気配がない。


この場を乗り切る術は、もう、残されていない。


その時、ビアードを取り囲む群れの親玉、

シャドウ・ハウンドが、天を衝くような大きな遠吠えを上げた。



遠吠えが草原に響き渡ると、

魔獣たちの動きが一瞬にして狂暴性を増し、速度を最高潮まで上げた


「またあの攻撃が来る…!!」


ビアードとコーネリアスが攻撃に備えた、その一瞬の静寂。


その時、オフィリアを乗せた馬車の中から、

彼女の小さな泣き声が聞こえたような気がした。



「(だめ…)」



その瞬間、草原を大きな淡い黄緑色をした球体が包み込む。


光を浴びた草原の土からは、瞬く間に生命力に満ちた新芽が顔を出し、血で汚れた地面を淡い緑の絨毯に変えていく。


光が広がるにつれ、草木は成長を遂げ、ビアードたちの傷を癒す。


「これは…!」ビアードは目を見開く。


「なんと。。面目御座いません姫様。なんともありがたきこと。このビアード。この御恩は一生…!!」


ビアードは歯を食いしばりながら涙ながらに立ち上がる。


「傷が…癒えていく!!!ははは、これが姫様の力??」


コーネリアスは驚きに開いた口が塞がらない。

剣を握るコーネリアスは、全身の極度の疲労と恐怖心が洗い流され、

まるで朝の目覚めのように体が軽くなるのを感じた。


「なんだか敵の動きが遅くなってないか?バルカス!!」


「ああ。なんだかわかんねえがこの光のお陰だろう。今のうちにけりをつけるぞ。」


ロイズとバルカスも、目の前の敵の勢いが失せたことを好機と捉え、力を振り絞る。


ビアードは癒えた左足で強く地面を蹴った。

シャドウ・ハウンドへ向けて、渾身の一撃を放つ。


剣筋は正確に群れのリーダーの首筋を捉えたが、

シャドウ・ハウンドは素早い動きでそれを回避した。


しかし、その剣撃の速度と威力は、直前まで重傷を負っていた男のそれではない。

シャドウ・ハウンドの横腹には浅い傷が走り、一瞬怯んだ。


「決着をつけようか。」 「グルゥ・・・」


ビアードは、剣を構え直しながら、

リーダーであるシャドウ・ハウンドへ静かに告げた。


---------------------------------------------------------------------------------------


「今までにないくらい身体が軽い。」


コーネリアスはアッシュハウンドを切りつけながら魔獣の群れに踏み込んでいく。


「今ならできるかも。」


「御剣:一結び」


その瞬間、彼女の異変が起きた。

コーネリアスの瞳が、見開かれ、 鮮やかな黄色が目に灯った。


そして、コーネリアスの背中から、一本の青白い光の剣が突如として生成された。


それは、彼女の手にある光の剣よりも鋭く、冷たい輝きを放ち、

まるで彼女の意思の代行者のように、彼女の周囲を素早く周回し始めた。


「なっ…なんだそれ、もう一本、剣が!?」バルカスが驚愕の声を上げる。


青白い剣はコーネリアスをアッシュハウンドの攻撃から守り、

コーネリアスの無意識の合図に呼応するように

アッシュハウンドの急所を次々と攻撃した。


ビアードはシャドウ・ハウンドとの攻防を続ける。

ロイズたちにとって、闇夜を舞うように敵を圧倒する

コーネリアスの姿こそが、まさに一縷の希望に思えた。




コーネリアスの瞳に灯った鮮やかな黄色の光は衰えず、背後の青白い剣は、

一層鋭く、敵を切り裂き続けた。魔獣の群れは数を減らしていった。

状況は少しずつビアードたちに傾いていた。


シャドウ・ハウンドは、圧倒的な戦力差が一転したことに激しい焦燥感を覚えた。


このままでは群れが全滅すると悟り、

低く唸った後、喉を裂くような、より大きな遠吠えを夜空に放った。

その咆哮を聞き、残りのアッシュハウンドはビアードの周囲を取り囲んだ。


仲間を集めたアッシュハウンドの波と、シャドウ・ハウンド自身の鋭い爪による同時攻撃をビアードは巧みに受けながす。


「加勢します!!/手を貸すぜ!!」


コーネリアスとバルカスがビアードの加勢にが入り、

三人は魔獣に対峙する、連携の構えを取った。


その時、三人の脳裏に、直接響くかのように、純粋な「願い」が流れ込んできた。


――(もう、誰も、傷つけないで)――


それは言葉ではなく、オフィリアの魂から溢れ出た、澄んだ、切実な感情の波動のようだった。


次の瞬間、馬車全体が燃えるような「黄金色」の光に包まれた。その光は一筋の光となり、勢いよく天高く昇りつめた。


そして、一筋の光が天を突いたと同時に、遥か天の頂から、澄み渡るような「歌」と黄金色の光の柱が馬車を中心にして降り注いだ。神聖な調べが、大地と空気を振動させる。


「力がみなぎるぞ。」「これは…!!」「楽しくなってきたぜ…!!」


三人は、歌声と黄金の光に導かれるまま、

シャドウ・ハウンド目掛けて同時に最後の攻撃を仕掛けた。


コーネリアスは、全身の力を光の剣に集中させ、研ぎ澄まされた一本の御剣をシャドウ・ハウンドの横腹へ射出する。御剣は黄金の光をまとい、空気抵抗すら無視したかのような速度で敵の防御を削いだ。


バルカスは、その一瞬の隙を見逃さず、唸りを上げてシャドウ・ハウンドと複数体のアッシュハウンドを薙ぎ払った。


そして、ビアードが主役の剣を担った。


ビアードは剣を真上に大きく振りかぶり、降り注ぐ黄金の光を受けながら、

シャドウ・ハウンドを頭部から股下まで、一刀のもとに両断した。


両断されたシャドウハウンドの体は、光の粒子となって崩壊し始め、

魔石だけを残した。残っていた数体のアッシュハウンドも、

遠吠えすら上げることなく、静かに、闇夜に消えていった。




戦いは、終わった。


黄金の光は収束し、歌声は遠い残響となって闇夜に消えていった。

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