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天に愛された王女は、王国を再興します!  作者: Hälou


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1.歩み③

二人は、整備された街道をしばらく歩いた。やがて、街道は徐々に上り坂となり、左右には鬱蒼とした森が迫りくる地点へと差し掛かった。


この森の深部に入れば、外部からの視線は完全に遮断される。


「このあたりでいいかな??」


オフィリアが立ち止まり、周囲を見回した。


「このあたりなら大丈夫でしょう。よろしくお願いします。」


コーネリアスが周囲を警戒しながら答える。


「うんっ!ちょっと待ってね。」


オフィリアは森の木に向かって手を出し呼びかけた。


彼女の手に灯った微かな魔力に呼応し、周囲の植物の蔓や枝、葉がざわめき始める。

まるで魔法にかかったかのように、草木が集まり、瞬く間に二頭の馬を合わせたほどの大きさの騎獣ができあがった。

それは、頑丈な木材としなやかな植物の蔓を複雑な術式で編み上げて造られていた。



「姫様の魔法はいつみてもすごいですね。」コーネリアスが素直な感嘆の声を漏らした。


「全然凄くないよ。編み物得意だから。」オフィリアは少し照れたように笑った。


「いやいや、編み物とかの次元じゃないですこれは。」コーネリアスは冷静に訂正したが、オフィリアの笑顔を見て追及はしなかった。


オフィリアとコーネリアスは、その荷台へと軽やかに飛び乗った。


「じゃあアルデア村までよろしくお願いします。」オフィリアは騎獣のしなやかな首元をそっと撫でながら言った。


草木でできた騎獣は低く唸りを上げ、冷たい冬の街道を静かに駆け抜けた。


少しして、荷台の上でオフィリアはカバンからマルタにもらった温かいパンを取り出した。


「わあ。まだ少しあたたかいよ。食べよ。いただきまーす。」


オフィリアは一口頬張り、幸せそうに目を閉じた。コーネリアスも一つ受け取り、静かに味わう。


「クルミがいいアクセントですね。美味しい。」コーネリアスも、パンの風味を称賛した。


「食べるのがもったいないよぉ。また街に戻ったら帰りにマルタさんのパンを買いに行かない?」


オフィリアは既に帰りを楽しみにしている様子だった。


「それは妙案ですね。同意します。」コーネリアスも楽しみな表情で頷いた。


オフィリアはパンを一口かじり、目を細めて遠くの原野を見つめた。

その先に待つアルデア村の景色を思い浮かべるたび、彼女の脳裏には、この活動を始めるきっかけとなった、幼い日の戦慄が蘇っていた。


――それはオフィリアが、まだ七歳だった頃の出来事である。


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オフィリアは、四歳という幼い頃から、城の図書館の魔導書を読み漁るのが日課だった。

まだ文字が完全に読めないうちから、図版や術式に魅了され、分厚い魔導書に囲まれて過ごすのが何よりも好きだった。


知識欲旺盛な彼女の傍には、いつも穏やかな老学者が寄り添い、難しい魔導書の内容を優しく、面白おかしく読み聞かせてくれた。


その老学者は、父であるエドワードの友人であり、高位の学者で、オフィリアは彼から、ゴーレムの錬成、魔力の操作、そして物体の性能を向上させる付与術の基礎を徹底的に学んだ。


魔導書を通して知る世界のルールと、老学者から教わる技術の原理。それらに熱中するオフィリアにとって、世界は論理的で美しく、そして平和なものだった。


「おじいさんはいつもここにいるね。」


「君と同じでおじいさんも本が好きなんだ。世の中は知らないことばかりだ。この年になってもだよ。だからこそ世界は美しいんと感じるんだ。君こそ子供は外で遊ぶべきじゃろ??」


「ううん。おふぃりあはね、外に出ちゃいけないって。だから外のことあんまりわかんないからここで本を見てるの。」


「少しおじいさんと出かけてみようか。」


「見つかったら怒られたりしない??」


「あぁ。誰にもみつからないさ。おじいさんはこう見えても魔法使いだからね。」


そういって老学者は図書館の地面を変形させオフィリアと手を繋いだまま高く高く上がっていった。図書館がみるみる大きな塔へと姿を変え、オフィリアは老学者とともに月夜をみた。


「すごーい!!まんまるおつきさま!!」


「君の王国は立派だね。でも外の世界は広いんだよ。君の王国よりも遥かに大きな王国がたくさんある。人間だけじゃない。様々な生き物や種族がある。」


「本でみたことあるよ!」


「いつか自分の目で見てみなさい。そういった時がいつか来るよ。」


老学者の言葉は、幼いオフィリアの胸に深く刻まれ、外の世界への強い憧れを植え付けた。


そして、その機会は七歳の時に訪れることになる。


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オフィリアの強い希望から王はビアードとコーネリアスを護衛につけ、身分を隠した状態で街にでることを許した。


初めてみる街の賑わいに目を輝かせたオフィリアは、さらに城壁の向こう側にある王国の辺境へと興味を抱いた。


オフィリアに押され、王も泣く泣くオフィリアの門外への外出を認めた。


そして、ビアードとコーネリアスの護衛のもと、初めて城壁の外に出たオフィリアはいくつかの街を訪れた。


その中でも最も魔獣被害を受けていた村がアルデア村だった。


そこで彼女が目にしたのは、魔導書には載っていない、現実の厳しさだった。


魔獣の被害は城下町の外では日常であり、人々は絶えず恐怖に晒されていた。


そして、農作物は天候に左右され収穫は不安定、少し離れた村では水の確保すら困難な状況が続いていることもあった。


「助けてください騎士様。昨夜も魔獣が現れ、村の若い男たちが怪我をしています。」


「そうです。田畑の働き手が怪我で働けず、ただでさえ生活は苦しいのにお先真っ暗だ。」


ビアードは冷静に状況を把握しようと村人に話を聞いた。


「ふむ…。少し待ってくださりますかな。」


ビアードは、他に者には聞かれぬように注意しつつオフィリアに静かに声をかけた。


「姫様。どうしましょうか。」


「私にできることはしたいです。こんなに外の世界がひどいだなんて。」


オフィリアは、村の人々の怯えた顔を見て、衝動的に、そして純粋に決意した。


「外で寝たことないと思うけど、一緒に寝てあげるから安心してね。」


コーネリアスがオフィリアを和ませる。


「うん!!みんなで一緒に寝ましょう。」


「承知しました。村人には私が伝えてきます。」


ビアードは村人たちに告げた。


「今日は私たちが村にて護衛を行う故、少しではあるが休んでくだされ。」


「ありがとうございますありがとうございます。お心遣いに感謝します。騎士様!」


村人たちの安堵の表情と、感謝の言葉がオフィリアの胸を強く打った。


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