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天に愛された王女は、王国を再興します!  作者: Hälou


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7.親と子①

アクリ公国との国境を越え、馬車は広大な平原を駆け抜けた。


空は澄んだ濃紺の夜空へと変わり、遥か頭上には数多の星がまたたいている。


湿気と泥濘から解放された馬は、乾いた土を踏みしめ、軽快な足取りで進んだ。


やがて、平原の中央にそびえ立つ、フォースフォリアの城塞都市である巨大な影が彼らの前に立ちはだかった。


城門はまだ閉ざされておらず、夜間警備の兵士が松明の光の中で待機していた。


ビアードは城門の前に馬車を止めると、静かに御者台から降りた。


「旅の者か。夜分遅くご苦労。」門番の隊長が声をかけた。


「通関料を払えば通れるが、荷物検査がある。一人か?」


ビアードは、旅装で全身を覆い、顔を隠すようフードを深く被っていた。


「中に子供が二人いる。」


ビアードは袋から金銭を取り出すと、兵士たちに差し出した。


隊長は、受け取った硬貨を一瞥し、顔をしかめ、ビアードの顔を覗き込んだ。


「子供二人と旅? それにザファリアの銅貨か?えらく遠いな。訳ありか?」


ビアードは無言で、隊長を見つめ返した。彼の視線の圧力に、隊長は口ごもる。


「まあいいだろう。よし。通れ。荷物も大丈夫だろうな。」


「ああ。問題ない。商人ではないのでな。」


城門の重い扉が軋む音を立てて開く。ビアードは再び御者台に上がり、馬車はゆっくりと門をくぐった。


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ビアードは、馬車を止めることなく、石畳の大通りを王城へと向かって進ませた。


「なんとか着きましたね、ビアード様。」コーネリアスが馬車の中で小さく息を吐いた。


「ああ。だが、安心はできぬ。ここからが大事だ。」ビアードの声は緊張感を帯びていた。「一刻も早く、姫様を王の庇護下に入れねば...」


夜の街を抜け、馬車はフォースフォリア王城の内郭門の前に到達した。


外郭門よりも遥かに厳重な警備が敷かれ、巨大な鉄扉が道を塞いでいる。


ビアードは馬車を止めると、迷うことなく御者台から飛び降りた。


「止まれ!これより先は王城私邸だ!夜間の通行は許可されていない!」


警備隊長が松明を掲げ、剣の柄に手をかけて叫んだ。


「私はザファリア帝国副騎士団長ビアードと申す。この馬車に、亡命を求める姫君がおられる。国王陛下への謁見を求める!」

ビアードはフードを外し、身分を明かした。


隊長はビアードの旅装と剣に刻まれた紋様を見て、驚きに目を見開いたが、冷静だった。


「馬鹿を言え!この時間に亡命などありえん!貴様、何者か知らんが、すぐに退去せよ!さもなくば拘束する!」


「待て。姫様の御身に危険が迫っている。一刻の猶予もないのだ!」ビアードは一歩前に出た。


「動くな!」


門番たちが武器を構え、騒ぎは一気に緊張を増した。騒動は夜の静寂を破り、王城の壁に反響した。


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その騒動の音は、王城の最上階にある国王の私室にも届いていた。


フォースフォリア国王エドワード。彼は窓辺に立ち、城門で松明が乱れ、騎士たちが声をあげる様子をみていた。


(亡命だと。この国にか...??どこの国からだ。なにが目的だ...)


少し考えた後、エドワードは、窓を大きく開け放った。その声は、夜の王城の壁と石畳に響き渡った。


「門前の者、余がエドワードだ!武器を納めよ!」


国王の突然の声に、門前の隊長も兵士たちも驚愕し、一瞬で動きを止めた。


「警備隊長!来客を丁重に迎える手筈を整えよ。余はすぐに謁見の間へ向かう。」


「陛下!危険でございます!」近侍が慌てて叫ぶ。


「構わぬ。彼らは分け合って余をを頼ってここまで来たのだ。」エドワードは毅然と言い放った。


「フォースフォリアの王たる余が、夜間の来訪者を無碍にしてどうなる。余にできることがあるのならば、なんなりとしようじゃないか。」


エドワードは窓を閉めると、近侍に身支度を整えるよう命じた。



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エドワードの命令は、上空から直接、門前の全員に伝えられた。


緊迫していた城門の騒ぎは、一瞬にして静寂に包まれた。警備隊長は青ざめながらも、武器を納めるよう部下に命じ、内郭門の鉄扉を開く。


ビアードは、剣を抜く寸前で動きを止めていた。彼は空を見上げ、国王の声が響いた窓を見つめた。


「ビアード殿!」警備隊長が声をかけた。


「陛下が、謁見の間でお待ちだ。さきほどの無礼、お許しいただきたい。しかし、まだ信用したわけではない。危険だと感じた場合は即刻切り捨てる。」


そういって、隊長は深く頭を下げた。


「あぁ。感謝する。」ビアードは短く返し軽く頭を下げると、馬車に戻り、手綱を握った。


「ひやひやしました。また大事になっちゃうのかと。」コーネリアスも馬車から顔をだし胸を撫でおろした。


内郭門の重厚な鉄扉が開き、馬車はゆっくりと王城の奥深くへと案内された。コーネリアスの瞳には、安堵の涙が浮かんでいた。

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