中二病に一番持たせちゃいけない能力【プロローグ】
「退屈だ…」
授業中、誰にも聞こえない声でそうつぶやく俺は、【伊藤 篝】
勉強机の上にあるノートには黒板の書き写しが書かれているがその内容が入るほど頭にスペースがない。
代わりに俺が考えた緑髪の機械族の少女の具体案が脳内の99%を占めていた。
「はぁ…異世界にでも行ければな」
そんなつぶやきをした直後だった。
「……は…?」
世界が変わった。
そこは何もない…それでいて妙に居心地が悪い白い部屋だった。
「ほんとに異世界に転生でもしたってのか?」
いや違う。本当に異世界なら草原とかそういうのに飛ばされるのがお決まりのはずだ。
だがかといってここが教室とは思えない。
「お決まりの解説とかないんですかね…」
そんなぼやを吐きながら白い部屋をさまよっていると音もたてず目の前にクリスタルのような妙なオブジェクトが現れていた。
『伊藤 篝にギフトが届けられました』
そんな機会じみた音声が聞こえた瞬間に視界は暗転。俺はイメージ通りの何もない草原にいた。
「これって…本当に異世界転生というやつ…なのか?」
首をかしげているとふと思いついたことを実践してみる。
『我が命令に従え…カラ』
腕を突き出し手を広げ、そんなセリフを吐いてみる。
「ま…特に何も起きないわな」
そんななろう系あるあるの異世界チート主人公とかでもないんだからそう願望がかなうわけでもない…か。
「なぁに?」
「…………」
急に声をかけられ思わず沈黙してしまった。
声のほうを見ると緑髪の少女…俺がノートに書いていたイラストと瓜二つの少女がちょこんと座っていた。
「お前…名前は?」
「私はカラだけど…?主様が呼んだんでしょ?」
「マジ…かよ…ちなみにお前、種族は?」
「機械族だけど?といっても人間に近い個体だから生殖機能もちゃんとあるよ」
「ああ…知ってた…お前のことは多分俺が一番よく知ってるだろうな」
つまりこの世界…俺の空想がそのまま異世界になったのだろう。
「なんでこうも受け入れられているのか…それほどまでに俺は現実世界に生きてなかったのか…」
きょとんとしているカラに俺は言う。
「俺の予想が正しければ個々の世界の文明レベルは現代日本とほぼ同等、だが異能力が存在して防衛軍が市民を守る防波堤、神を信仰するのが信仰教団で、神を憎み殺そうとしている神殺連合と敵対…ってとこか?」
「うん。大体あってる」
「なら俺は傍観者になろう。この世界のストーリーの制作者がネタバレするわけにもいかないしな」
俺はひとまず今どこまでストーリーが進んでいるかを確認するためにカラに言う。
「確かカラって転移出来たよな…防衛軍本拠地に飛んでくれないか。と言っても少し離れた場所に」
「わかった」
カラはコクリと頷くと俺の手を握る。その瞬間何もない草原から現代日本でも見慣れたような都市に瞬時に転移した。
「あそこが防衛軍本拠地」
「立派だな」
俺は防衛軍本拠地に向かい足を進めつつカラから今の情報を聞き、この世界の情報のすり合わせをし、防衛軍本拠地に足を踏み入れたのだった。




