毒性植物
ミステリーでよく使われる植物由来の毒。
ミステリー好きな方なら幾つも、植物の名を挙げることができるだろう。
トリカブト(和名で附子)、ジギタリス、青梅の種(青酸、シアン化水素)。
アーモンドの微かな匂いがする、という青酸カリなんて、お決まりのパターンになってしまっている。
しかし、それ以外にも、身近な植物で毒を持つものがたくさんある。
たとえば、夾竹桃。不思議なことに、毒があるのに植栽植物としてあちらこちらで見かける。毒があることを知らずに子供が触ったらどうするんだろうと、見る度に心配してしまう。
夾竹桃は、花から根まで全草強い毒性を持っている。特に葉と枝は触れるだけで被れる。被れるならまだしも、実際に小さな子供が夾竹桃に触れてしまい、夾竹桃中毒になって亡くなってしまった例もある。付け加えるなら、根を張る土壌まで毒性を帯び、枝葉を焼却すると毒性のガスが生じるのである。
夾竹桃は花は綺麗だし、滅多なことでは枯れないので、公園やマンションの片隅でもよく見かける。いたって無造作に植えられていて、危険の立て札も囲いも無い。ちょっとしたため池や川の土手にこれでもかというぐらい柵やフェンスがあるのに、夾竹桃には何ら対応していないのはどうしてだろうか。
夾竹桃が強い毒性を持っていることを知らない人が大半だからだと思っている。実際、学生の頃に教えてもらった記憶は無い。まあ、下手に毒性アピールしたら、故意の殺人が増えそうなのでしない方が良いのかもしれない。
なぜ夾竹桃に毒があるのかを知ったか。今の若い方は知らないだろう昔の童話作家、立原えりかさんの作品の小道具として使われていたのである。たしか、バーベキューの串として夾竹桃の枝が使われ、参加していた少年達は全て亡くなってしまったというオチが付いていたはず。中学生の頃だったと思うが、下手なミステリーよりインパクトがあった。かくして、「夾竹桃、毒、怖い」が我が心に強く刷り込まれることになったのである。




